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208,もう一泊いきましょう!
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208,もう一泊いきましょう!
「……あれ? 本当にここだった?」
俺たちはナナカに日本に戻してもらったのだが、あの酷い戦闘痕が見当たらない。地面が陥没してないし、木とかも元通り……
「おお、梨沙殿のご友人のネリア殿!」
そのとき、一人の人間がガサガサと奥の茂みから出てきた。
「はあ、こんにちは、いや、こんばんはだな。……じゃなくて、あの、どうして俺のことをご存知なのですか?」
彼は細長い目をしていて、スーツを着ている。……若い、二十代前半か?
「ああ、失礼。私、稲荷の集の一人でございます。この通り」
くるりと一回転し、狐の姿に戻った。
「ああ! あのときの。それはそれは本当にお世話になりました」
実際、彼らの手助けナシでは戦局はもっと厳しかっただろう。
「いえいえ、それで、梨沙殿のご容態は……」
「大丈夫です。今は魔書館……安全なところで、治療が済んでいます」
「そうでしたか、それは良かったです」
「それはそうとして、あの、ここってあのときの場所であってますよね? にしては、あんなに穴だらけの地面とか何だとかがないので」
「あっていますよ。我々稲荷の集が修繕しておきましたので。それと、結界の修復も完了仕切っております。これで今後二百年は安泰でしょう」
「はー、何から何までありがとうございます。本当に助かります」
「いえいえ。元来、我々があの穢れし者共を祓うべきでしたが、強大な力に太刀打ちし切ることが出来ず……このようなお役目を果たしていただき、我々共々本当に感謝しております」
「いやいや! ほとんどは梨沙の手柄なんで! 俺はただ手伝いをしただけなんで!」
「違いますよご主人様! ご主人様もまさに獅子奮迅の戦いっぷりでした!」
「そうですぞ、あまりご謙遜しなさるな。お若いのに、そこまで澄み切ったオーラをお出しして。何なら、我々神々にも近い何かを感じます」
「え? そうなんですか?」
……わかった! カグツチのことだ!
「あー、そういえば一応、神様と契約はしてはいるんですよ……」
「なんと! 道理でそんな神威を纏っているわけだ……」
納得したようにウンウンとうなずく狐さん。
「いやぁ、お話できて楽しかったですネリア殿。近々また、稲荷の集から感謝の品を贈らせていただきます」
それでは! と狐さんはまたガサガサと茂みに戻っていってしまった。
「……さて、これからどうするべきか」
「そーですねぇ……」
ポン、と俺達よりも遅れてナナカが出てきた。
「とりあえず、宿に戻るべきでは?」
「「…………あ」」
「いえいえ、大丈夫ですよー。急なお仕事だったのでしょう?」
「ええ、まあ……申し訳ない」
この前泊まっていた旅館に戻り、そこの女将さんに事情……もちろん、詳しくは話していないが、お話した。
「遠方に旅行中にトラブルですものね、仕方がないですよ」
「そう言ってもらえると助かります……」
「お部屋は清掃を入れただけで、お荷物などはそのままでございます。それでは……」
スーッと音もなく女将さんがふすまを閉めた。
「……ふぅ、良かったいい人で」
「そうですね。えーっと、梨沙が言うにお金は自衛隊あてにりょーしゅーしょと言うものを切る? らしいです。自衛隊の特殊案件対策班あてに」
「ああ、領収書な。俺も聞いてる。……自衛隊のみんなにも連絡しないとな」
俺がそんなことを考えているときに、ナナカは畳の上でゴロゴロしていた。
「ごしゅじーん、いいとこ泊まってますねぇー」
……のんきだなコイツ。
「ちなみにですが、ここからあの基地近くまでは飛べますよー。ただ、一方通行になるので、一泊してここを堪能してからにしましょう」
「そうだな、それができるならそうして……っておい、一泊してってお前の願望だろうが」
「えー? いいじゃないですかごしゅじーん。ね? リーヴァさん」
「おいこら、リーヴァに振るんじゃない」
「……私としましては、そのぉ……もう少し滞在したいかなー、と」
「よしわかった、一泊するか」
「ご主人⁉ やっぱりこの前も思いましたけど、リーヴァさんに対して異常に甘くないですか⁉」
「うるせぇ! お前はいつも欲望丸出しなの! でも、リーヴァが自分の希望を言うなんて滅多に無いんだから」
「むー、納得はいきませんが、結果として希望が通ったので良しとしましょう……不服ではありますが!」
ということで、一度俺は部屋を出て女将さんに梨沙から預かった好きに使っていいカードを使い、今までの部屋代を一括で払い(いなかった日数の部屋代は半額にしてくれた、ありがたい)、新たに一泊することを申し出た。
「……あれ? 本当にここだった?」
俺たちはナナカに日本に戻してもらったのだが、あの酷い戦闘痕が見当たらない。地面が陥没してないし、木とかも元通り……
「おお、梨沙殿のご友人のネリア殿!」
そのとき、一人の人間がガサガサと奥の茂みから出てきた。
「はあ、こんにちは、いや、こんばんはだな。……じゃなくて、あの、どうして俺のことをご存知なのですか?」
彼は細長い目をしていて、スーツを着ている。……若い、二十代前半か?
