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第7章 選択
尊敬する師匠からの言葉
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ガタガタと、車内が乱暴に揺れる。
それと同じように、心すらもが大きく揺れているようだった。
「………」
キリハは無言で、車の外に広がる地下高速道路の殺風景な景色を眺めていた。
胸を侵食するのは、そわそわとしてしまうほどの不安。
「……ねぇ、ディア兄ちゃん。」
不安を押し殺すことができず、キリハは隣のディアラントを仰ぎ見る。
「どうした?」
「本当に、レティシアたちを連れてこなくてよかったの?」
訊ねた瞬間、書類を確認していたディアラントの手が、一瞬だけ止まる。
今回のドラゴン討伐が、いつもより急すぎることは分かっている。
だからこそ、レティシアたちの協力が大きく状況を左右すると思った。
それなのにディアラントに告げられたのは、レティシアたちを連れてくるなという指示。
いつになく強い態度で命じられたので渋々従ったが、本当にこれでよかったのかという疑念ばかりが、脳内で巡ってしまう。
レティシアたちがドラコン討伐に協力してくれているのは、レティシアが同胞のことは自分が落とし前をつけると言ってきたことが大きい。
そして、もう一つ。
彼女たちの協力による恩恵を派手に見せつけることで、人間のドラコンに対する嫌悪感を下げるという意図があってのことだった。
人々の意識を操作できる時があるとすれば、人々がドラコンに強い関心を示している今だけ。
レティシアがそう語っていたことを思い出すと、自分としては少しでも多く、彼女たちと協力している場面を見せておきたい。
なのに……
「ああ、大丈夫だ。今回の判断には、オレが全責任を持つ。」
ディアラントは特に悩む素振りもなく、すぐにそう言って頷いた。
「でも…」
「キリハ。」
言い募ろうとしたキリハを一言で制し、ディアラントは書類から顔を上げた。
「あのな。」
ゆっくりと、キリハに手を伸ばすディアラント。
「もっと、肩の力を抜け?」
ぽんぽんとキリハの頭を叩き、ディアラントはそう語りかけた。
「そんなに必死にならなくても、オレは別に、レティシアたちのことを見限っちゃいないよ。ただ、レティシアたちにもキリハにも、頼りすぎはよくないって思ってるだけだ。」
「……それは、俺たちがいなくなるかもしれないからってこと?」
それを口にした刹那、車内の空気が音を立てて凍ったような気がした。
車内にいる全員が、揃って息を飲む気配。
緊張感がピリピリと張り詰める中。
「そうだな。それもある。」
ディアラントはいつもどおりの穏やかな表情のまま、あっさりとキリハの指摘を認めた。
「だけど、それもあるってだけで、オレはキリハがルルアに行くって決めつけて動いてるわけじゃない。それだけは、先に言っておくな。これはある意味、オレからドラゴン部隊のみんなへの喝みたいなもんだ。」
ディアラントは表情を険しくして、思案深げに目を伏せた。
「オレはドラゴン部隊の隊長として、正直今の部隊の状況を、いいものだとは思ってない。自ら国を守る軍に入った人間として、一人の民間人に依存するなんて、情けないからな。そんなの、自分の責務を押しつけてるのと変わらない。」
「でもそれは…っ」
「分かってる。より強い力とより安全な道があれば、人間はそっちに傾く。オレたちはな、今まで恵まれすぎてたんだよ。そして恵まれてるからこそ、今あえてけじめをつけとく必要があるんだ。これが、本当の甘えになる前に。」
「………」
「オレたちにも、原因の一端があるんだ。キリハを、こんなに責任ばっかりで縛りつけてんのはな。」
静かに語ったディアラントは伏せていた目を上げて、キリハをまっすぐに見つめた。
「キリハ。この後現場で見る光景に、キリハはとんでもなく驚くと思う。でも、しっかりと見届けろ。それで、後悔しない答えを出せ。本気で自分が望む方へ進んでくれ。」
「……どういうこと?」
「見れば分かる。」
ディアラントはそうとだけ答えて、車が進む方へと視線を向けた。
それにつられて前を見れば、間もなくアルデア湖に一番近い街に出るところだった。
「………」
ディアラントはもう、何も言わない。
これ以上は何も言うつもりはないと、その態度が語っていた。
キリハはそれを察し、素直に身を引いて背もたれに体を埋めた。
一人の民間人に依存しないように。
あの言葉は、ディアラントが彼なりに、今の仕事に責任と誇りを持っているからこそ出た言葉なのだろう。
ルカの話を聞いた後だ。
あれが、自分がいらないという意味で発せられた言葉じゃないことは理解できる。
でも、ディアラントの言葉を聞いてしまったからこそ、自分の心は余計に揺れる。
