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魔女裁判ですわ!
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丸一日で書き上げました。
疲れたー!
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
聖女シオンはヒーリング聖王国の当代の聖女であり、セイント伯爵家の当主でもあった。
御歳17歳の女の子である。
青い瞳に、腰まである長い金髪を靡かせる美少女であった。胸は…………まぁ、膨らんではいる程度である。(放っといて!)
シオンは聖女として特例として学校に通わずに各地を飛び回りながらシオンは聖女として日々、忙しく過ごしていた。
「シオン様!いつもありがとうございます!」
「聖女様、ぜひ今日取れた新鮮な野菜をもらって下さい」
「シオンお姉ちゃん!怪我を治してくれてありがとう!」
どこに行っても大人気であり、王族などより知名度と名声が高かった。
『一日一善』
これがセイント伯爵家の家訓であった。
そして、聖女を政治的に利用しないと言う盟約が王家とあり、政治に関わらないように過ごしていた。
王都にいると貴族連中が煩いので、地方の辺境に住居を構え、日々、辺境を廻りながら聖女としての務めを果たしていた。
「よ~し!今日も頑張ろう!!!」
朝起きると元気よく叫ぶのも日課である。
「聖女シオン様!王都の大聖堂にて出廷要請が出ております!すぐにご同行お願い致します!」
ホワイッ!?
どういうこと???
爽やかな朝は出鼻から挫かれたのでした。
「え、え~と?理由はなんですか?」
伝令の使者が答えた。
「なんでも聖女シオン様には【魔女】の疑いがあるとの事で、事実確認のため出廷して欲しいとの事です!」
!?
「ななななっ!?そ、そそそそんんなわわわっけけけけないでしししししょう!!!!」
メチャクチャ動揺するシオンに疑いの目を向ける使者であったが、すぐにそれどころでは無くなった。
ヒューーーーン!!!!!
???
ザクッ!
「ひぃっ!?」
使者の目の前に草刈鎌が飛んできて、目の前に刺さった。
「テメェ!なんて言いやがった!聖女シオン様が魔女だと!もういっぺん言ってみろっ!」
気付くと、外には大勢の村人が集まっていた。
どうした?どうした?
「こいつがシオン様が魔女だから裁判するので出廷しろって言っているんだ!」
はぁ!!!!?
怒怒怒!!!!!!
村人の怒りは凄まじかった。
「オイッ!聖女シオン様になんて事を言うのだ!今まで、辺境の結界を張り、怪我人や病気の治療をしていたのは誰だと思っているんだ!」
「そうだそうだ!巫山戯るなよっ!」
「誰がそんなデマを流した!ぶっ殺してやるぞ!!!」
「ってか、魔女でも良いじゃん。シオン様、マジ天使だけどw」
「「「違いない!」」」
ワッハハハハハ!!!!!
何ともノリの良い辺境の人々であった。
王都から来た使者は逃げるように立ち去っていった。
「何だったんだろー?」
「シオン様は気にせずいつものお仕事にお出掛け下さい」
人情ある村人達に見送られながら聖女シオンはお仕事に出掛けるのでした。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
コソッ
「王都の方がきな臭いな。すぐに調べろ」
「はっ!畏まりました」
「それと念のために、【週間・聖女日報】に緊急事案として、会員達に伝達しろ」
「了解しました!」
説明しよう!
