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62,自己紹介
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「はい、では、陸上自衛官の階級、尉官の下は?」
「……曹です」
「はい、正解です。今日はここまでにしておきましょうか」
みっちり五時間、自衛隊とこの国の基礎知識を叩きこまれた。
「もぉ無理、限界……」
半ば死んだように割り振られたベットに倒れこむ。
「……何だこのベット!? すげぇやらかい! しかも温かい!」
俺らの世界の硬くて寒いベットとは大違いだ!
「ふぁぁ日本すげぇ……」
上の掛け布団を掛ける暇もなく意識が飛んだ。
「朝ですよ、ネリア二士。早く起きないと朝ごはんが無くなってしまいます」
……朝ごはん!
「お、おはようございます!」
どうやら麻田准将が起こしに来てくれたようだ。
「次からは自分で起きてくださいね」
「……はい、すいません……」
眠い目をこすりながら、昨日支給された制服に袖を通す。
「ぴったりですね」
半袖に長いズボン、そして帽子。
「あ、帽子はまだ大丈夫です」
「わかりました」
しかしこの服、とても肌触りが良い。凄く高品質なのがわかる。
「では、食堂に行きましょう。ついでに、小隊のメンバーも紹介しましょう」
廊下に出て、少し歩くと美味しそうな匂いがしてきた。
「今日はカレーですか」
准将が匂いを嗅いで呟いた。
「ネリア二士はカレー、食べたことありますか?」
「名前も知らないです」
かれーとはなんぞや?
「なるほど、異世界にはカレーは無いのですか」
まあ食べてみてください、と皿を持って来た。
「…………コレですか?」
この茶色いドロっとした液体が乗った白飯ですか?
「はい。まあ初めて食べるには少し勇気がいるかもしれませんが、味は保証します」
麻田准将は、カレーなるものをぱくつきながら、スプーンを差し出してきた。
「冷めてしまいますよ?」
「あ、はい! いただきます!」
緊張でスプーンが震える。とりあえず端っこをちろっとすくってみる。
「……よし」
覚悟を決めて、口に突っ込んでみた。
「……うまい!」
なんだこの味は! 辛いが、旨味と辛味、そして野菜などの甘みが一体となったこの味は!
俺は夢中でスプーンを動かして、皿を空にしていく。
「ははは、気に入ったようですね。さて、今日のスケジュールですが、知識の詰め込みだけでなく、体力をつけましょう。なかなか筋肉はあるようですが、まだまだ細いです。鍛えてもらいますよ。あ、みなさんが来たようです」
ん? 誰?
「隊長、彼が異世界から来たという異世界留学生ですか?」
「はい、仲良くしてくださいね」
二人の男性と、二人の女性が入ってきた。
「初めまして! 俺、いや、私はネリア・ハラベスト二士です! よろしくお願いします!」
そう言って敬礼した。
「ただの自己紹介だからそんなに固くならなくていいよー。むしろタメ語で話しかけて欲しいかも! あ、アタシは安藤 奈美! 階級はキミの二つ上の三曹! よろしくね!」
ポニーテイルの活発そうな女の人は、人懐っこそうな笑顔で挨拶してきた。
「彼女の得意分野はナイフ術ですね。後で見せてもらうと良いでしょう」
准将が補足説明してくれる。
「俺は新島 篤人だ。気軽に篤人と呼んでくれ。階級は隊長と同じだ」
少し素っ気なさそうに答えた男の人は、目のあたりに何かをかけている。
「あのー、これなんです?」
銀色のフレームに、水晶が乗っかったこれですこれ。
「ああ、これは眼鏡と言ってだな、視力を調整するために使うんだ。そっちの世界には無いのか」
「へぇ~、凄いなぁ」
日本はそんなものまであるのか。
「うっす、俺は司馬 竜心っす! 異世界から来たってまじっすか!? 俺、そーゆー系めっちゃ興味あるんすよねー。あ、階級はネリアのひとつ上の一士っす。俺も敬語とか嫌いなんで、タメ語でよろしくっす。あ、この話し方は癖なんでちょっとかんべんっす」
少しチャラそうな彼は、手を差し伸べてきた。
「よろしく」
「はい、よろしくっす!」
がっちり握手をした。
「竜心はアレですね、馬鹿なんですけど、野生の勘と言うべきか、とにかく勘が鋭いんですよ。探しものもうまいですね」
「ちょっ、たいちょー、それはないっすよー」
ははは、と笑いが起きる。
「どうも、羽佐田 美那です。感情があまり表にでません。階級は士長。今度デートしましょう」
「ブッ! デ、デート!?」
真顔で初対面の人俺に何を言ってるんだ!?
「あー、美那さんは気に入った人にすぐデートのお誘いをかけるんです。気にしないでください。ちなみに、誘われてデートに行った人はいないです」
「隊長、私はいつでもうぇるかむなのに、みんな断るんですよ」
「そうなんですか? こんな可愛い人を放っておくなんて、この世界の美的センスは違うのかな?」
少し身長は低いが、十分美少女なのにな。
「わーぉ、本人の前で可愛いって言えちゃうネリア、まじ勇者っす!」
「可愛いって言われた……ポッ」
少し顔が赤くなったような……でも無表情。
「性格に難があるんだよ」
ぼそっと篤人が呟く。
「篤人君、ひどーい」
無表情で呟く美那。
「これが麻田小隊のメンバーです。馴染めそうですか?」
准将は俺に問いかけてきた。
「はい! 凄くいい人達で安心しました」
みんな仲良くしていけそうだ!
