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神の手
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乱入してきた黒ずくめの男は───暗殺者は、シオンをまっすぐに狙ってきた。
数人側にいた護衛騎士達が立ち塞がり、暗殺者に斬り掛かったが、暗殺者は剣を避けると、その勢いのままシオンに向かった。
「シオン!?」
幸いにもシオンは木刀を持っていた。
暗殺者は小太刀を構えて斬り掛かった!
『一閃』
シオンと暗殺者が交差した。
バタンッ
暗殺者は白目を剥いて倒れた。
「まったく見えなかったわ…………」
ブルーネット公爵家の家族は驚きを隠せなかった。
先ほどの公爵との試合は手加減していたのだ。
「やれやれ、シオン令嬢の底が知れないな」
公爵は頭を掻きながら護衛達に指示を飛ばした。
「お前達!たるんでるぞ!客人を招いている場所で、侵入者を止められないとは恥をしれっ!」
「「申し訳ございません!!!」」
警護していた騎士達は膝を付いて頭を下げた。
「公爵様、我々は無事だったのです。そのくらいに。それより、他に怪我人など出なかったのですか?」
公爵はハッとなって報告を聞いた。
「そ、それが草陰に隠れていた暗殺者に気づいたメイドが1人斬りつけられて重傷を負いました」
なるほど。あの急に大騒ぎになったのはそのせいか。
「すぐにそのメイドの所へ案内してください!」
「えっ?いやしかし………」
「一刻を争うのです!早く!」
お母様、マリアのすごい剣幕に公爵はタジタジになり、メイドの所へ案内した。
「これは酷い………」
肩から斜めに斬りつけられ今も、血だらけの状態で死にそうだった。
「これは思った以上に酷いわね。シオン手伝いなさい!」
「はい!」
馬車からお母様のカバンを持ってくると、すぐにナイフで服を切り、傷口を確認した。
「すぐに大量の水と、お湯を沸かして持ってきて下さい!」
「はい!?」
周りにいたメイドが慌ただしく動き出した。
「これはいったい………」
エリーゼ夫人は呆然と見ていた。
「シオン、消毒薬を、それと万能毒消し薬を」
「はい」
お母様のカバンを開けると、様々な医薬品が入っており、手術道具も入っていた。
消毒薬を傷口に掛けるとマリアは血だらけになるのも構わずに診断していく。
「よかった。外傷のみで、内臓などは無事ね。これならまだ救える」
バケツに入った熱湯で消毒しながら、目にも留まらぬ速さで傷口を縫っていく。
シオンはマスクをしたお母様の汗を拭き取りながら、言われた道具を渡していく。
「す、すごい!?」
マリアは元王族。現国王の妹だ。そして、嫁いできた時はまったくの『無能』だった。
転機は戦争だった。
目の前で大勢の兵が傷付き死んでいく様をみて、当時、最初にできた事は何とか包帯を巻くことだけだった。
その中には、そのまま死んでいった者もいた。
その時、マリアの中で劇的に何かが変わった。
その日以降、医学の勉強を始めたのだ。
マリアは16歳で嫁いだ。
シオンが生まれてからも、必死に現地の医者に実践的な外科手術を学んだ。
幸いにもイザコザの絶えない国境である。治すべき患者は大勢いたのだ。
それから約18年以上医学に触れ合い、いくつもの医学書を出版するくらい、有名になっていた。
この界隈では、外科手術の名医【神の手の女王】と言う通り名まで持っているのだ。
元々、イリシア王国の王族は何かしらの一芸に秀でた才能のある者が生まれる事が多かった。
ただいつの頃か、貿易の恩恵で贅沢三昧になり、久しく才能を開花させた者が居なかっただけなのだ。
目の前で死んでいく兵を見て、マリアの曇った目が払拭され、命の尊さを自覚したことで才能が開花された。
オリオン辺境領地では、マリアに救われた命はこの十数年で数しれない。実家の王族が腐っていても、聖母マリアは守る!と、辺境伯の父親より人気が高いのだ。ちなみに、ラブラブな夫婦である。
今、長年に培われた技術で、重症のメイドの命が救われるのだ。素人でも、迷いなく縫合していく手際の良さに高い技術があるとわかる。
「ふぅ………これで取り敢えずは大丈夫よ。しばらくは経過を確認しながら様子を見るしかないわね」
ようやく一息つくと、周囲から歓声が上がった。
「ありがとうございます!私の親友だったんです!」
「同僚を救って頂きありがとうございました!」
エリーゼだけは不思議そうな顔で尋ねた。
「マリア様はお医者様だったのですか?イリシア王国の元王女様ですよね?」
「「えっ?」」
メイド達はマリアの正体を知らなかったようだ。
「それは過去の話です。辺境領では帝国が常に攻めてくる土地です。傷つく者が多いのです。嫁いだばかり時は何も出来ず、死んでいく兵を見ているしか出来ませんでした。その経験から少しでも守るべき民や兵を救いたい一心で、この十数年医療の道を勉強して、治療する術を身に着けました。娘のシオンだけに辛い事を押し付ける訳にはいきませんので」
マリアを見る周囲の目が変わった瞬間だった。
「お母様、私はきちんとお母様の愛情を感じております。そして尊敬もしているのですよ?ドレスを血だらけにしても、患者を救おうというお母様は、私の自慢です!」
珍しく人前でマリアの腕を取り甘えるシオンだった。
数人側にいた護衛騎士達が立ち塞がり、暗殺者に斬り掛かったが、暗殺者は剣を避けると、その勢いのままシオンに向かった。
「シオン!?」
幸いにもシオンは木刀を持っていた。
暗殺者は小太刀を構えて斬り掛かった!
