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宝物

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妖精のフィーネを見詰める一同にフィーネは無い胸を張って答えた。

「ふはははっ!控えおろう!我こそは妖精のフィーネであるぞ~!」

ノリノリだった。

「もう、このバカ妖精が申し訳ありません!」

いつもやらかしてばかりのシオンも、フィーネと並ぶと、普通の令嬢に見えるのだ。
(失敬ね!)

「妖精…………本当に居たのか」

ジークも珍しい妖精に目が離せなかった。フィーネはシオンからジーク王子の肩に乗った。

「あっ……」
「ふーん?あなた、何となくこの国のライト王子と同じ感じするけど、シオンに何かしたら許さないからね!」

ジーク王子は首を縦に振って頷いた。

「よーし!良い子だね~♪」

フィーネは調子に乗って頭を撫でた。

~~~!?

「珍しいわね。フィーネがなつくなんて?」
「別に~?ちょっと可愛いと思っただけよ~」

そういうと、フィーネは飛んで行ってしまった。

「まったく、自分勝手なんだから!ジーク王子?大丈夫でしたか?」
「あ、あぁ………」

妖精に触れられたと言う事実に感動していた。

「たまにフィーネは人前に姿を現すのですが、自分から触ってくる事は珍しいんですよ?」
「そうなのか?」

「ええ、妖精に好かれ易い体質かも知れませんね♪」

こうしてシオンは一通り案内を終えると、最後の仕事として15分で描く似顔絵を描いた。

「凄い!たった15分でここまで描けるなんて!?ここの作品を手掛けた事はあるよ!」

ジーク王子は当初の目的を忘れて………いや、素の自分を出して喜んだ。

「はぁ~こんな楽しい時間がもう終わりだなんて悲しいな」
「またいらっして下さい。次はスフレ男爵領に私の専用美術館を建設中です。もっと色々な作品を描いて置きますからね♪」

ジークはシオンの出した手を握ると必ずまた来るよと言って、大使として務めを果たす為に王妃様に着いていった。

「ふぅ~これでお役御免かしら?」

ようやく肩の荷が降りたシオンだったが、まだ午後のお勤めが残っていた。食事を取って最後の仕事をするのだった。










一方──

「いやー、実に有意義な時間だったな」

大満足のジーク王子は上機嫌で馬車の中で長年仕えている執事に話した。

「殿下が楽しまれたのは何よりです」

ジークは執事に言った。

「王妃殿には釘を刺されたが、例の件を父上から打診して貰おう」

シオンは現在、フリーの令嬢である。故に、婚約できないかと打診をお願いするのだ。
しかし、前もってシオンの才能を他国に渡す訳にはいかないと、王妃様はシオンを渡せないと釘を刺していたのだ。
自分の子供が無理でも、せめて国内の有力貴族と婚約して欲しいと願っているのだ。

「自国の王子との婚約が破談になったばかりですが、大丈夫でしょうか?」
「多分、断られるだろうな。ただ、打診したという事実が欲しいんだ。その後は足しげく通ってシオンの気持ちを掴んでみせる!」

妖精姫………いや、シオンの才能にジークは初めて本気で欲しいと思った女性に出会ったのだ。ジークはシオンに描いて貰った似顔絵を大事に見詰めるのだった。


ゾクッ……
「うっ、何やら悪寒が………」


天然タラシのシオンの受難は続くのであった。






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