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第1章 隠し事
妨害魔法
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大きく目を見開いて自分の手をみつめる実。
しかし次の瞬間に冷静さを取り戻した実は、右手を一回転させて風の中心となっていた力の塊を握り潰した。
「実?」
拓也が懐疑的な表情で首を傾げる。
実はそんな拓也に答えを寄越さず、考え込むように手を口元にやっていた。
「拓也……ちょっと、拓也が移動魔法を使ってみて。」
「え…? ああ、分かった。」
急にそう言われて目をしばたたかせた拓也は、実の意図を理解しないまま、実と同じように手をひらめかせる。
特に問題なく光の風が拓也と尚希を包んでいくのを見て、実は呟いた。
「なるほど…。俺だけってことか。」
「何が?」
「なんでもない。ちょっと、二人で先に帰ってて。」
拓也と尚希は、実の発言に瞠目する。
「何言ってるんだよ。ほら、早く。」
拓也が後退しようとする実の腕を素早く掴んだ。
「あっ、馬鹿!」
思わぬ展開に実が焦るが、もう遅い。
途端にバチンッと何かが弾けるような音がして、実と拓也は互いに反対方向に吹き飛ばされてしまっていた。
「いった……」
「拓也!? 実!?」
ただ一人飛ばされなかった尚希は忙しなく左右を見回し、すでに起き上がろうとする実を確認すると、未だに起き上がらない拓也の方へ走った。
拓也を抱き起した尚希は、その頬を軽く叩く。
「おい、拓也! しっかりしろ!」
だが、尚希がどれだけ声をかけても、拓也は一向に目を覚まさない。
「しばらく起きないと思いますよ。術を使っていた拓也に、一番負担が来ているでしょうから。……ったく、だから先に帰ってって言ったのに。」
最後に小さくそうぼやき、実は溜め息をついて立ち上がった。
「どういうことだ?」
状況を理解できない尚希が実に訊ねる。
抜け切らない衝撃に額を押さえていた実は、その手をゆっくりと下ろして口を開いた。
「俺が移動しようとすると、妨害魔法が働くようになってたんですよ。どうやら今回は、俺にあっさりと帰ってほしくないようで。」
今頃、思った展開になってほくそ笑んでいるだろうレティルの顔が浮かんでしまい、実はうんざりと肩を落とす。
だからあの時、移動魔法を解除したのだ。
妨害に逆らって無理に移動を試みれば、その反動でどこへ飛ばされるか分からない。
気を失っている拓也の様子を窺う限りでは、妨害魔法といっても、そこまで大きな威力はなさそうではあるが。
実の説明を受けて事態を把握して、尚希も息をつく。
「なるほどな。どうしたもんか……」
「そうですね…。拓也が目を覚ましそうにないし、とりあえずは休む場所が必要ですよね。まあ、当てはありますよ。」
そう言う実の手から、光と風があふれ出す。
尚希はぎょっとした。
「うわっ! 実、待っ―――」
慌てる尚希の声を待つこともなく、光が瞬く間に実たちを包んだ。
しかし次の瞬間に冷静さを取り戻した実は、右手を一回転させて風の中心となっていた力の塊を握り潰した。
「実?」
拓也が懐疑的な表情で首を傾げる。
実はそんな拓也に答えを寄越さず、考え込むように手を口元にやっていた。
「拓也……ちょっと、拓也が移動魔法を使ってみて。」
「え…? ああ、分かった。」
急にそう言われて目をしばたたかせた拓也は、実の意図を理解しないまま、実と同じように手をひらめかせる。
特に問題なく光の風が拓也と尚希を包んでいくのを見て、実は呟いた。
「なるほど…。俺だけってことか。」
「何が?」
「なんでもない。ちょっと、二人で先に帰ってて。」
拓也と尚希は、実の発言に瞠目する。
「何言ってるんだよ。ほら、早く。」
拓也が後退しようとする実の腕を素早く掴んだ。
「あっ、馬鹿!」
思わぬ展開に実が焦るが、もう遅い。
途端にバチンッと何かが弾けるような音がして、実と拓也は互いに反対方向に吹き飛ばされてしまっていた。
「いった……」
「拓也!? 実!?」
ただ一人飛ばされなかった尚希は忙しなく左右を見回し、すでに起き上がろうとする実を確認すると、未だに起き上がらない拓也の方へ走った。
拓也を抱き起した尚希は、その頬を軽く叩く。
「おい、拓也! しっかりしろ!」
だが、尚希がどれだけ声をかけても、拓也は一向に目を覚まさない。
「しばらく起きないと思いますよ。術を使っていた拓也に、一番負担が来ているでしょうから。……ったく、だから先に帰ってって言ったのに。」
最後に小さくそうぼやき、実は溜め息をついて立ち上がった。
「どういうことだ?」
状況を理解できない尚希が実に訊ねる。
抜け切らない衝撃に額を押さえていた実は、その手をゆっくりと下ろして口を開いた。
「俺が移動しようとすると、妨害魔法が働くようになってたんですよ。どうやら今回は、俺にあっさりと帰ってほしくないようで。」
今頃、思った展開になってほくそ笑んでいるだろうレティルの顔が浮かんでしまい、実はうんざりと肩を落とす。
だからあの時、移動魔法を解除したのだ。
妨害に逆らって無理に移動を試みれば、その反動でどこへ飛ばされるか分からない。
気を失っている拓也の様子を窺う限りでは、妨害魔法といっても、そこまで大きな威力はなさそうではあるが。
実の説明を受けて事態を把握して、尚希も息をつく。
「なるほどな。どうしたもんか……」
「そうですね…。拓也が目を覚ましそうにないし、とりあえずは休む場所が必要ですよね。まあ、当てはありますよ。」
そう言う実の手から、光と風があふれ出す。
尚希はぎょっとした。
「うわっ! 実、待っ―――」
慌てる尚希の声を待つこともなく、光が瞬く間に実たちを包んだ。
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