『聖女日報』と言うのは、1週間に1度、聖女様の側で暮らす【村人】?の有志によって日々の聖女シオンの活動報告を国内のみならず、周辺国にいる聖女様の『ファン会員』に届けられるファン日報の事である。
( ・`д・´)キリッ
こうして日々、聖女様は皆に守られているのである。
そうとは知らない欲に塗れた者達がいた。
「どういうことだ!魔女裁判を行うと言う勅命に何故従わない!」
憤っているのはこの国の第2王子のヘルムート王子である。ヘルムートは自身が王太子になる為に、教会の上層部と手を結んだのだった。
王都に呼んで、インチキ裁判で冤罪を掛けて聖女を貶めようとした計画が、肝心の聖女が来なければご破算である。
イラつくヘルムートに、側にいたでっぷり肥った大司教が声を掛けた。
「フォフォフォ、そうイラつく事はありませんぞ。少し手間ではありますが、こちらからが辺境におもむき、魔女裁判を開廷いたしましょう」
「なんだと?しかし、魔女裁判は大丈夫なのか?」
根回しもしていない場所で不安を覚えるヘルムートだったが、大司教は自信満々に言った。
「古来より魔女を判別する為の証明方法は、我々教会が用意いたします。何も問題は御座いません。逆に、王子や私が『わざわざ』辺境に赴く事により、名声が上がると言うものです」
「ふむ、それもそうか。目障りな王太子である兄上が隣国へ留学して、国内に居ない今がチャンスなのだ。聖女シオンには、王都に出廷を拒否した罪で、辺境で裁くとしよう」
長年、聖女だと思っていた者が、実は魔女であり、不穏な気配を感じたヘルムートが問い詰め、見事正体を見破った事により、名声を得ようと言う魂胆である。
大司教も目障りな人気の聖女が消えてくれて一石二鳥なのだ。
二人は不気味に嗤うと辺境へと出立準備に取り掛かった。
大司教としても、辺境にいる聖女のせいで王都の大聖堂の地位が軽んじられている事に、目障りだと思っていたのだ。今後は、多少の治癒魔法が使える者を聖女に認定し、自分達の思い通りに動かそうと画策していた。
懸念材料があるとすれば───
大司教より上の権力を持つ、教皇とその手足となる枢機卿らだが。
『大司教になる時に言われた、聖女シオンに関わる事を禁ずると言う【契約】の存在だが、聖女から魔女になれば関係ないだろう』
金と後ろ盾の権力で大司教になった者は、自分が誰を裁こうとしているのか知らなかった。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
使者が来てから1週間ほど経ったある日───
「よ~し!今日も頑張ろう!」
元気よく外で叫ぶシオンに声を被せる者がやってきた。
「見つけたぞ!聖女シオン!!!」
「ふぉぇぇぇぇ!?」
突然、怒鳴られてびっくりするシオンが振り返ると、大勢の配下と共にやってきたヘルムート王子と大司教がいた。
「ええっと、どちら様でしょうか?」
首を傾げるシオンにヘルムートは言った。
「俺はこのヒーリング聖王国の第2王子ヘルムートだ!」
「初めてまして、私(わたくし)は王都の大聖堂を任されております大司教のザースです」
明らかに上から目線の王子だったが、そんな事は関係なく、丁寧に挨拶をするシオンだった。
「あ、それはそれは、遠い所を御苦労様です。私はシオン・セイントと申します。初めまして」
シオンは久しぶりの丁寧な言葉使いに、ふぃ~何とか言えたよ~と安堵していた。
「それで、わざわざこんな遠い所へどのようなご要件でしょうか?」
少しイラッとした様子でヘルムートが答えた。
「先日、貴様に魔女の疑いがあるため、王都へ召喚命令を送ったが、お前が、無視した為にわざわざ俺達が来てやったのだ!」
!?
「あ…………ああっ!あれ、まだ続いていたんですね~」
忘れていた事を思い出したシオンだった。
「貴様には拒否権はない!召喚命令を無視した罪で、しょっ引いてもいいが、魔女と証明しなければならないからな。魔女裁判を受けて貰うぞ!」
「ええっ!?そ、そそそそんんな!?」
前回と同様に動揺するシオンに勝ち誇った顔をするヘルムートは、さっそくシオンを連れて、この街の広間に向かった。
コソッ
「いったいいつになったら聖女様をお助けするのですか!」
「うるさい!上からの命令だ!俺だって今すぐクズ共を血の海に沈めたいのだ!しかし、ファン会員のプラチナメンバーの複数人から静観しろとお達しが来ているのだ!」
!?
