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第6章 共に、同じ世界を―――
最終判断は―――
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ディアラントが問いかけた相手の名前に、どきりと心臓が跳ねた。
「どうやら、ジョー先輩が危惧してることは心配ないっぽいですし、西側に帰してやるっていうなら、このまんま放しちゃいますけど?」
ディアラントがそう訊ねると、全員の視線がジョーに集中する。
ジョーは、険しい表情で地面を睨んでいた。
「……僕はやっぱり、そのドラゴンたちを野放しにしておくのには反対だよ。」
少し悩む素振りを見せたジョーだったが、やはりその考えは変わらないようだ。
「………」
キリハは眉を下げる。
「どうしてもそのドラゴンたちを殺したくないって言うなら、ちゃんとした管理体制と、緊急時の対処を明確にしてよね。それが、僕が許容できる最大限の譲歩だから。」
「―――っ!!」
一瞬、彼がなんと言ったのか分からなかった。
「えっ!? ジョー、いいの!? ほんとに!?」
「勘違いしないで。僕は、ドラゴンを認めたわけじゃない。」
浮かれかけたキリハの言葉は、にべもなくジョーに一蹴されてしまう。
「あくまでも、これは譲歩。危険だと判断したら、僕は何度でもそのドラゴンたちを傷つける。それに、君一人にドラゴンの管理ができるとも思ってない。」
「ようは、一人じゃなきゃいいんだろ?」
そこで割り込んできたのはミゲルだ。
「いいぜ? ドラゴン部隊からは、おれが責任者として名乗り出てやるよ。こっちにゃ、ルカもいるしな。」
「おい、なんでオレを巻き込む!?」
急に当事者ポジションに放り込まれたルカが素っ頓狂な声をあげるが、ミゲルには彼を逃がすつもりはない様子。
その証拠に、ミゲルはルカの首に腕を回してご機嫌だ。
「照れるなって。あそこであんな発言ができるようになるたあ、成長したじゃねぇか。一緒に、キー坊を支えてやろうぜ。本当は、まんざらでもねぇくせによ。」
「黙れ、この髭親父! 離せーっ!!」
「あーもう、ミゲル先輩…。先輩がしくじったら、最終的な責任取るの、オレなんですけどー?」
勝手に盛り上がるミゲルに、ディアラントがささやかな突っ込みを入れる。
だが、そんなものは彼に全く響いていない。
ミゲルは、にやりと口角を上げるだけだ。
「嫌なら、隊長権限を使えばいいじゃねぇか。」
「うへぇ…。今回ばかりはオレがその手に出られないって、分かってて言ってますよね、それ。言ったでしょう? 選択権を放棄したが故の行動をしますって。ジョー先輩が折れたんなら、オレがやることなんて決まってるんですー。」
唇を尖らせたディアラントはまた大きく息をつくと、パンと手を打った。
「はい、とりあえず撤収! ドラゴンのことに関しては、保護の方向で折り合いをつけるよう、ターニャ様に提案します。キリハはそいつらを、ちゃんと宮殿まで連れ帰ってくること!」
「う、うん!」
ディアラントの言葉に、キリハは何度も頷いた。
諦めかけていた、ドラゴンと一緒に歩む道。
どうやら、まだそれを諦めなくてもいいらしい。
「―――お前の勝ちだよ。ジョー先輩を譲歩させるなんて、大したもんじゃん。」
にわかには信じられないこの現実を、本当のことだと証明するようなディアラントの言葉。
それがとても嬉しくて、キリハは思わずディアラントに飛びついていた。
「ううん、俺だけの力じゃないよ! ディア兄ちゃん、ありがとう!!」
「うおっとと…。オレは別に、なんもしてないぞ?」
「だって、これから色々とやってくれるんでしょ? ミゲルやルカにもお礼言わなきゃ。俺、諦めないでいいんだよね?」
「ああ。そうだ。やれるだけやってみろ。」
「うん!!」
その場に響く、キリハの嬉しそうな笑い声。
随分と久しいその明るい声に、皆の表情もほっとしたように緩んだ。
「……で? 結局、何がどうなったのよ?」
そう訊ねたのはレティシアだ。
「お別れしなくていいんだって! 一旦はまた地下に戻ってもらうことになるけど、大丈夫?」
「まあ、あんたがそう言うなら別にいいけど。」
「ねえねえねえ! お別れしないの!? ぼく、キリハと遊べる!?」
レティシアを押しのけて、ロイリアが間に入り込んでくる。
相当次の言葉を期待しているのだろう。
答えを聞く前から、鼻息が荒くなっている。
「うん、そうだよ。」
キリハが満面の笑顔で答えると、それを聞いたロイリアが感極まった様子でキリハに飛びかかった。
「やったー!!」
「ほんとだよ! やったね!!」
問答無用で地面に押し倒されるキリハだったが、今は嬉しさに勝る感情がないので、ロイリアと一緒にじゃれついて笑う。
すると。
「あんたらは、もう……」
「お前らなぁ……」