ルカのようにルルアに行けとも、サーシャたちのように行かないでとも言われなかった。
それが、思った以上にショックだったと知る。
ディアラントは自分の目標で、理想の人間像で。
だからきっと、自分は誰よりも彼の言葉を聞きたかったのだと思う。
でもディアラントは、その二択から答えをくれなかった。
彼が自分に求めたのはゼロか百かの答えではなく、ゼロから百の間に無数に広がる可能性の中からの答え。
(そんなの……俺にはよく分かんないよ……)
「間もなく現場です。」
追い詰められそうになる心に響いてくる、無情な報告。
ちょうど高速道路を抜けたらしく、顔を上げた瞬間、眩しい太陽の光が目を焼いた。
――――――ッ
遠くからでも十分に分かる、ドラゴンの咆哮。
「もう出てきちまったか。周辺住民の避難は?」
「現状、七割が完了しているそうです。さすがに急すぎたせいか、混乱する人々も多いようで…。作業は難航しているとのことです。」
「了解。意地でも、街の方には意識を向けさせないようにします。警察と消防には、そう伝えといてください。」
「分かりました。」
ディアラントは至って普段どおりの様子で、最終的な打ち合わせに入る。
「………?」
ちょっとした違和感。
何故彼は、こんなにも落ち着いているのだろう。
以前離れた地点にドラゴンが同時に出現した時は、あんなにも慌てていたのに。
「ジョー先輩、そちらの様子はいかがですか?」
違和感のことを問うより前に、ディアラントは次の行動へと移ってしまう。
「どうもこうも、好き勝手にやってくれちゃってるよ。さすがは経験値が違うっていうか…。一応、後方支援の代表ってことでこっちについたけど、僕たちが出る幕あるかなぁ?」
「まあ、そうでしょうね。ドラゴンの動きを封じるまでの手際のよさったら、オレたちが張れるもんじゃないですから。分かりました。安心してそっちに合流できそうです。ジョー先輩は、先に行かせた弾薬の調整をお願いしますね。」
「はいはーい。」
通話が切れ、それから間もなくして湖に面した大きな道路へと出る。
「―――……」
言葉が出なかった。
大きな青い湖。
そこから現れたであろうドラゴンは、すでに力なく頭を岸に横たえていたのだ。
その体には、幾重にも巻きつけられた太い鎖。
長い首の上部には金属製の杭のようなものが穿たれ、それが完全にドラゴンの頭部を地面に縫いつけていた。
「何、これ……」
茫然としている間に、車は湖の側に停まる。
「おお、キリハ! 遅かったではないか!!」
顔を青くするキリハを出迎えたのは、底抜けに明るい笑顔だった。
それと同じように、心すらもが大きく揺れているようだった。
「………」
キリハは無言で、車の外に広がる地下高速道路の殺風景な景色を眺めていた。
胸を侵食するのは、そわそわとしてしまうほどの不安。
「……ねぇ、ディア兄ちゃん。」
不安を押し殺すことができず、キリハは隣のディアラントを仰ぎ見る。
「どうした?」
「本当に、レティシアたちを連れてこなくてよかったの?」
訊ねた瞬間、書類を確認していたディアラントの手が、一瞬だけ止まる。
今回のドラゴン討伐が、いつもより急すぎることは分かっている。
だからこそ、レティシアたちの協力が大きく状況を左右すると思った。
それなのにディアラントに告げられたのは、レティシアたちを連れてくるなという指示。
いつになく強い態度で命じられたので渋々従ったが、本当にこれでよかったのかという疑念ばかりが、脳内で巡ってしまう。
レティシアたちがドラコン討伐に協力してくれているのは、レティシアが同胞のことは自分が落とし前をつけると言ってきたことが大きい。
そして、もう一つ。
彼女たちの協力による恩恵を派手に見せつけることで、人間のドラコンに対する嫌悪感を下げるという意図があってのことだった。
人々の意識を操作できる時があるとすれば、人々がドラコンに強い関心を示している今だけ。
レティシアがそう語っていたことを思い出すと、自分としては少しでも多く、彼女たちと協力している場面を見せておきたい。
なのに……
「ああ、大丈夫だ。今回の判断には、オレが全責任を持つ。」
ディアラントは特に悩む素振りもなく、すぐにそう言って頷いた。
「でも…」
「キリハ。」
言い募ろうとしたキリハを一言で制し、ディアラントは書類から顔を上げた。
「あのな。」
ゆっくりと、キリハに手を伸ばすディアラント。
「もっと、肩の力を抜け?」
ぽんぽんとキリハの頭を叩き、ディアラントはそう語りかけた。
「そんなに必死にならなくても、オレは別に、レティシアたちのことを見限っちゃいないよ。ただ、レティシアたちにもキリハにも、頼りすぎはよくないって思ってるだけだ。」
「……それは、俺たちがいなくなるかもしれないからってこと?」
それを口にした刹那、車内の空気が音を立てて凍ったような気がした。
車内にいる全員が、揃って息を飲む気配。
緊張感がピリピリと張り詰める中。
