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2章:内政改革は波瀾万丈です!

最後まで頑張ります!家族みんなの勝利です!

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落とし穴から炎が収まり熱が冷めた頃、最後の確認を行った。ただし騎士団や周りの人達の表情は明るかった。穴の中は静かだったからだ。何かが動く気配が無いため、ある程度安心感があった。

「光さん、行けるかなぁ?」

光の精霊である光さんに穴の中に降りて貰う。プカプカっと穴の中に入る光さん。
(ごめんね!光さん)

光魔法の1つにある投影魔法【ヴィジョン】を使い、光さんの周辺の映像を地上で確認するのだ。

すると─

業炎で焼かれて、所々が黒く炭化している状態で、串刺しにされて生き絶えている土龍の姿があった。針の様な岩に身体を貫かれて、口にも針岩が貫いている。明らかに死んでいると分かる!

「や、やったぞ!死んでいる!」

その映像と誰かの呟きに辺りが一斉に歓喜に包まれる。

「シオンお嬢様のお掛けだ!」
「レインの兄上が視界を奪ってくれたお陰で、犠牲者が減ったよ!」
「フィリアス公爵家ばんざーい!公爵閣下も羨ましい!こんなに凄いお子様が二人もいて、今後は安泰だな!」

辺りは歓喜が響き渡り、皆がフィリアス騎士団とフィリアス公爵家を褒め称える。そもそも、龍の退治は国家を挙げて戦いに挑む事業であり、辺境の一軍のみで戦える訳では無いのだ。Sランク冒険者が無双するような優しい異世界設定にはなってないのである。()

私は、負傷者の野営テントに戻り怪我人の手当てを続けた。お亡くなりになられた騎士に、癒しの魔法を何度も掛けた事もした。しかし、すでに生命の火が消えている者に癒しの魔法を掛けても効果は無かった。流石に魔力が無くなり倒れそうになるが、包帯と消毒液での治療のお手伝いを続けた。

私にはこれくらいしか出来ないから。

しかし、まだ6歳である子供の体力には限界があり、最後は倒れて眠ってしまいました。
(もっと身体を鍛えようと思った)









「やれやれ、無茶ばかりして本当に困った子だよ」
「本当に。騎士達が死んだのは自分のせいだと思って、自分を責めるなんて6歳の子供の考えでは無いわ」
カイン公爵とその妻であるシルビア夫人がシオンを抱き締めながら呟く。

「シオンお嬢様は本当にお優しい方です。我々の怪我が自分のせいだと思い、必死に治療魔法を掛けて廻っていました。凄い魔力の持ち主ですね。それ以上に、亡くなった騎士に必死に治療魔法を掛けているのを見るのは辛かったです・・」

その場にいた騎士達が俯うつむく。
野営病院のテントでカイン公爵は周りを見渡し、静かな声で質問する

「今からどんな言葉を吐いても罪に問わないので素直に言ってくれ。今回の作戦を考えたのは娘のシオンだ。そして、それを許可したのは私だ。ここにいる者達で、シオンを恨んでいるものはいるか?シオンがこんな作戦を考えなければと思っている者はいるか?」

カイン公爵の言葉に辺りは静まりかえる。
その後は一斉に声が上がった。

「誰がシオンお嬢を恨むんですか!」
「カイン公爵でも冗談が過ぎますよ!」
「私は重症を負ったのにシオンお嬢様に命を救われたのです!感謝こそすれ恨むなどあり得ない!」
「我々の怪我を泣きながら必死に治療する幼い子供に誰が恨むと言うのですか!そんな奴がいたら自分がぶっ殺しますよ!」
「そうだ!そうだ!我らの癒しの女神を恨む奴なんていません!」
「シオンタン。はぁはぁ!」