頭上から、レティシアとディアラントの声が降ってくる。
キリハたちが見上げた先で、彼らは揃って同じ溜め息を吐き出すのだった。
「どうやら、ジョー先輩が危惧してることは心配ないっぽいですし、西側に帰してやるっていうなら、このまんま放しちゃいますけど?」
ディアラントがそう訊ねると、全員の視線がジョーに集中する。
ジョーは、険しい表情で地面を睨んでいた。
「……僕はやっぱり、そのドラゴンたちを野放しにしておくのには反対だよ。」
少し悩む素振りを見せたジョーだったが、やはりその考えは変わらないようだ。
「………」
キリハは眉を下げる。
「どうしてもそのドラゴンたちを殺したくないって言うなら、ちゃんとした管理体制と、緊急時の対処を明確にしてよね。それが、僕が許容できる最大限の譲歩だから。」
「―――っ!!」
一瞬、彼がなんと言ったのか分からなかった。
「えっ!? ジョー、いいの!? ほんとに!?」
「勘違いしないで。僕は、ドラゴンを認めたわけじゃない。」
浮かれかけたキリハの言葉は、にべもなくジョーに一蹴されてしまう。
「あくまでも、これは譲歩。危険だと判断したら、僕は何度でもそのドラゴンたちを傷つける。それに、君一人にドラゴンの管理ができるとも思ってない。」
「ようは、一人じゃなきゃいいんだろ?」
そこで割り込んできたのはミゲルだ。
「いいぜ? ドラゴン部隊からは、おれが責任者として名乗り出てやるよ。こっちにゃ、ルカもいるしな。」
「おい、なんでオレを巻き込む!?」
急に当事者ポジションに放り込まれたルカが素っ頓狂な声をあげるが、ミゲルには彼を逃がすつもりはない様子。
その証拠に、ミゲルはルカの首に腕を回してご機嫌だ。
「照れるなって。あそこであんな発言ができるようになるたあ、成長したじゃねぇか。一緒に、キー坊を支えてやろうぜ。本当は、まんざらでもねぇくせによ。」
「黙れ、この髭親父! 離せーっ!!」
「あーもう、ミゲル先輩…。先輩がしくじったら、最終的な責任取るの、オレなんですけどー?」
勝手に盛り上がるミゲルに、ディアラントがささやかな突っ込みを入れる。
だが、そんなものは彼に全く響いていない。
ミゲルは、にやりと口角を上げるだけだ。
「嫌なら、隊長権限を使えばいいじゃねぇか。」
「うへぇ…。今回ばかりはオレがその手に出られないって、分かってて言ってますよね、それ。言ったでしょう? 選択権を放棄したが故の行動をしますって。ジョー先輩が折れたんなら、オレがやることなんて決まってるんですー。」
唇を尖らせたディアラントはまた大きく息をつくと、パンと手を打った。
「はい、とりあえず撤収! ドラゴンのことに関しては、保護の方向で折り合いをつけるよう、ターニャ様に提案します。キリハはそいつらを、ちゃんと宮殿まで連れ帰ってくること!」
「う、うん!」
ディアラントの言葉に、キリハは何度も頷いた。
諦めかけていた、ドラゴンと一緒に歩む道。
どうやら、まだそれを諦めなくてもいいらしい。
「―――お前の勝ちだよ。ジョー先輩を譲歩させるなんて、大したもんじゃん。」
にわかには信じられないこの現実を、本当のことだと証明するようなディアラントの言葉。
それがとても嬉しくて、キリハは思わずディアラントに飛びついていた。
「ううん、俺だけの力じゃないよ! ディア兄ちゃん、ありがとう!!」
「うおっとと…。オレは別に、なんもしてないぞ?」
「だって、これから色々とやってくれるんでしょ? ミゲルやルカにもお礼言わなきゃ。俺、諦めないでいいんだよね?」
「ああ。そうだ。やれるだけやってみろ。」
「うん!!」
その場に響く、キリハの嬉しそうな笑い声。
随分と久しいその明るい声に、皆の表情もほっとしたように緩んだ。
「……で? 結局、何がどうなったのよ?」
そう訊ねたのはレティシアだ。
「お別れしなくていいんだって! 一旦はまた地下に戻ってもらうことになるけど、大丈夫?」
「まあ、あんたがそう言うなら別にいいけど。」
「ねえねえねえ! お別れしないの!? ぼく、キリハと遊べる!?」
レティシアを押しのけて、ロイリアが間に入り込んでくる。
相当次の言葉を期待しているのだろう。
答えを聞く前から、鼻息が荒くなっている。
「うん、そうだよ。」
キリハが満面の笑顔で答えると、それを聞いたロイリアが感極まった様子でキリハに飛びかかった。
「やったー!!」
「ほんとだよ! やったね!!」
問答無用で地面に押し倒されるキリハだったが、今は嬉しさに勝る感情がないので、ロイリアと一緒にじゃれついて笑う。
すると。
「あんたらは、もう……」
「お前らなぁ……」
頭上から、レティシアとディアラントの声が降ってくる。
キリハたちが見上げた先で、彼らは揃って同じ溜め息を吐き出すのだった。
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