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戦争!
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ローズガーデン王国の北の中央の国境に位置する重要な砦から、帝国の軍を見つめる者がいた。
「忌々しい帝国め…………」
「姫殿下、大丈夫ですぞ。我が砦には2万以上の兵士が詰めております!帝国とて易々と落とせるものではありませぬ!」
砦に居たのは、ローズガーデン王国の第一皇女エリザ・ローズガーデンだった。
そして、側にはローズガーデンの歴戦の将である齢60を超える老将グラハムが控えていた。
「それで、戦況はどうなっている?」
開戦してから3日が経とうとしていた。開戦当初はエリザ姫殿下が自ら先陣を切り、帝国軍に打撃を与える事に成功した。
しかし、その後の帝国軍はエリザを見つけると、集中的にエリザを狙うようになったのだ。
エリザ姫殿下は、贔屓目抜きで優れた騎士である。兄妹が多いため、自分になにかあっても問題ないと思っており、日々自国の為に心血を注いで腕を磨いていた。
しかし、帝国軍は王女としての価値が高いと判断し、エリザを捕らえる事ができれば、王国軍の指揮が落ち、砦攻略がやり易くなると判断したのだ。
故に、現在は砦の中で戦を見守る事になったのである。
「今の所は拮抗しておりますな。帝国軍が3万でこちらが2万5千、数で劣っていると言っても、全軍でぶつかる訳ではありませんからな。下手に砦に籠城しても、包囲されては補給も儘ならなくなりますからのぅ?故に、討って出るのが正解ですじゃ」
何か決定的な問題でも出てこなければだが。
そこに火急の知らせが届いた。
「急報です!西側のユグドラ王国方面に位置する砦が帝国の猛攻を受けているとのこと!」
息を切らせてやってきた伝令にグラハムは怒鳴った!
「なんじゃと!?あそこには1万の兵が詰めておったはずじゃが?」
ローズガーデン王国は広く帝国と国境を隣接している。そこで、北側全体の【西側】【中央】【東側】の3つに強固な城塞砦を築き、何処かが攻められた場合、隣の砦もしくは王都から援軍を寄越す手筈になっていた。
「て、帝国軍約3万もの兵力が強襲しているとの事!」
「なっ!3万だと!?」
確かに帝国の国力なら可能であるが、帝国は大陸中央に位置している為、隣接する国が多い。故に、各国境に兵を分散して配備しなければならなかったので、一国に戦力を集中する事が出来ないのである。
「やられた!どうやったかは知らないが、中央の帝国軍は我々の注意を釘付けにする為の囮だったんだ!?」
帝国の思惑に気付きどうするか頭を回転させる。すでに、王都から援軍を出せるだけの戦力がないのだ。
「ユグドラ王国からの援軍はどうなっている?」
本来であれば私達の中央にきて貰うはずだったが、そのまま西側の砦に向かってもらい、挟撃してもらう事にしよう。
「なるほど。ユグドラ王国軍に帝国軍を挟撃して貰うのですな?」
エリザの考えを瞬時に悟り伝令に尋ねた。
「すでに、こちらに向かっていると報告が来ております!そして、ユグドラ国王陛下からの書状に気になる記述がありました」
「なんじゃ、その気になる記述とは?」
同盟国の国王が直々に書いた書状だ。普通はおかしな事は書かないはずだが?
「はっ!今回、我が王国が誇る最強の『英雄』達を送る!帝国をも滅ぼすことのできる戦力であるので、くれぐれも怒らせないようにして欲しい、との事です!」
!?
「王国の英雄…………」
エリザは驚きの余り目を開いた。
実はこのエリザ王女は英雄譚に憧れており、ファンタジー小説を嗜むのが趣味なのだ。
それが、本物の英雄と聞き及び居ても立ってもいられなくなった。
「待て、ユグドラ王国の英雄だと…………?まさか!?」
若い頃から帝国の侵略から国を守っていた老将グラハムは思い当たる人物が1人いたのだ。
「グラハム将軍!知っているのか!?」
エリザは将軍に詰め寄った。
「は、はい。ユグドラ王国の英雄といえば、余り世間では知られておりませぬが、王国の西側にある『還らずの森』の魔物から日々、領地を守っているグリーンウッド辺境伯のことだと思います。噂では、単騎で魔物の最強種『龍』を狩れるとか………」
「単騎で龍を!?」
エリザの目が輝いた!