「そうだな。それもある。」
ディアラントはいつもどおりの穏やかな表情のまま、あっさりとキリハの指摘を認めた。
「だけど、それもあるってだけで、オレはキリハがルルアに行くって決めつけて動いてるわけじゃない。それだけは、先に言っておくな。これはある意味、オレからドラゴン部隊のみんなへの喝みたいなもんだ。」
ディアラントは表情を険しくして、思案深げに目を伏せた。
「オレはドラゴン部隊の隊長として、正直今の部隊の状況を、いいものだとは思ってない。自ら国を守る軍に入った人間として、一人の民間人に依存するなんて、情けないからな。そんなの、自分の責務を押しつけてるのと変わらない。」
「でもそれは…っ」
「分かってる。より強い力とより安全な道があれば、人間はそっちに傾く。オレたちはな、今まで恵まれすぎてたんだよ。そして恵まれてるからこそ、今あえてけじめをつけとく必要があるんだ。これが、本当の甘えになる前に。」
「………」
「オレたちにも、原因の一端があるんだ。キリハを、こんなに責任ばっかりで縛りつけてんのはな。」
静かに語ったディアラントは伏せていた目を上げて、キリハをまっすぐに見つめた。
「キリハ。この後現場で見る光景に、キリハはとんでもなく驚くと思う。でも、しっかりと見届けろ。それで、後悔しない答えを出せ。本気で自分が望む方へ進んでくれ。」
「……どういうこと?」
「見れば分かる。」
ディアラントはそうとだけ答えて、車が進む方へと視線を向けた。
それにつられて前を見れば、間もなくアルデア湖に一番近い街に出るところだった。
「………」
ディアラントはもう、何も言わない。
これ以上は何も言うつもりはないと、その態度が語っていた。
キリハはそれを察し、素直に身を引いて背もたれに体を埋めた。
一人の民間人に依存しないように。
あの言葉は、ディアラントが彼なりに、今の仕事に責任と誇りを持っているからこそ出た言葉なのだろう。
ルカの話を聞いた後だ。
あれが、自分がいらないという意味で発せられた言葉じゃないことは理解できる。
でも、ディアラントの言葉を聞いてしまったからこそ、自分の心は余計に揺れる。
ルカのようにルルアに行けとも、サーシャたちのように行かないでとも言われなかった。
それが、思った以上にショックだったと知る。
ディアラントは自分の目標で、理想の人間像で。
だからきっと、自分は誰よりも彼の言葉を聞きたかったのだと思う。
でもディアラントは、その二択から答えをくれなかった。
彼が自分に求めたのはゼロか百かの答えではなく、ゼロから百の間に無数に広がる可能性の中からの答え。
(そんなの……俺にはよく分かんないよ……)
「間もなく現場です。」
追い詰められそうになる心に響いてくる、無情な報告。
ちょうど高速道路を抜けたらしく、顔を上げた瞬間、眩しい太陽の光が目を焼いた。
――――――ッ
遠くからでも十分に分かる、ドラゴンの咆哮。
「もう出てきちまったか。周辺住民の避難は?」
「現状、七割が完了しているそうです。さすがに急すぎたせいか、混乱する人々も多いようで…。作業は難航しているとのことです。」
「了解。意地でも、街の方には意識を向けさせないようにします。警察と消防には、そう伝えといてください。」
「分かりました。」
ディアラントは至って普段どおりの様子で、最終的な打ち合わせに入る。
「………?」
ちょっとした違和感。
何故彼は、こんなにも落ち着いているのだろう。
以前離れた地点にドラゴンが同時に出現した時は、あんなにも慌てていたのに。
「ジョー先輩、そちらの様子はいかがですか?」
違和感のことを問うより前に、ディアラントは次の行動へと移ってしまう。
「どうもこうも、好き勝手にやってくれちゃってるよ。さすがは経験値が違うっていうか…。一応、後方支援の代表ってことでこっちについたけど、僕たちが出る幕あるかなぁ?」
「まあ、そうでしょうね。ドラゴンの動きを封じるまでの手際のよさったら、オレたちが張れるもんじゃないですから。分かりました。安心してそっちに合流できそうです。ジョー先輩は、先に行かせた弾薬の調整をお願いしますね。」
「はいはーい。」
通話が切れ、それから間もなくして湖に面した大きな道路へと出る。
「―――……」
言葉が出なかった。
大きな青い湖。
そこから現れたであろうドラゴンは、すでに力なく頭を岸に横たえていたのだ。
その体には、幾重にも巻きつけられた太い鎖。
長い首の上部には金属製の杭のようなものが穿たれ、それが完全にドラゴンの頭部を地面に縫いつけていた。
「何、これ……」
茫然としている間に、車は湖の側に停まる。
「おお、キリハ! 遅かったではないか!!」
顔を青くするキリハを出迎えたのは、底抜けに明るい笑顔だった。
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