「まさか、伝説の『ナンバーズ』からですか!?」
聖女のファン会員は推定人数100万人を超える。
そして過去にシオンの元へお仕掛けて迷惑を掛けるファンが多発したため、時の権力者達が国の垣根を超えて【聖女ファンクラブ】を設立した。
その立ち上げメンバー10人を一桁ナンバーに因んで、ナンバーズと呼ばれているのだ。
別名【プラチナメンバー】と呼ばれる事もある。
【by・natural softウィキペディアより抜粋】
聖女シオンが不当に扱われる事に血の涙を流しながら見守る村人達であった。
広間に着くと、元々あった村長が村人に話を聞かせる為の台の上に登るとヘルムートと大司教は魔女裁判の開廷を宣言した。
村人達の殺気に少し尻込みするヘルムートだったが、皆の前で言い放った。
「ヒーリング聖王国の民達よ!信じられぬのも無理はない!しかし、聖女シオンが魔女の可能性がある以上、その疑いを晴らす上でもここで証明しなければならない!」
もっともらしい言葉を言うと大司教に代わった。
「さて、まずは代表的な証明方法から行いましょう!私の持っているこの張りは、『聖なる神針』と言うものです。普通の人間であれば、少し血が出ますがすぐに傷が治り、魔女であれば傷が付かない道具です」
『クククッ、これは針が引っ込む作りになっているのです。針で刺しても傷が付かないと民の目の前で証明して見せましょう』
シオンは腕を出すと大司教はその腕に神針を刺した。
「アイタッ!」
!?
針を刺した所から血が吹き出した。
「バカな!?」
このインチキ道具を知る王子と大司教が1番驚いた。
「オイッ!どうなっている!?」
「わ、私にもわかりません!?」
戸惑う二人に村人が石を投げた。
「おいっ!どう見ても傷つき過ぎじゃないか!」
「早く聖女様に手当をしろっ!」
思ったより血が流れた為に、暴動寸前であった。
「ま、待って!これは何かの手違い──」
ひぃっと石を投げるなと叫びながらシオンが、あの~と遠慮がちに尋ねた。
「この傷、治して良いですか?」
「はっ?い、いや、治せるなら治してくれっ!」
そう許可がでるとシオンは回復魔法であっという間に治して痕も残らなかった。
「皆さん、私は大丈夫ですから石は投げないで下さい~」
本人からそう言われては仕方がないと、しぶしぶ石を投げるのを止める村人達。
でも、後で殺す!
と、意志を固めてはいるのだが。
「大司教!この針を確かめろっ!」
「は、はい!」
大司教は、連れてきた事情をしる配下の者に針の点検を指示した。それに気付いたシオンは──
「結構、痛いのでゆっくり刺して下さいね」
!?
本当に刺さるのかゆっくり針を自分の腕に刺してみると───
「あれ?血が出ませんね?」
!!!!!???
慌てて配下の子分は弁明した!
「ち、違うのです!これは針が引っ込───」
「お前かーーーーー!!!!!!!!」
ここで暴露されては破滅である。
大司教は慌てて配下の口を押えた。
モゴモゴッ!?
すぐに布で猿轡をさせられてから大司教は言った。
「これは申し訳ございません!どうやら私の配下に魔女の仲間である悪魔が紛れていたようです。この者は我々責任を持って処理しますので、お許し下さい!」
シオンはポカーンとしていたが、我に返るともう終わりで帰っていいのか尋ねた。
「そんな訳あるかっ!今のは教会側の手違いだ!まだ魔女裁判は終わっていないぞ!」
ヘルムートは怒って大司教を急がせた。
「お待たせ致しました。では次の証明に移りましょう」
少し汗を掻きながら、次の道具を取り出した。
「これは『破邪のハサミ』と呼ばれるものです。通常であれば普通に切れるだけですが、不浄な者を切ると切ったものが黒く変色するのです」
大司教は黄金で出来たハサミを取り出して言いました。
『クククッ、今度こそ大丈夫です。これには握る部分にボタンが付いており、押しながらハサミで切ると、刃の部分から墨が出てきて黒く染めるのです』
大司教は今度こそ上手くいくと思いニヤリッとした。
「ちょっと待った!聖女様の何を切るんだ?」
村人から意見がでた。
「それは聖女様の髪の毛を──」
怒怒怒怒怒!!!!!!
