上 下
8 / 61

英雄!?

しおりを挟む
2大公爵家が大々的に宣言した事で謁見の間は騒然となった。

半分ほどの貴族がフォーマルを推薦したが、逆に言えば2大公爵の依子である貴族達を含めた半分はアーク王子に付いたのである。

これは王国を二分したと言っても過言ではないのだが…………

「何故だ!今までこれと言ってアーク王子を擁護していなかったではないか!?」

焦ったグレイス公爵は二人に詰め寄った。

「そうだ。昔のアーク王子様はともかく、今の立派になられた『アーク王太子殿下』様なら、我々の後ろ楯がなくとも、この程度の逆境を乗り越えてくれると信じていたのでな」

「そうだ。アーク王太子殿下なら民からの信頼厚く、国民全てが祝福するだろう」

さも当然のように言い放つ所は流石である。

「このような辺境の田舎貴族がなんだと言うのだ!我が最強の私兵にて滅ぼしてもよいのだぞ!」

平然と他家を攻め滅ぼす宣言に、普通なら顔をしかめる所だが、二人の公爵は大笑いをしたのだった。

「わっはははは!」
「ぷっ、くくくくっ」

いきなり大笑いされて唖然とするグレイス公爵だったが、すぐに我に返ると反論した。

「なにがおかしい!!!」

「何が最強の私兵だ。そんな雑魚私兵など、何百人居ようと、ここにおられる英雄カウス殿1人で全滅させられるわ!」

!?

「え、英雄だと?」

お父様が英雄なんて、わかっている方もいるのですね♪

「あらあら♪あなた、英雄ですってよ♪」

お父様も照れくさいのか鼻を掻いた。

「スカーレット公爵、英雄と呼ぶのはよしてくれ。俺は大した事はしていない」
「何を仰られるのです!単騎で、赤龍など狩れる者がどれほどいますか!」

!?

「赤龍だと!?」

ざわざわ…………
ざわざわ…………

最強種の龍種で、体格が大きく空を飛び、灼熱のブレスを吐く、災害級の魔物で誰もが知っている。

「そんなのは、デタラメ─」

「因みに、今回の支援物資の武具に赤龍の素材で作られた鎧兜や剣など貰いました。現物を持ってきております」

国王の側から綺麗に飾り付けられた武具が運ばれてきた。

おおっ!!!!

余りの美しさに、会場の目が釘付けになった。

「そ、そんなバカな…………」

フォーマルとグレイス公爵は茫然と見つめるしか無かった。

「さて、単騎で龍を狩れる王国最強の英雄に、大陸でトップ10に入る魔導師スピカ殿を妻に持ち、還らずの森の防衛に5千人の兵士を常備しているグリーンウッド辺境伯爵に、逆らえる者は居るのかな?」

国王の言葉にグレイス公爵は真っ青になった。
中央貴族の事は調べていたが、辺境の権力と程遠い貴族には興味が無かったので、詳しく調べたりしていなかったからだ。

「では、反論もないと判断し、今日この時よりアーク・ユグドラを王太子に任命する!」

パチパチパチッ!!!
パチパチパチッ!!!

すでにフォーマル陣営だった貴族達もアーク王子を王太子になることを認めた。
すでに、2大公爵家が支持し、まさかの王国最強の軍を持っているグリーンウッド辺境伯までアークを支持したのだ。すでに勝敗は決した。
ならば、末端の貴族はフォーマルからアークに乗り越えるだけである。
それが貴族の処世術なのだから。

「さて、私は大切な長男が死んでから次の王太子を今まで決めて来なかった。それは、次期王太子となり、次の国王になるものの行動を見守る為であった。国王になれば国の為に尽くさねばならぬ義務が生じるからだ。私利私欲に走れば、数年で国は荒れ他国に侵略され滅びるからである。そして、ここ1年で見事に王族として行動したのはアークであった。グリーンウッド殿が支持しなくとも、私はアークを王太子にしたであろう!」

国王の言葉にフォーマルは驚愕した目を向けた。

「さて、フォーマルよ?お主はこの1年で何を成した?」

国王の言葉に答える。

「わ、私は各貴族の協力を求め奔走しました!そのかい合って、半数の支持を取り次げました!」

「うむ、確かにそれも1つの成果と言える。だが、お主に任せておいた直轄領地の状況はどうだ?」
「別に、上手くいっておりますが………?」

フォーマルの言葉に国王は酷く落胆した。

「ほぅ?通常の5倍もの税を取り立て、民は食うのもやっとで、身売りする者が増加し、直訴した民を処罰している現状が上手くいっていると………本気で思っているのか!!!!!」

国王の突然の怒り声に、多くの貴族が震え上がった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

転生したら死にそうな孤児だった

佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。 保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。 やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。 悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。 世界は、意外と優しいのです。

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!

naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』 シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。 そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─ 「うふふ、計画通りですわ♪」 いなかった。 これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である! 最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

処理中です...