上 下
56 / 106

財政の健全化

しおりを挟む
バーネットさんは憎しみのこもった目でシオンを睨み付けていた。

『このクソ女め!私になんの怨みがあるのよ!』

「シオンさん、そういう貴女は何を提案するのですかしら?さぞ、素晴らしい提案なんでしょうね!」

嫌味を込めて言った。
シオンはふむ、と少し考えてから、同じ王妃候補達に尋ねた。

「まず、帝国の財政が厳しいのは理解しました。だから王妃を1人にする思惑もあるのでしょう。それ故に同じ王妃候補の皆さんに尋ねます。自分が王妃になった時、数年でいくらほど利益を出すことができますか?具体的な金額を答えて下さい。セラさん、帝国の財政を健全にするには、まず、いくらほどの資金が必要ですか?」

「はい、父が言うには現在の帝国の収益は毎年赤字となっています。入ってくる税収より支出の方が多いのです」

「でっ、いくらほど赤字をだしているのです?」
「毎年、多少の差はありますが、おおよそ、70億Gぐらいです。累計の赤字は考えたくもありませんが………」

それって、各王妃達の出費じゃないのよ?
各王妃達には年間に決まった交遊費と言う名目でお金がでる。使わなければ、それは貯蓄として王妃の資金となる。それが帝国の財政にダメージを与えているらしいね。

「では、各自が先に言った政策で、いくらほど儲けが出ますか?」

3人の王妃候補は悩んだ。

「ちょっと!貴女は何をしようとしているのよ!今は貴女がどんな政策をするのかの場でしょう!」

バーネットが口を挟んだ。

「これは私の政策をお伝えする前に、聞いておかねばならない事です。バーネットさん、貴女はいくら儲けを出せますか?」

シオンの圧力に気圧された。

「わ、私なら先ほどの関税を下げて、安くなった商品を売る場合、下げた関税の差額をだすと、年間約10億Gの儲けは出せるわ」

流石は商売人の家系だ。
バーネットの計算は妥当な所だろう。
次にセラ令嬢が発言した。

「シオンさん、私は税収の健全化が上手くいけば、30~40億Gぐらいの増収は可能だと思います」

うん、どれだけの貴族が不正しているかわからないけど、東部の状況を見るとそれくらいの増収は行けそうだね。しかも、セラさんの政策の良いところは、来年以降かならず増収になると言う所だ。不作などで多少の前後はするだろうが、隠していた税の収入が判明したのだ。次回から極端に隠せなくなる。

エリスだけ悩んでいた。

「正直、私の政策では短期で国の増収は難しいと思う。貿易が上手くいっても、いきなり多くの商品のやり取りはできないもの。少しづつ貿易の量を増やしていくとしても数年では1~5億Gぐらいかしら?」

確かにしっかりと現実が見えている。
みんな中々考えているじゃない!

ここでようやくシオンが自分の意見を伝えた。

「皆さん、しっかりと帝国の状況を見ていますね。しかし、それでは帝国は救えない」

!?

「なら貴女は何を行なうと言うのですか!」

シオンは一呼吸置いてから話した。

「500億Gです」

「はっ?」

バーネットは何を言っているんだと声を出した。

「私は年間500億Gの外貨を稼ぎます」

「「はっーーーーーーー!!!!!????」」

多くの人々から声が上がった。

「そんな嘘を堂々と!恥を知りなさい!」

バーネットは騒ぐが────

「シオン令嬢、具体的にはどうやってだ?」

ゼノン皇帝が楽しそうに聞いてきた。
シオンはハルに指示をだして、外からある物を持ってこさせた。

ハルが部屋の外に出て戻ってくるまでに、先に話しを進めた。

「まずこれを見て下さい」

テーブルにシオンは小瓶を2つ置いた。

「それはなんですの?」

エリスとセラは興味深く見つめた。

「これは、帝国で採れた【砂糖】と【メープルシロップ】です」

!?

