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夢の続き。怒りは伝播する
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ゼノン皇帝は準備が整うとすぐに出発した。
幸い、ブルーネット公爵が案内役を用意してくれたので小規模で帝都をたった。
宰相は騎士団長と相談して西部での追加の騎士団派遣の準備を任されていた。
「やれやれ、東部の次は西部ですが、本当に長年かけてもうまくいかなかった改革が、シオン王妃様がきてから、順調に進んでいますなぁ~」
多くの民が飢える事なく笑顔で暮らせる国。
理想だと笑われることもあった。
前皇帝は自分が贅沢できれば民がどうなろうとも関係ないと言った。
しかし自分の教え子であり、現皇帝は宰相の夢に賛同してくれて、一緒に帝国を建て直そうと言ってくれた。
なかなか進まない改革に苛立つこともあったが、夢を共有できる仲間がいてくれたおかげで頑張る事ができた。
自分はもう歳でいつまで働けるかわからない。
せめて、帝国の建て直しの、その道筋ぐらまでは準備しておきたいと思っていた。
自分の後継者も、ある程度は使えるように育ってきている。
宰相は残りの人生の余生を国に捧げるつもりだった。
それがシオン・オリオン辺境伯の令嬢が来たことで急激に変化が起こった。
東部の不正をしていた貴族達がどんどん粛清されているのだ!
不正の証拠を提出され、さらには物理的にも制裁を受けている状態で報告された。
そして東部は生まれ変わった。
宰相は、もしかしたらと期待してしまった。
そしてそれは現実と成りつつあった。
かつて夢見た理想が目の前まで来ている。
だが、その立役者である王妃様が殺されかけたのだ!?
許せない。
許すことなどできるはずがない!
宰相は皇帝以上に内心では怒り狂っていた。
「ダラス騎士団長殿!よろしくお願い致しますぞ!」
「はっ!宰相閣下!必ずやシオン王妃様を襲った犯人を捕まえてきます!」
宰相首を振って低い声で言った。
「勘違いするな。シオン王妃様を襲った犯人は確実に殺せっ!責任はワシがとる!遠慮はいらん!皆殺しにするのじゃ!」
!?
「宰相閣下………それは……」
「すでにシオン王妃様が献上された政策と開発した商品で、多くの民が救われ、帝国に莫大な利益をもたらせてくれた。その資金を使い、多くの孤児院を立て、職の斡旋、さらに今度は平民も通える学校の建設。すでにシオン王妃様が居なければ国が成り立たないのじゃぞ!?シオン王妃様は帝国を100年は発展させてくれた恩人じゃ。何があっても皇帝陛下と並んで守らねばならぬ御方じゃ!」
「それは私も心得ております。まだ妃の認定の期間ではありますが、すでにシオン王妃様に決まったも同然でしょう。宰相閣下、それは見せしめのためでしょうか?」
宰相は頷いた。
「そうじゃ。下手にシオン王妃様に手を出すと一族諸共死罪にしてやると言う意味でじゃ」
「………確約は出来ませんが、約束します。帝国に繁栄をもたらす王妃様に仇なす者に死を与えましょう!」
宰相は満足に頷くとダラス騎士団長を見送った。
そして、これだけ怒り狂っている人物は皇帝陛下、宰相だけではなかった。
シオンが意識不明と言う情報が帝国中を駆け巡ると、最初に行動を起こしたのは東部のゼファー子爵……いや、陞爵して、ゼファー伯爵だった。
「クッ、こうしてはいられない。大規模な挙兵は誤解をうむ。50人だ。50の中隊を連れて西部に行くぞ!必ずやシオン様を襲った者を見つけ出す!今こそシオン様に受けた恩を返すのだ!」
「「はっ!」」
ゼファー伯爵は精鋭を集めて出発の準備をした。
「お父様!私もお連れ下さい!邪魔は致しません!帝都で情報を集めたいと思います!」
「わかった。だが馬車でもスピードを出していく。心せよ」