もの凄い殺気が壇上の上の大司教に浴びせられた。
ガタガタッ
ガタガタッ
「貴様!聖女様の国宝級の髪の毛を切るとは死にたいのか!」
「そうだ!神聖にして神域なる聖女様の髪の毛だぞ!抜け毛ですら金貨で取引される貴重な物だと知っているのか!!!」
「えっーーーー!!!!!!そうなの!?」
等の本人である聖女シオンもビックリである。
そして冷や汗を出しながら、少し切りづらいが、伸びていた爪で許してもらった。
『どうしてこうなるのですか?聖女シオンの信者はすでに女神様のように崇めるくらいヤバいですね』
間違えて指を傷付けると殺されそうな雰囲気の為、気を付けながらハサミで爪を切った。
ホッと一安心して、切った爪を掲げて言い放った。
「さぁ!見て下さい!破邪のハサミで切った聖女の爪です!黒くな───」
大司教は最後まで言えなかった。
綺麗な爪のままだったからだ。
「大司教!どういう事だ!」
「あ、いえ、そんなはずは………」
しどろもどろに答える大司教にヘルムートは我慢の限界だった。
「え~と、もう嫌疑は晴れたので良いかな?」
首を傾げながら尋ねるシオンに、ヘルムートはキレた。
「もういい!最後の証明だ!」
ヘルムートが強引に進めようとした事に大司教は止めた。
「ヘルムート王子!いけません!この殺気を感じないのですか!あの証明は行ってはいけません!我々がここから生きて帰れませんぞっ!」
まだヘルムートより空気の読める大司教は止めたが、王子の方が力が強く止めれなかった。
「黙れ!ここには我々の部下達が大勢来ているではないか。さっさと『最後の証明』を行うべきだった」
大司教を振り払うと、ヘルムートは聖女シオンに指差した。
「これが最後の魔女裁判の身を潔白する証明だ。場所を移動するぞ!」
ヘルムート王子に言われて、テクテクと後に続いた。
そして───
「あの~~~?これはどういう状況でしょうか?」
聖女シオンは、鉄の鎖にグルグル巻にされて、みの虫のような状態だった。
「これは神具ホーリロックだ。これに巻かれて川に沈める。魔女なら死ぬが、人間なら生きているそうだ。やれっ!」
「キャァァァァァァアアアアアアアアア!!!!!!!」
村の横に流れる大きな川の橋の上から落とされる聖女シオンだった。
ドッポン!
多くの村人が止めに入ろうとしたが、いつの間にか、この村にいない者達が前に出ており、邪魔をされて助けに入れなかった。
「オイッ!どけ!?聖女様が死んでしまう!!!」
「落ち着け。聖女様は死なない。もう少し見ていろ」
「巫山戯るな!どうしてそんな事がわかる!?」
「これを見ろ」
助けを邪魔している村人は、何かのカードを見せた。
すぐにそれが何のカードかわかった。
聖女ファンクラブの会員証である。
「それが何だっ───!?」
その者は気付いてしまった。
その会員ナンバーが一桁な事に。
「な、ナンバーズ!?」
「そうだ。誰よりも聖女様の事を知っている者の1人だ。お前も、お前達も、信じるんだ!聖女様のお力を!」
その者は周囲にいる村人達に呼び掛けた。
ざわざわ
ざわざわ
村人の中には、聖女様の無事を祈る者が1人、また1人と増えていった。
『ふん、人間は息が出来ないと5分と生きていられない。つまり死んでしまえば魔女だったと言える訳だ』
それから約1時間が経ち、ようやく引き上げられる事になった。
「ふん、ようやく死んだか?」
橋の上に転がされ、鎖を外されると水死体になった聖女の土左衛門が───
ムクリッ
「うぎゃーーーーーー!!!!!!死体が動いたーーーーーーー!!!!!!」
流石のヘルムートも死体が起き上がった事に悲鳴を上げた。
「えっ!どこですか!?恐いです!」
怯える聖女シオンにツッコミが入った。
「お前だ!なぜ動いている!?死んだのではないのか?」
「いいえ、生きてますよ?ほらっ、これが水の滴る良い女ってやつですわ♪」
違う!