「良かったです。では改めて。ようこそ、麻田小隊へ!」
「……曹です」
「はい、正解です。今日はここまでにしておきましょうか」
みっちり五時間、自衛隊とこの国の基礎知識を叩きこまれた。
「もぉ無理、限界……」
半ば死んだように割り振られたベットに倒れこむ。
「……何だこのベット!? すげぇやらかい! しかも温かい!」
俺らの世界の硬くて寒いベットとは大違いだ!
「ふぁぁ日本すげぇ……」
上の掛け布団を掛ける暇もなく意識が飛んだ。
「朝ですよ、ネリア二士。早く起きないと朝ごはんが無くなってしまいます」
……朝ごはん!
「お、おはようございます!」
どうやら麻田准将が起こしに来てくれたようだ。
「次からは自分で起きてくださいね」
「……はい、すいません……」
眠い目をこすりながら、昨日支給された制服に袖を通す。
「ぴったりですね」
半袖に長いズボン、そして帽子。
「あ、帽子はまだ大丈夫です」
「わかりました」
しかしこの服、とても肌触りが良い。凄く高品質なのがわかる。
「では、食堂に行きましょう。ついでに、小隊のメンバーも紹介しましょう」
廊下に出て、少し歩くと美味しそうな匂いがしてきた。
「今日はカレーですか」
准将が匂いを嗅いで呟いた。
「ネリア二士はカレー、食べたことありますか?」
「名前も知らないです」
かれーとはなんぞや?
「なるほど、異世界にはカレーは無いのですか」
まあ食べてみてください、と皿を持って来た。
「…………コレですか?」
この茶色いドロっとした液体が乗った白飯ですか?
「はい。まあ初めて食べるには少し勇気がいるかもしれませんが、味は保証します」
麻田准将は、カレーなるものをぱくつきながら、スプーンを差し出してきた。
「冷めてしまいますよ?」
「あ、はい! いただきます!」
緊張でスプーンが震える。とりあえず端っこをちろっとすくってみる。
「……よし」
覚悟を決めて、口に突っ込んでみた。
「……うまい!」
なんだこの味は! 辛いが、旨味と辛味、そして野菜などの甘みが一体となったこの味は!
俺は夢中でスプーンを動かして、皿を空にしていく。
「ははは、気に入ったようですね。さて、今日のスケジュールですが、知識の詰め込みだけでなく、体力をつけましょう。なかなか筋肉はあるようですが、まだまだ細いです。鍛えてもらいますよ。あ、みなさんが来たようです」
ん? 誰?
「隊長、彼が異世界から来たという異世界留学生ですか?」
「はい、仲良くしてくださいね」
二人の男性と、二人の女性が入ってきた。
「初めまして! 俺、いや、私はネリア・ハラベスト二士です! よろしくお願いします!」
そう言って敬礼した。
「ただの自己紹介だからそんなに固くならなくていいよー。むしろタメ語で話しかけて欲しいかも! あ、アタシは安藤 奈美! 階級はキミの二つ上の三曹! よろしくね!」
ポニーテイルの活発そうな女の人は、人懐っこそうな笑顔で挨拶してきた。
「彼女の得意分野はナイフ術ですね。後で見せてもらうと良いでしょう」
准将が補足説明してくれる。
「俺は新島 篤人だ。気軽に篤人と呼んでくれ。階級は隊長と同じだ」
少し素っ気なさそうに答えた男の人は、目のあたりに何かをかけている。
「あのー、これなんです?」
銀色のフレームに、水晶が乗っかったこれですこれ。
「ああ、これは眼鏡と言ってだな、視力を調整するために使うんだ。そっちの世界には無いのか」
「へぇ~、凄いなぁ」
日本はそんなものまであるのか。
「うっす、俺は司馬 竜心っす! 異世界から来たってまじっすか!? 俺、そーゆー系めっちゃ興味あるんすよねー。あ、階級はネリアのひとつ上の一士っす。俺も敬語とか嫌いなんで、タメ語でよろしくっす。あ、この話し方は癖なんでちょっとかんべんっす」
少しチャラそうな彼は、手を差し伸べてきた。
「よろしく」
「はい、よろしくっす!」
がっちり握手をした。
「竜心はアレですね、馬鹿なんですけど、野生の勘と言うべきか、とにかく勘が鋭いんですよ。探しものもうまいですね」
「ちょっ、たいちょー、それはないっすよー」
ははは、と笑いが起きる。
「どうも、羽佐田 美那です。感情があまり表にでません。階級は士長。今度デートしましょう」
「ブッ! デ、デート!?」
真顔で初対面の人俺に何を言ってるんだ!?
「あー、美那さんは気に入った人にすぐデートのお誘いをかけるんです。気にしないでください。ちなみに、誘われてデートに行った人はいないです」
「隊長、私はいつでもうぇるかむなのに、みんな断るんですよ」
「そうなんですか? こんな可愛い人を放っておくなんて、この世界の美的センスは違うのかな?」
少し身長は低いが、十分美少女なのにな。
「わーぉ、本人の前で可愛いって言えちゃうネリア、まじ勇者っす!」
「可愛いって言われた……ポッ」
少し顔が赤くなったような……でも無表情。
「性格に難があるんだよ」
ぼそっと篤人が呟く。
「篤人君、ひどーい」
無表情で呟く美那。
「これが麻田小隊のメンバーです。馴染めそうですか?」
准将は俺に問いかけてきた。
「はい! 凄くいい人達で安心しました」
みんな仲良くしていけそうだ!
「良かったです。では改めて。ようこそ、麻田小隊へ!」
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