「はい!」
こうして帝国中が静かに、激しく揺れ動いていくのだった。
幸い、ブルーネット公爵が案内役を用意してくれたので小規模で帝都をたった。
宰相は騎士団長と相談して西部での追加の騎士団派遣の準備を任されていた。
「やれやれ、東部の次は西部ですが、本当に長年かけてもうまくいかなかった改革が、シオン王妃様がきてから、順調に進んでいますなぁ~」
多くの民が飢える事なく笑顔で暮らせる国。
理想だと笑われることもあった。
前皇帝は自分が贅沢できれば民がどうなろうとも関係ないと言った。
しかし自分の教え子であり、現皇帝は宰相の夢に賛同してくれて、一緒に帝国を建て直そうと言ってくれた。
なかなか進まない改革に苛立つこともあったが、夢を共有できる仲間がいてくれたおかげで頑張る事ができた。
自分はもう歳でいつまで働けるかわからない。
せめて、帝国の建て直しの、その道筋ぐらまでは準備しておきたいと思っていた。
自分の後継者も、ある程度は使えるように育ってきている。
宰相は残りの人生の余生を国に捧げるつもりだった。
それがシオン・オリオン辺境伯の令嬢が来たことで急激に変化が起こった。
東部の不正をしていた貴族達がどんどん粛清されているのだ!
不正の証拠を提出され、さらには物理的にも制裁を受けている状態で報告された。
そして東部は生まれ変わった。
宰相は、もしかしたらと期待してしまった。
そしてそれは現実と成りつつあった。
かつて夢見た理想が目の前まで来ている。
だが、その立役者である王妃様が殺されかけたのだ!?
許せない。
許すことなどできるはずがない!
宰相は皇帝以上に内心では怒り狂っていた。
「ダラス騎士団長殿!よろしくお願い致しますぞ!」
「はっ!宰相閣下!必ずやシオン王妃様を襲った犯人を捕まえてきます!」
宰相首を振って低い声で言った。
「勘違いするな。シオン王妃様を襲った犯人は確実に殺せっ!責任はワシがとる!遠慮はいらん!皆殺しにするのじゃ!」
!?
「宰相閣下………それは……」
「すでにシオン王妃様が献上された政策と開発した商品で、多くの民が救われ、帝国に莫大な利益をもたらせてくれた。その資金を使い、多くの孤児院を立て、職の斡旋、さらに今度は平民も通える学校の建設。すでにシオン王妃様が居なければ国が成り立たないのじゃぞ!?シオン王妃様は帝国を100年は発展させてくれた恩人じゃ。何があっても皇帝陛下と並んで守らねばならぬ御方じゃ!」
「それは私も心得ております。まだ妃の認定の期間ではありますが、すでにシオン王妃様に決まったも同然でしょう。宰相閣下、それは見せしめのためでしょうか?」
宰相は頷いた。
「そうじゃ。下手にシオン王妃様に手を出すと一族諸共死罪にしてやると言う意味でじゃ」
「………確約は出来ませんが、約束します。帝国に繁栄をもたらす王妃様に仇なす者に死を与えましょう!」
宰相は満足に頷くとダラス騎士団長を見送った。
そして、これだけ怒り狂っている人物は皇帝陛下、宰相だけではなかった。
シオンが意識不明と言う情報が帝国中を駆け巡ると、最初に行動を起こしたのは東部のゼファー子爵……いや、陞爵して、ゼファー伯爵だった。
「クッ、こうしてはいられない。大規模な挙兵は誤解をうむ。50人だ。50の中隊を連れて西部に行くぞ!必ずやシオン様を襲った者を見つけ出す!今こそシオン様に受けた恩を返すのだ!」
「「はっ!」」
ゼファー伯爵は精鋭を集めて出発の準備をした。
「お父様!私もお連れ下さい!邪魔は致しません!帝都で情報を集めたいと思います!」
「わかった。だが馬車でもスピードを出していく。心せよ」
「はい!」
こうして帝国中が静かに、激しく揺れ動いていくのだった。
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