これは絶対に人間じゃない!?
ヘルムートはシオンの言葉を聞き流し、初めて恐怖した。
「さて、これで私が人間だと証明されましたね。着替えて来ますわ」
立ち去ろうとするシオンにヘルムートは剣を抜いて斬り掛かった!
「巫山戯るなっ!この魔女めがっ!!!」
振り落とした剣は見えない壁により弾かれた。
!?
「な、なんだ!?」
聖女シオンの方を見ると聖女の身体が金色に輝いていた。
『愚かな人の子よ』
聖女が喋っているのに、違う声で脳内に響くように聞こえた。
17歳の少女だったシオンの姿が、20歳を越えた大人の女性に変わっていた。
更に、ボン・キュッ・ボンになっていた。
水に濡れて肌にピチッと張り付いているため、よりセクシーに見えた。
『我は女神が一柱。この地を見守りし者。人間ではないが、魔女でもない』
ガタガタッ
ヘルムートは震えた。
これは手を出してはいけない『モノ』だと、本能が警音を鳴らしていた。
大司教は口から泡を吹き出しながら、うずくまって、生まれてから初めて本気で神に祈った。
女神と名乗った者は、後ろを向くと───
村人全員が平伏していた。
「女神様!お久しぶりです。約20年振りでしょうか?」
村人の姿をしているお爺さんとお婆さんが前に出て頭を下げた。
『おおっ、ジークとジャンヌだったか。まだ生きていたのだな。息災で何よりだ』
「ははーーー!!!その節は女神様に国を救って頂き心から感謝しております。貴女様にもう1度会いたい為に、この者らを利用してしまった事、どんな罰でも受ける所存です。ただどうしても貴女様に御礼が言いたく、女神様に救って頂いた国が平和に発展した姿を見て欲しかったのです!」
この老人ジークは、隣の国の元国王であった。今は、退位して離宮で女神様に祈りながら、聖女日報を読むのが楽しみにしている。
このジャンヌと言うお婆さんは、この国の元王妃であり同じく引退して同じく女神様に祈りながら暮らしている。
聖女シオンとは女神の仮の姿である。
女神は本来の姿では長時間、顕現することが出来ない。
よって、触媒として聖女という身体を創り、人間として人々の為にできる範囲で助けているのである。
聖女シオンの『人格』にはその記憶がなく、自身が不老不死である事は、気付いていない。いや、気付かないように魔法を掛けてある。
聖女シオンは1人の人間として過ごしており座本当にマズイ時のみ女神が主導権を奪い、助けるのである。
ちなみに、シオンの屋敷にいるメイドや執事も女神の眷属であり人ではない。年を取らないよう創られており、並の人間より戦闘力があるのだ。
本来は女神がここまで外界に関与出来ないのだが、昔、疫病が流行り大陸中の人間の半数近くが亡くなるという出来事があった。それを見かねて、天界から罰を請けるのを了承の上で人々を助けてくれたこの女神だったのだ。
今の若い連中は子守唄程度しか聞いていないが、年寄り達はまだ覚えているおり、毎日、心から感謝の祈りを捧げている。
それが女神に力を与えて、外界にまだ滞在できているのである。
無論、日々の聖女としての活動も女神の力になっている。
と、いう訳でナンバーズとは大陸中の国のトップや力のある部族、Sランク冒険者が女神様の活動を影ながら支援する為に設立したのが、『聖女ファンクラブ』の裏の真実である。
まぁ、ジジィどもはボン・キュッ・ボンの女神様を拝みたいという欲望もあったのだが、それは秘密にしておこう。
『別に構わぬ。我も久し振りに大地の風や水を浴びれて楽しいのだ』
「め、女神様…………」
感無量で涙を流す。
『この者達の裁きは任せる。聖女シオンには余り伝えないようにして欲しい』
「ははーーー!!!!受けたまりました!」
女神の人格はそう言うとスゥゥーーーと消えてゆき、元のシオンの姿へと戻った。
いや、戻っていなかった!?