小説の中だけの人物が現実世界に存在しているのだから。
「よし!ここの帝国軍は囮と分かれば、暫くは全力で攻めてこない!すぐに西の城塞砦に向かうぞ!」
慌ててグラハム将軍が止めるが、言うこと聞くエリザではなく、30名ほどの側近のみで飛び出していったのだった。
「忌々しい帝国め…………」
「姫殿下、大丈夫ですぞ。我が砦には2万以上の兵士が詰めております!帝国とて易々と落とせるものではありませぬ!」
砦に居たのは、ローズガーデン王国の第一皇女エリザ・ローズガーデンだった。
そして、側にはローズガーデンの歴戦の将である齢60を超える老将グラハムが控えていた。
「それで、戦況はどうなっている?」
開戦してから3日が経とうとしていた。開戦当初はエリザ姫殿下が自ら先陣を切り、帝国軍に打撃を与える事に成功した。
しかし、その後の帝国軍はエリザを見つけると、集中的にエリザを狙うようになったのだ。
エリザ姫殿下は、贔屓目抜きで優れた騎士である。兄妹が多いため、自分になにかあっても問題ないと思っており、日々自国の為に心血を注いで腕を磨いていた。
しかし、帝国軍は王女としての価値が高いと判断し、エリザを捕らえる事ができれば、王国軍の指揮が落ち、砦攻略がやり易くなると判断したのだ。
故に、現在は砦の中で戦を見守る事になったのである。
「今の所は拮抗しておりますな。帝国軍が3万でこちらが2万5千、数で劣っていると言っても、全軍でぶつかる訳ではありませんからな。下手に砦に籠城しても、包囲されては補給も儘ならなくなりますからのぅ?故に、討って出るのが正解ですじゃ」
何か決定的な問題でも出てこなければだが。
そこに火急の知らせが届いた。
「急報です!西側のユグドラ王国方面に位置する砦が帝国の猛攻を受けているとのこと!」
息を切らせてやってきた伝令にグラハムは怒鳴った!
「なんじゃと!?あそこには1万の兵が詰めておったはずじゃが?」
ローズガーデン王国は広く帝国と国境を隣接している。そこで、北側全体の【西側】【中央】【東側】の3つに強固な城塞砦を築き、何処かが攻められた場合、隣の砦もしくは王都から援軍を寄越す手筈になっていた。
「て、帝国軍約3万もの兵力が強襲しているとの事!」
「なっ!3万だと!?」
確かに帝国の国力なら可能であるが、帝国は大陸中央に位置している為、隣接する国が多い。故に、各国境に兵を分散して配備しなければならなかったので、一国に戦力を集中する事が出来ないのである。
「やられた!どうやったかは知らないが、中央の帝国軍は我々の注意を釘付けにする為の囮だったんだ!?」
帝国の思惑に気付きどうするか頭を回転させる。すでに、王都から援軍を出せるだけの戦力がないのだ。
「ユグドラ王国からの援軍はどうなっている?」
本来であれば私達の中央にきて貰うはずだったが、そのまま西側の砦に向かってもらい、挟撃してもらう事にしよう。
「なるほど。ユグドラ王国軍に帝国軍を挟撃して貰うのですな?」
エリザの考えを瞬時に悟り伝令に尋ねた。
「すでに、こちらに向かっていると報告が来ております!そして、ユグドラ国王陛下からの書状に気になる記述がありました」
「なんじゃ、その気になる記述とは?」
同盟国の国王が直々に書いた書状だ。普通はおかしな事は書かないはずだが?
「はっ!今回、我が王国が誇る最強の『英雄』達を送る!帝国をも滅ぼすことのできる戦力であるので、くれぐれも怒らせないようにして欲しい、との事です!」
!?
「王国の英雄…………」
エリザは驚きの余り目を開いた。
実はこのエリザ王女は英雄譚に憧れており、ファンタジー小説を嗜むのが趣味なのだ。
それが、本物の英雄と聞き及び居ても立ってもいられなくなった。
「待て、ユグドラ王国の英雄だと…………?まさか!?」
若い頃から帝国の侵略から国を守っていた老将グラハムは思い当たる人物が1人いたのだ。
「グラハム将軍!知っているのか!?」
エリザは将軍に詰め寄った。
「は、はい。ユグドラ王国の英雄といえば、余り世間では知られておりませぬが、王国の西側にある『還らずの森』の魔物から日々、領地を守っているグリーンウッド辺境伯のことだと思います。噂では、単騎で魔物の最強種『龍』を狩れるとか………」
「単騎で龍を!?」
エリザの目が輝いた!
小説の中だけの人物が現実世界に存在しているのだから。
「よし!ここの帝国軍は囮と分かれば、暫くは全力で攻めてこない!すぐに西の城塞砦に向かうぞ!」
慌ててグラハム将軍が止めるが、言うこと聞くエリザではなく、30名ほどの側近のみで飛び出していったのだった。
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