「ああ、失礼。私、稲荷の集の一人でございます。この通り」
くるりと一回転し、狐の姿に戻った。
「ああ! あのときの。それはそれは本当にお世話になりました」
実際、彼らの手助けナシでは戦局はもっと厳しかっただろう。
「いえいえ、それで、梨沙殿のご容態は……」
「大丈夫です。今は魔書館……安全なところで、治療が済んでいます」
「そうでしたか、それは良かったです」
「それはそうとして、あの、ここってあのときの場所であってますよね? にしては、あんなに穴だらけの地面とか何だとかがないので」
「あっていますよ。我々稲荷の集が修繕しておきましたので。それと、結界の修復も完了仕切っております。これで今後二百年は安泰でしょう」
「はー、何から何までありがとうございます。本当に助かります」
「いえいえ。元来、我々があの穢れし者共を祓うべきでしたが、強大な力に太刀打ちし切ることが出来ず……このようなお役目を果たしていただき、我々共々本当に感謝しております」
「いやいや! ほとんどは梨沙の手柄なんで! 俺はただ手伝いをしただけなんで!」
「違いますよご主人様! ご主人様もまさに獅子奮迅の戦いっぷりでした!」
「そうですぞ、あまりご謙遜しなさるな。お若いのに、そこまで澄み切ったオーラをお出しして。何なら、我々神々にも近い何かを感じます」
「え? そうなんですか?」
……わかった! カグツチのことだ!
「あー、そういえば一応、神様と契約はしてはいるんですよ……」
「なんと! 道理でそんな神威を纏っているわけだ……」
納得したようにウンウンとうなずく狐さん。
「いやぁ、お話できて楽しかったですネリア殿。近々また、稲荷の集から感謝の品を贈らせていただきます」
それでは! と狐さんはまたガサガサと茂みに戻っていってしまった。
「……さて、これからどうするべきか」
「そーですねぇ……」
ポン、と俺達よりも遅れてナナカが出てきた。
「とりあえず、宿に戻るべきでは?」
「「…………あ」」
「いえいえ、大丈夫ですよー。急なお仕事だったのでしょう?」
「ええ、まあ……申し訳ない」
この前泊まっていた旅館に戻り、そこの女将さんに事情……もちろん、詳しくは話していないが、お話した。
「遠方に旅行中にトラブルですものね、仕方がないですよ」
「そう言ってもらえると助かります……」
「お部屋は清掃を入れただけで、お荷物などはそのままでございます。それでは……」
スーッと音もなく女将さんがふすまを閉めた。
「……ふぅ、良かったいい人で」
「そうですね。えーっと、梨沙が言うにお金は自衛隊あてにりょーしゅーしょと言うものを切る? らしいです。自衛隊の特殊案件対策班あてに」
「ああ、領収書な。俺も聞いてる。……自衛隊のみんなにも連絡しないとな」
俺がそんなことを考えているときに、ナナカは畳の上でゴロゴロしていた。
「ごしゅじーん、いいとこ泊まってますねぇー」
……のんきだなコイツ。
「ちなみにですが、ここからあの基地近くまでは飛べますよー。ただ、一方通行になるので、一泊してここを堪能してからにしましょう」
「そうだな、それができるならそうして……っておい、一泊してってお前の願望だろうが」
「えー? いいじゃないですかごしゅじーん。ね? リーヴァさん」
「おいこら、リーヴァに振るんじゃない」
「……私としましては、そのぉ……もう少し滞在したいかなー、と」
「よしわかった、一泊するか」
「ご主人⁉ やっぱりこの前も思いましたけど、リーヴァさんに対して異常に甘くないですか⁉」
「うるせぇ! お前はいつも欲望丸出しなの! でも、リーヴァが自分の希望を言うなんて滅多に無いんだから」
「むー、納得はいきませんが、結果として希望が通ったので良しとしましょう……不服ではありますが!」
ということで、一度俺は部屋を出て女将さんに梨沙から預かった好きに使っていいカードを使い、今までの部屋代を一括で払い(いなかった日数の部屋代は半額にしてくれた、ありがたい)、新たに一泊することを申し出た。
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