金色の光は消えたが、大人の姿のままであった。
「うぅん~、あれ?私、寝てた?」
呆然として自分を見つめている村人達に首を傾げた。
「どうしたの?」
「せ、聖女シオン様。その御姿は…………」
????
シオンは川で自分の姿を確認すると───
「ほぇぇぇぇぇぇえええええええ!!!!!ボン・キュッ・ボンになってるーーーーーーー!!!!!!!」
聖女の悲鳴が響いた。
ボンッ!!!
と、思っていたら白煙と共に元の姿に戻った。
「あっ、戻った」
「くっ、戻ってしまった(泣)」
一部の野郎共は血の涙を流して悔しがった。
まぁ、どうでもいい事である。
「あ、でも、なんとなくだけどあの姿に変身できそうな気がする」
シオンの呟きにガバッと顔を起こして希望を見つけた村人達がいた。
「シオン様!時々でいいので大人の姿に変身して下さい!!!」
土下座をして頭を下げる野郎共にプライドなど無かった。
「うん、良いよ~私も楽しそうだしね」
ワァー!!!!
そこからはお祝いムードであった。
ヘルムートと大司教は村人達に捕らえられ王都へ連行された。
その日はシオンをお風呂へ入れた後、村人全員でお祭りが開催された。
普段はなかなか合うことの出来ない国の重鎮達も、料理を楽しみながら情報交換をしたりと、外交も兼ねて話し合っていた。
そして夜が明けて────
「よ~し!今日も頑張ろう!!!」
二日酔いの屍たち転がっている中、元気に二日酔いの治療を行う聖女シオンの姿があるのでした。
疲れたー!
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
聖女シオンはヒーリング聖王国の当代の聖女であり、セイント伯爵家の当主でもあった。
御歳17歳の女の子である。
青い瞳に、腰まである長い金髪を靡かせる美少女であった。胸は…………まぁ、膨らんではいる程度である。(放っといて!)
シオンは聖女として特例として学校に通わずに各地を飛び回りながらシオンは聖女として日々、忙しく過ごしていた。
「シオン様!いつもありがとうございます!」
「聖女様、ぜひ今日取れた新鮮な野菜をもらって下さい」
「シオンお姉ちゃん!怪我を治してくれてありがとう!」
どこに行っても大人気であり、王族などより知名度と名声が高かった。
『一日一善』
これがセイント伯爵家の家訓であった。
そして、聖女を政治的に利用しないと言う盟約が王家とあり、政治に関わらないように過ごしていた。
王都にいると貴族連中が煩いので、地方の辺境に住居を構え、日々、辺境を廻りながら聖女としての務めを果たしていた。
「よ~し!今日も頑張ろう!!!」
朝起きると元気よく叫ぶのも日課である。
「聖女シオン様!王都の大聖堂にて出廷要請が出ております!すぐにご同行お願い致します!」
ホワイッ!?
どういうこと???
爽やかな朝は出鼻から挫かれたのでした。
「え、え~と?理由はなんですか?」
伝令の使者が答えた。
「なんでも聖女シオン様には【魔女】の疑いがあるとの事で、事実確認のため出廷して欲しいとの事です!」
!?
「ななななっ!?そ、そそそそんんなわわわっけけけけないでしししししょう!!!!」
メチャクチャ動揺するシオンに疑いの目を向ける使者であったが、すぐにそれどころでは無くなった。
ヒューーーーン!!!!!
???
ザクッ!
「ひぃっ!?」
使者の目の前に草刈鎌が飛んできて、目の前に刺さった。
「テメェ!なんて言いやがった!聖女シオン様が魔女だと!もういっぺん言ってみろっ!」
気付くと、外には大勢の村人が集まっていた。
どうした?どうした?
「こいつがシオン様が魔女だから裁判するので出廷しろって言っているんだ!」
はぁ!!!!?
怒怒怒!!!!!!
村人の怒りは凄まじかった。
「オイッ!聖女シオン様になんて事を言うのだ!今まで、辺境の結界を張り、怪我人や病気の治療をしていたのは誰だと思っているんだ!」
「そうだそうだ!巫山戯るなよっ!」
「誰がそんなデマを流した!ぶっ殺してやるぞ!!!」
「ってか、魔女でも良いじゃん。シオン様、マジ天使だけどw」
「「「違いない!」」」
ワッハハハハハ!!!!!