『一閃』
シオンと暗殺者が交差した。
バタンッ
暗殺者は白目を剥いて倒れた。
「まったく見えなかったわ…………」
ブルーネット公爵家の家族は驚きを隠せなかった。
先ほどの公爵との試合は手加減していたのだ。
「やれやれ、シオン令嬢の底が知れないな」
公爵は頭を掻きながら護衛達に指示を飛ばした。
「お前達!たるんでるぞ!客人を招いている場所で、侵入者を止められないとは恥をしれっ!」
「「申し訳ございません!!!」」
警護していた騎士達は膝を付いて頭を下げた。
「公爵様、我々は無事だったのです。そのくらいに。それより、他に怪我人など出なかったのですか?」
公爵はハッとなって報告を聞いた。
「そ、それが草陰に隠れていた暗殺者に気づいたメイドが1人斬りつけられて重傷を負いました」
なるほど。あの急に大騒ぎになったのはそのせいか。
「すぐにそのメイドの所へ案内してください!」
「えっ?いやしかし………」
「一刻を争うのです!早く!」
お母様、マリアのすごい剣幕に公爵はタジタジになり、メイドの所へ案内した。
「これは酷い………」
肩から斜めに斬りつけられ今も、血だらけの状態で死にそうだった。
「これは思った以上に酷いわね。シオン手伝いなさい!」
「はい!」
馬車からお母様のカバンを持ってくると、すぐにナイフで服を切り、傷口を確認した。
「すぐに大量の水と、お湯を沸かして持ってきて下さい!」
「はい!?」
周りにいたメイドが慌ただしく動き出した。
「これはいったい………」
エリーゼ夫人は呆然と見ていた。
「シオン、消毒薬を、それと万能毒消し薬を」
「はい」
お母様のカバンを開けると、様々な医薬品が入っており、手術道具も入っていた。
消毒薬を傷口に掛けるとマリアは血だらけになるのも構わずに診断していく。
「よかった。外傷のみで、内臓などは無事ね。これならまだ救える」
バケツに入った熱湯で消毒しながら、目にも留まらぬ速さで傷口を縫っていく。
シオンはマスクをしたお母様の汗を拭き取りながら、言われた道具を渡していく。
「す、すごい!?」
マリアは元王族。現国王の妹だ。そして、嫁いできた時はまったくの『無能』だった。
転機は戦争だった。
目の前で大勢の兵が傷付き死んでいく様をみて、当時、最初にできた事は何とか包帯を巻くことだけだった。
その中には、そのまま死んでいった者もいた。
その時、マリアの中で劇的に何かが変わった。
その日以降、医学の勉強を始めたのだ。
マリアは16歳で嫁いだ。
シオンが生まれてからも、必死に現地の医者に実践的な外科手術を学んだ。
幸いにもイザコザの絶えない国境である。治すべき患者は大勢いたのだ。
それから約18年以上医学に触れ合い、いくつもの医学書を出版するくらい、有名になっていた。
この界隈では、外科手術の名医【神の手の女王】と言う通り名まで持っているのだ。
元々、イリシア王国の王族は何かしらの一芸に秀でた才能のある者が生まれる事が多かった。
ただいつの頃か、貿易の恩恵で贅沢三昧になり、久しく才能を開花させた者が居なかっただけなのだ。
目の前で死んでいく兵を見て、マリアの曇った目が払拭され、命の尊さを自覚したことで才能が開花された。
オリオン辺境領地では、マリアに救われた命はこの十数年で数しれない。実家の王族が腐っていても、聖母マリアは守る!と、辺境伯の父親より人気が高いのだ。ちなみに、ラブラブな夫婦である。
今、長年に培われた技術で、重症のメイドの命が救われるのだ。素人でも、迷いなく縫合していく手際の良さに高い技術があるとわかる。
「ふぅ………これで取り敢えずは大丈夫よ。しばらくは経過を確認しながら様子を見るしかないわね」
ようやく一息つくと、周囲から歓声が上がった。
「ありがとうございます!私の親友だったんです!」
「同僚を救って頂きありがとうございました!」
エリーゼだけは不思議そうな顔で尋ねた。
「マリア様はお医者様だったのですか?イリシア王国の元王女様ですよね?」
「「えっ?」」
メイド達はマリアの正体を知らなかったようだ。
「それは過去の話です。辺境領では帝国が常に攻めてくる土地です。傷つく者が多いのです。嫁いだばかり時は何も出来ず、死んでいく兵を見ているしか出来ませんでした。その経験から少しでも守るべき民や兵を救いたい一心で、この十数年医療の道を勉強して、治療する術を身に着けました。娘のシオンだけに辛い事を押し付ける訳にはいきませんので」
マリアを見る周囲の目が変わった瞬間だった。
「お母様、私はきちんとお母様の愛情を感じております。そして尊敬もしているのですよ?ドレスを血だらけにしても、患者を救おうというお母様は、私の自慢です!」
珍しく人前でマリアの腕を取り甘えるシオンだった。
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