「嘘よ!帝国で砂糖なんて採れる訳ないわ!南の王国から持ってきたのでしょう!」

バーネットの言葉にゼノン皇帝が首を振った。すでにシオンが王宮に入り時間ができた事で、ヴァイス侯爵領にあった例の【アレ】が帝都周辺にも、多く自生している事を調べて、大規模な栽培を皇帝に提案していたのだ。

すでに作る工場も実際に見て貰っている。

「それは事実だ。すでにとある作物から砂糖ができる現場を俺自身が確認している」

嘘よ………
すでに皇帝も確認済みなどでは認めざるおえない。

「俺としてはメープルシロップの方が驚いたがな?」

シオンは微笑みながらアキに、各王妃候補の目の前に小瓶を持っていった。
失礼しますと、意外にセラが瓶を開けて、それぞれ匂いを嗅いでから、ひと舐めした。

「間違いなく砂糖だわ。でもメープルシロップとはいったい?蜂蜜とも違う………初めての味だわ」

エリスとバーネットも舐めた。

「これはとある木から採れる樹液なんです。冬の間しか採れない欠点がありますが、木自体は多く生えているのを確認済みです」

「「これが樹液ですって!?」」

驚きの声が上がった。


※補足事項
国の収益で500億Gと言う金額が、少ないかと思われるかもしれませんが、この世界では物価が違うので数倍、価値が高いと思って下さい。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

二人の男爵令嬢の成り上がり!でも、結末は──

naturalsoft
恋愛
オーラシア大陸の南に姉妹国と呼ばれる二つの国があった。 西側のアネーデス王国 東側のイモート王国 過去にはお互いの王族を嫁がせていた事もあり、お互いにそれぞれの王族の血が受け継がれている。 そして、アネーデス王国で周辺国を驚かすニュースが大陸を駆け抜けた。 その国のとある男爵令嬢が、王太子に見初められ【正しい正規の手続き】を踏んで、王太子妃になったのである。 その出来事から1年後、隣のイモート王国でも、その国の男爵令嬢が【第一王子】の【婚約者】になったと騒がれたのだった。 しかし、それには公衆の面前で元婚約者に婚約破棄を突き付けたりと、【正規の手続きを踏まず】に決行した悪質なやり方であった。 この二人の結末はいかに── タイトルイラスト 素材提供 『背景素材屋さんみにくる』

悪役令嬢 VS 悪役令嬢

らがまふぃん
恋愛
 ゲーム世界の悪役令嬢に生まれ変わった。よく、というより、ほぼ覚えていないゲームだけど、この子、処刑エンドだった気がする。ヒロインとヒーローの噛ませ犬的存在として処刑される、そんな役割だったかな。噛ませ犬?はんっ。冗談じゃない。どうせ死ぬなら噛ませ犬なんて可愛い存在になんて収まるかよ。ケルベロスに噛まれやがれ。 ※ご都合主義です。主人公の口が悪いので、念のためR15にしてあります。真面目な話になることもありますが、続きません。コメディ要素強めの恋愛要素薄め、そしてファンタジー要素も薄め。どちらのカテゴリか迷った挙げ句の恋愛にいたしました。そんなレベルの恋愛話です。よろしかったらお付き合いくださると嬉しいです。 お気に入り登録やしおりを挟んでくださってありがとうございます。とても励みになります!どうぞよろしくお付き合いくださいませ。 ※R5.10/31らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

王妃のおまけ

三谷朱花
恋愛
私、立夏は、異世界に召喚された後輩とたまたま一緒にいたことで、異世界について来ることになった。 ただ、王妃(ヒロイン)として召喚された後輩もハードモードとか、この世界どうなってるの?! 絶対、後輩を元の世界に連れて帰ってやる! ※アルファポリスのみの公開です。 ※途中でリハビリ方法について触れていますが、登場人物に合わせたリハビリになっていますので、万人向けのリハビリではないことをご理解ください。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

乙女ゲームの悪役令嬢は断罪回避したらイケメン半魔騎士に執着されました

白猫ケイ
恋愛
【本編完結】魔法学園を舞台に異世界から召喚された聖女がヒロイン王太子含む7人のイケメンルートを選べる人気のゲーム、ドキ☆ストの悪役令嬢の幼少期に転生したルイーズは、断罪回避のため5歳にして名前を変え家を出る決意をする。小さな孤児院で平和に暮らすある日、行き倒れの子供を拾い懐かれるが、断罪回避のためメインストーリー終了まで他国逃亡を決意。 「会いたかったーー……!」 一瞬何が起きたか理解が遅れる。新聞に載るような噂の騎士に抱きすくめられる様をみた、周囲の人がざわめく。 【イラストは自分で描いたイメージです。サクッと読める短めのお話です!ページ下部のいいね等お気軽にお願いします!執筆の励みになります!】

処理中です...