何ともノリの良い辺境の人々であった。
王都から来た使者は逃げるように立ち去っていった。
「何だったんだろー?」
「シオン様は気にせずいつものお仕事にお出掛け下さい」
人情ある村人達に見送られながら聖女シオンはお仕事に出掛けるのでした。
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コソッ
「王都の方がきな臭いな。すぐに調べろ」
「はっ!畏まりました」
「それと念のために、【週間・聖女日報】に緊急事案として、会員達に伝達しろ」
「了解しました!」
説明しよう!
『聖女日報』と言うのは、1週間に1度、聖女様の側で暮らす【村人】?の有志によって日々の聖女シオンの活動報告を国内のみならず、周辺国にいる聖女様の『ファン会員』に届けられるファン日報の事である。
( ・`д・´)キリッ
こうして日々、聖女様は皆に守られているのである。
そうとは知らない欲に塗れた者達がいた。
「どういうことだ!魔女裁判を行うと言う勅命に何故従わない!」
憤っているのはこの国の第2王子のヘルムート王子である。ヘルムートは自身が王太子になる為に、教会の上層部と手を結んだのだった。
王都に呼んで、インチキ裁判で冤罪を掛けて聖女を貶めようとした計画が、肝心の聖女が来なければご破算である。
イラつくヘルムートに、側にいたでっぷり肥った大司教が声を掛けた。
「フォフォフォ、そうイラつく事はありませんぞ。少し手間ではありますが、こちらからが辺境におもむき、魔女裁判を開廷いたしましょう」
「なんだと?しかし、魔女裁判は大丈夫なのか?」
根回しもしていない場所で不安を覚えるヘルムートだったが、大司教は自信満々に言った。
「古来より魔女を判別する為の証明方法は、我々教会が用意いたします。何も問題は御座いません。逆に、王子や私が『わざわざ』辺境に赴く事により、名声が上がると言うものです」
「ふむ、それもそうか。目障りな王太子である兄上が隣国へ留学して、国内に居ない今がチャンスなのだ。聖女シオンには、王都に出廷を拒否した罪で、辺境で裁くとしよう」
長年、聖女だと思っていた者が、実は魔女であり、不穏な気配を感じたヘルムートが問い詰め、見事正体を見破った事により、名声を得ようと言う魂胆である。
大司教も目障りな人気の聖女が消えてくれて一石二鳥なのだ。
二人は不気味に嗤うと辺境へと出立準備に取り掛かった。
大司教としても、辺境にいる聖女のせいで王都の大聖堂の地位が軽んじられている事に、目障りだと思っていたのだ。今後は、多少の治癒魔法が使える者を聖女に認定し、自分達の思い通りに動かそうと画策していた。
懸念材料があるとすれば───
大司教より上の権力を持つ、教皇とその手足となる枢機卿らだが。
『大司教になる時に言われた、聖女シオンに関わる事を禁ずると言う【契約】の存在だが、聖女から魔女になれば関係ないだろう』
金と後ろ盾の権力で大司教になった者は、自分が誰を裁こうとしているのか知らなかった。
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使者が来てから1週間ほど経ったある日───
「よ~し!今日も頑張ろう!」
元気よく外で叫ぶシオンに声を被せる者がやってきた。
「見つけたぞ!聖女シオン!!!」
「ふぉぇぇぇぇ!?」
突然、怒鳴られてびっくりするシオンが振り返ると、大勢の配下と共にやってきたヘルムート王子と大司教がいた。
「ええっと、どちら様でしょうか?」
首を傾げるシオンにヘルムートは言った。
「俺はこのヒーリング聖王国の第2王子ヘルムートだ!」
「初めてまして、私(わたくし)は王都の大聖堂を任されております大司教のザースです」
明らかに上から目線の王子だったが、そんな事は関係なく、丁寧に挨拶をするシオンだった。
「あ、それはそれは、遠い所を御苦労様です。私はシオン・セイントと申します。初めまして」
シオンは久しぶりの丁寧な言葉使いに、ふぃ~何とか言えたよ~と安堵していた。
「それで、わざわざこんな遠い所へどのようなご要件でしょうか?」
少しイラッとした様子でヘルムートが答えた。
「先日、貴様に魔女の疑いがあるため、王都へ召喚命令を送ったが、お前が、無視した為にわざわざ俺達が来てやったのだ!」
!?
