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最悪の嫌がらせ………

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メイゲン伯爵を討ち取ってから屋敷の探索は、なかなか楽しい事があった。メイゲン伯爵家の地下の隠し部屋から、金銀財宝がたっぷりと出て来たからだ。

「これは凄いですね~」

数世代に渡り不正に蓄財した金銀財宝は、ヘタをすると小国規模の国家予算ぐらいあるんじゃね?って、言うほどに貯えられていたからだ。

「まったく、よくこれだけを溜め込む事ができたものね。人の欲には底がないと言う事かしら?」
「耳が痛いな。長年に渡り帝国から吸い上げてきた資産だろう。しっかりと回収して、国の為に使わせて貰うさ」

シオンとゼノンが話していた。

「明日、帝都に戻る。できればシオンも一緒に来て欲しい」
「そうね。結局、西部は回れ無かったけど、心配を掛けたし一度戻りましょうか」

この時2人はまだ知らなかった。
この小説の裏ボスが動き始めていた事を。


そして、帝都に戻った2人は───


「シオン、少し大事な話がある」
「はい、何でしょうか?」

王城に呼び出されたシオンはゼノンと二人っきりで会っていた。

「まだ妃の選定の期間ではあるが、満場一致でシオンが王妃になる事が内定した」

「あら?それは本当ですか!」

ゼノンは深呼吸をしてからシオンの手を取って言った。

「シオン、オレは君を愛している。オレの妻になってくれるか?」

ボンッ!?
免疫のないシオンは、真っ赤になりながら、情熱的なプロポーズにコクンッと頷くシオンは可愛かった。

「よかった。これで帝国は安泰じゃ!」

宰相さんは扉から覗いて泣いていた。
いや、宰相だけではなく、シオンの護衛騎士やハル、アキと言ったメンバーもこのプロポーズの現場を盗み見ていた。

まったくもってデバガメ軍団である。

しかし、政略結婚ではなく、お互いに愛し合う婚姻であれば安心だ。

それから二人は良い雰囲気でキスをしようと顔を近付けて───

「ちょっと待ったーーーーーー!!!!!!」

バンッ!と扉を派手に開けて邪魔をする者がいた。
ちょっと、今、良いところなんだから邪魔しないでよ!

バッと扉を見ると、ミスティと秋桜が真っ青な顔で入ってきた。

「な、なななな…………」

いつもは気配を察知できるのに、プロポーズの衝撃で注意散漫になって気づかなかった。

恥ずかしい!!!?

「婚姻前の不純異性交遊は許しません!」

この世界にそんな言葉があるの???

「そんな事より大変です!」

いつもはクールビューティーな秋桜まで申し訳なさそうな顔で詰め寄った。

なに?別件なの???
どうやらミスティとは別口の要件のようだ。

秋桜から手紙を受けるとシオンはサッと目を通した。

「なっ!?」

手紙を読んだシオンはブルブルと震えた。

「どうした?大丈夫か?」

心配そうにゼノンはシオンに声を掛けるが───

「ゼノン………ごめんなさい。貴方のプロポーズ嬉しかった。でも、ダメみたい。実家に帰らなきゃならなくなりました…………さようなら」

キランッ
シオンは目に涙を溜めて去ろうとしたが、ゼノンがシオンの腕を掴んで止めた。

「おい!何があった!?訳を話せ!」

せっかくプロポーズが上手くいったばかりなのに、何があった!?
シオンは震える手で手紙をゼノンに渡した。

「これは実家からの手紙なのか?うん?シオンの実家…………!?」

何かを思い出したかの様にゼノンはバッと手紙を読んだ。

!?

「は、ははは………マジか?」


実家からの手紙には、母マリアが帰った後、すぐにシオンが意識不明になった事で帝国が信用できないと書かれていた。わざと報告を1週間も遅らせた事も不快感があると。

これにはゼノンの判断ミスであり、反論が出来なかった。

極めつけはコレだ。

イリシア王国でクーデターが起こり、現王家の権威は失墜し、全員が幽閉。王国の家臣達は、代わりにオリオン辺境家が王国のトップになって欲しいと打診していると。

つまりシオンはイリシア王国の王位継承権第一位の本物の王女となったので、自国へ戻るようにと連絡が来たのだ。

「待て、このまま帰ればあの母君のことだ。絶対にシオンを王国の【女王】にさせるだろうな………」

「だよね?やっぱり………」

一国の主を嫁がせる訳にはいかない。
結婚のハードルが上がったのだ。

「オレへの嫌がらせで一国を転覆させるのかーーーーーー!!!!!!」

流石のゼノンも叫んだ!
シオンを意識不明にした事への罰としては、どうなんだ!?大事な1人娘を確かに危ない目に合せたよ!それは認める!だからって、コレはないだろうが!!!

一世一代の一番のこのタイミン………グ……で???
ギギギッと秋桜を見る。

「ま、まさかオレがプロポーズするタイミングで手紙を届けろと言われていたの………か…?」

秋桜は申し訳なさそうに目を逸らした。
あ、これ確信犯だ。

お母様(ラスボス)の魔の手は身内にまで広がっているらしい。


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