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精霊の贈り物について

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「本当に、御主の遺言通りに長生きしてみるもんじゃな」

じんわりと目に涙を溜めながら、しみじみに思った。

「そうだわ!ちょうどよかった。ワイズ様も聞いていたと思うけど、裏の森にアリエル様が仰っていた宝物が出てきたの♪」

シオンは上級薬草を目の前に出した。

「これは上級薬草……ですか?」
「そうなの!高い標高でしか生えない上級薬草が、火山灰の影響で平地で生えていたのよ!これからこの上級薬草の栽培を大規模に行おうと思っているのよ!」

ババンッ!?
という効果音とともにシオンが言った。

シオンの話にワイズ様が興味を抱いた。

「それは素晴らしい!上級薬草が安定して市場に出廻れば、今まで救えなかった者達が救われるようになります!」
「なるほどのぅ?それを行う為に、専門家の派遣と資金援助、後は労働者の斡旋をして欲しいという事じゃな?」

流石は国を統治していただけあって、一を聞いて十を知る先王にシオンはニヤリッとした。

「流石ね。その通りよ。上級薬草なんて滅多にお目に掛かれないから、辺境の民にはただの草にしか見えなかったのよね」

「それなら、しばらくは秘密にしてこの男爵家が王家の承認の元で栽培と販売を手掛けるのが良かろう。そうしなければ、民やゴロツキが周囲に生えている上級薬草を根こそぎ奪っていくじゃろうからのぅ」

「それが良いわね。高級な物が道端に生えているとわかるとパニック状態になるからね」

ここで空気だった父親が遠慮がちに意見を言った。

「それなんですが、我が家の裏の森には大量に生えているのですが、他の所にはほとんど生えてない事がわかりました。原因はわかっておりませんが………」

「それも専門家に調べさせるとしよう。シオン、本日は泊まっていっても良いかのぅ?」
「ええ、ぜひ泊まっていって下さい。明日はこの地域を案内しますわ」

男爵家はそれほど裕福ではありませんが、それなりの屋敷なので客室には余裕があります。

両親は緊張していましたが、晩餐でこの地方の【地酒】を勧めると、先王やワイズ様はとても気に入った様子で話が進みました。

「これは美味い!」
「ええ!ワインとは違う美味しさですね!」

我が国ではワインが主流で、他国に輸出するほど人気が高いのですが、気温などのお陰で葡萄は南の方の領地でしか栽培できません。

故に比較的、東の辺境では育て易いジャガイモやトウモロコシから作った【蒸留酒】を作って飲んでいる。細々と隣の領地に卸している程度なのだが、味に煩い先王やワイズ様がベタ褒めするほどであれば、もしかしたら、買い叩かれている可能性もありますね。

我が愛する両親を騙すとは許せない。
カイル先王やワイズ様に、帰りにお土産を多く持たせて宣伝して貰いましょう。

クククッ、買い叩いている商人め、目にものみせてくれるわ!


まぁ、私は子供なので飲めてませんが、大人になったら飲んでみたいですわね♪ジュルリ










次の日になり、シオンは約束通りにこの周辺の案内をしました。

「すでに火山灰の影響は殆どないのじゃな」

「普通の草花は生えますが、食べられる作物を育てる農地は少ないのです。これも援助はしていても、民は暮らしやすい隣の領地へ逃げてしまったのです」

「そうか、ただ支援するのではなく、民がここで暮らして行きたいと思う土地にしなければならぬのじゃな」

「それはこの地の領主の仕事ですわ。カイル先王は気にしないで下さいまし」

シオン達は周囲が見渡せる丘の上に来ていた。

「シオン、ワシはずっと聞きたかった事があるのじゃが………」
「なんですか急に?」

先王は一呼吸置いてから話した。

「生前、戦争や自然災害の対処で忙しく大切な妻であるシオンをろくに旅行にも連れて行けなかった。もっと二人の時間を大切に作れたのではと後悔していたのじゃ。正直に答えて欲しい。シオンは幸せじゃったか?」

少し考える様に答えた。

「ふふふっ、バカね。幸せだったに決まっているじゃない!子供達も立派に育ってくれたし、貴方は側室も持たずに私だけを愛してくれた。大切にしてくれたもの。最後まで幸せだったわ」

座って先王の胸に顔を埋めて言った。

「そうか…………ありがとう」

夕日が二人の影を作り、いつまでもその余韻を感じていた。

先王にはシオンの姿が、自分と同い年のように映っており、幸せな時間を噛み締めていた。


『守護精霊アリエル様、本当にありがとうございました』

二人とも深く感謝して夕日が沈むまでずっとそのままでいたのでした。


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