よし!最後の奴は死刑だ!ん?約束だと?契約書はあるのか?証拠がなければ認められん!ぶっ殺す!・・・今度な

「それは死んだ騎士達もそう思ってくれているだろうか?その家族や恋人は?」

一部の者は口を閉ざしたが、言い返す者もいた。

「シオンお嬢は作戦を提案しただけです。採用したのは軍上層部であり、6歳の子供に責任を押し付けるのは間違っています!しかもシオンお嬢は自分のせいだと思い必死に治療して廻っていました。遺族の心境は確かに察しする事は出来ませんが、責任は軍人が取るべきです」

その言葉を口にしたのは会議でシオンに絡んでいた都市守備騎士長だった。

「カイン公爵様もシオンお嬢に命を救われたのでしょう?子を護るのは親の役目、もし、シオンお嬢の事で遺族が何か言ってきた場合、私が庇います。命を懸けて!」
「おいおい、1人だけ良い格好するなよ。命を救われた俺達全員が遺族に頭を下げるよ」
「そうだ。シオンお嬢が居なかったら負傷者や死者は数倍は増えただろうからな!本当に感謝しかないよ」



カイン公爵とシルビア夫人はその場にいる騎士達に頭を下げる事しか出来なかった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
次の日になりました。

疲れきっていた私は昼過ぎまで眠っていました。うん、寝る子は育つって言うしね!

「シオン、体調は大丈夫か?」

お父様が心配そうに声を掛けてきた。そしてお母様が私を強く抱き締める。(お、お母様!決まってるから!?

「シオン!心配したのよ!そしてあなたとレインは偉大な事をやり遂げたのよ!本当に無事で良かった」

城塞都市で市民の避難誘導と、体調の悪い方の看護をしていたお母様と会うのは1日ぶりだった。お母様は不安な市民の精神安定剤になっていたのだ。公爵家の貴族であり、領主の妻であるお母様が都市の中で活動する事で、フィリアス家は都市を見捨てていないとアピールをして暴動を防ぐ重要な役目をしていたのだ。

何気にお母様も凄いぞ!

普通の令嬢なら逃げるか、震えているかのどっちかだからね。
冬に向けての燃料を大量に使った城塞都市エルドラドには港街から支援物資を送る事で話が纏まった。
多少なりとも、農場での成果で例年の2倍以上の収穫のおかげで食糧の心配は無い。砂糖の精製で資金も増えていたので、まだこのくらいの出費は十分に耐えられるのだ!


ぐぅぅぅ!

お腹がなりました。うん・・何と言うか、お約束な展開を自分ですると恥ずかしいな!

「お食事にしましょう」

お母様に連れられて、城塞都市の広場に設置された青空給食・・・もとい、仮設で作られたテーブルで食事を取った。料理はお粥でした。

でも、美味しいのよ!?

お粥には、ジャガイモを裏ごししたものを入れてトロみを付けて、荒くすりおろしたジャガイモが良いアクセントになって、シンプルな塩胡椒で味付けしただけでも凄く美味しいかったの!ジャガイモには旨味成分のグルタミン何たらが入っているから味が濃いのよ♪
いっぱいお代わりしました☆

「シオン、胃は大丈夫かい?昨日はショッキングな事があって嘔吐していたから消化の良いものを用意したんだが・・・」

ああ、私の事を気にしてくれてたんだ。うん、お父様、お母様、お兄様、みんな大好きです!シオンは幸せです。

「シオン!?」
「シオン♪」
「あらあら、嬉しいわ」

ん!?

あっ!!!

声に出てたんだ。恥ずかしい!
(*/□\*)


辺りが笑い声包まれ、私は恥ずかしさと嬉しさで目に涙を浮かべながら笑顔で笑ったのだった。











◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【後書き】

愚者の声
「・・終わってない」

シオン
「何ですって?」

愚者の声
「・・無事に帰れるかな?」

シオン
「いつものジョーダンは大目に見ますが、いい加減な事を言うと許しませんわ!」

ビシッーーーーン!
(鞭を叩きつける)

愚者の声
「うぎゃーーーー!【理不尽だ!】」


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