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シオンの悪巧み

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シオンは子爵を目の前にして、頭の中でソロバンを叩いていた。この状況を上手く利用出来ないかと。ヴァイス侯爵を失墜させる事が出来れば、妃の選別の儀でも有利に運べる様になる。

さて、どうするか……
その時のシオンの顔は悪の女幹部の様に不敵に嗤う悪女そのものであったという。by護衛騎士談

「コホンッ、ヴァイス侯爵の事について少し伺っても?」

クリフト子爵は頷くと説明してくれた。
元々ヴァイス侯爵は伯爵家であり、先代が新しいワインの開発をして、北の国々に販路を拡げた功績により陞爵して侯爵になった。
高位貴族からは新興貴族と思われており、今の代になってから、名誉欲に目が眩んでいる。
南の小競り合いに兵は出すが、自分では指揮は取らない。現在、金儲けに勤しんでいるのは、金を使って周りを味方に付けた方が、自分の権力を保てると思っているようであった。

「現侯爵になってから約15年になりますが、私は先代の侯爵を知っているのです。先代は素晴らしい方でしたが、現在の侯爵に代替わりしてから、少しづつ歯車が狂っていった様に思えます」

なるほど。昔の侯爵に恩を感じている方も多いのね。

ダイカーン男爵は恐らくお取り潰しになるでしょう。そして、取り敢えず男爵領は皇室預かりになる。そうなればヴァイス侯爵も命令できなくなるわ。

そこに、クリフト子爵が派閥から抜けて、伯爵家の不正を暴けば、東部の南側一帯がヴァイス侯爵の支配から抜ける事になるので三分の一の派閥勢力を削れる。

フフフッ、悪くないわね!

シオンは交渉する為に提案した。

「もし、娘さんの幸せを願うのなら婚約解消したいですか?」
「それは勿論!」

ならばと、シオンは提案した。

「なら、私が伯爵家の不正の証拠を見つけてきましょう。それを王宮騎士団にリークすれば、大義名分の元、婚約破棄できるでしょう」

「そ、そんな事ができるのですか!?」
「はい。無論、タダと言う訳にはいきませんよ?」

子爵と秘書の方はお互いに顔を見合わせた。

「私に何をお望みで?」
「もし、上手くいった場合、ヴァイス侯爵の派閥から抜けて下さい」

!?

「それは………」
「大丈夫です。上手くいった場合でいいですから。それに恐らく男爵領は取り潰しになるでしょう。すると皇室預かりとなって、ヴァイス侯爵の権力と支配を受け付かなくなります。幸い、男爵領は酷い有り様です。そこに商機があります」

子爵は考え込んだ。代わりに秘書の方が尋ねた。

「南に販路を拡げろと仰るのですか?」
「それもあります。ただ、男爵領は高い税のせいで領民は食うのがやっとの有り様。男爵と繋がっていた悪徳商人も捕縛されるか、逃げ出すでしょう。そこに、まっとうな商人の手配と、少しで良いので生きていくに必要な食料品など安く卸して欲しいのです。クリフト子爵なら、私の言いたい事がわかりますよね?」

考え込んでいた子爵は顔を上げてシオンを見た。

「男爵領に恩を売る事で、将来的に男爵領を拝命できる可能性があると言う事ですね?」
「その通りです!本来、お家断絶などした場合、領地は王家に返還されます。そして王家から一時的な執政官が派遣されます。でも───」

「今の皇帝は代替わりしたばかりで、信用できる家臣が少ない。一時的に誰か派遣しても、長期で面倒を見ることはできないでしょう。人手不足もありますしね。だったら隣の領地で、さらに支援してくれている領主に治めてもらうのが効率的と判断される訳ですね」

流石は、頭の回転が速くて助かるわ!

「その通りです。最初は利益が少なくとも、食料品を安く売っていれば、そこの領民は感謝して子爵に領主になって欲しいと願うはずです。ただでさえ、高い税を払っていた領民です。ここと同じ税率にするだけでも感謝されるでしょう」

綺麗事ばかりではやっていけませんからね。
統治者として、アメと鞭は使い分けないと。

「わかりました。それならヴァイス侯爵の派閥を抜けてもやっていけそうです。それで、他にシオン令嬢の求める物はありますか?うちは爵位は低いですが、ゼファー子爵家はかなり昔からある名家です。【シオン様】の後ろ盾にられば良いのでしょうか?」

!?

ここまで話せば私の正体にも気付くわよね。
シオンは、軽く首を振った。

「確かにそれは魅力的ですが、まだ大丈夫ですわ。追い詰められた場合はお願いするかも知れませんが、今は結構です」

「ならば何を………」

シオンは指をピンッと立てて言った。

「新しい商売についてのお願いですわ♪」

シオンは、それは良い笑顔で提案するのだった。



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