「あ…………ああっ!あれ、まだ続いていたんですね~」
忘れていた事を思い出したシオンだった。
「貴様には拒否権はない!召喚命令を無視した罪で、しょっ引いてもいいが、魔女と証明しなければならないからな。魔女裁判を受けて貰うぞ!」
「ええっ!?そ、そそそそんんな!?」
前回と同様に動揺するシオンに勝ち誇った顔をするヘルムートは、さっそくシオンを連れて、この街の広間に向かった。
コソッ
「いったいいつになったら聖女様をお助けするのですか!」
「うるさい!上からの命令だ!俺だって今すぐクズ共を血の海に沈めたいのだ!しかし、ファン会員のプラチナメンバーの複数人から静観しろとお達しが来ているのだ!」
!?
「まさか、伝説の『ナンバーズ』からですか!?」
聖女のファン会員は推定人数100万人を超える。
そして過去にシオンの元へお仕掛けて迷惑を掛けるファンが多発したため、時の権力者達が国の垣根を超えて【聖女ファンクラブ】を設立した。
その立ち上げメンバー10人を一桁ナンバーに因んで、ナンバーズと呼ばれているのだ。
別名【プラチナメンバー】と呼ばれる事もある。
【by・natural softウィキペディアより抜粋】
聖女シオンが不当に扱われる事に血の涙を流しながら見守る村人達であった。
広間に着くと、元々あった村長が村人に話を聞かせる為の台の上に登るとヘルムートと大司教は魔女裁判の開廷を宣言した。
村人達の殺気に少し尻込みするヘルムートだったが、皆の前で言い放った。
「ヒーリング聖王国の民達よ!信じられぬのも無理はない!しかし、聖女シオンが魔女の可能性がある以上、その疑いを晴らす上でもここで証明しなければならない!」
もっともらしい言葉を言うと大司教に代わった。
「さて、まずは代表的な証明方法から行いましょう!私の持っているこの張りは、『聖なる神針』と言うものです。普通の人間であれば、少し血が出ますがすぐに傷が治り、魔女であれば傷が付かない道具です」
『クククッ、これは針が引っ込む作りになっているのです。針で刺しても傷が付かないと民の目の前で証明して見せましょう』
シオンは腕を出すと大司教はその腕に神針を刺した。
「アイタッ!」
!?
針を刺した所から血が吹き出した。
「バカな!?」
このインチキ道具を知る王子と大司教が1番驚いた。
「オイッ!どうなっている!?」
「わ、私にもわかりません!?」
戸惑う二人に村人が石を投げた。
「おいっ!どう見ても傷つき過ぎじゃないか!」
「早く聖女様に手当をしろっ!」
思ったより血が流れた為に、暴動寸前であった。
「ま、待って!これは何かの手違い──」
ひぃっと石を投げるなと叫びながらシオンが、あの~と遠慮がちに尋ねた。
「この傷、治して良いですか?」
「はっ?い、いや、治せるなら治してくれっ!」
そう許可がでるとシオンは回復魔法であっという間に治して痕も残らなかった。
「皆さん、私は大丈夫ですから石は投げないで下さい~」
本人からそう言われては仕方がないと、しぶしぶ石を投げるのを止める村人達。
でも、後で殺す!
と、意志を固めてはいるのだが。
「大司教!この針を確かめろっ!」
「は、はい!」
大司教は、連れてきた事情をしる配下の者に針の点検を指示した。それに気付いたシオンは──
「結構、痛いのでゆっくり刺して下さいね」
!?
本当に刺さるのかゆっくり針を自分の腕に刺してみると───
「あれ?血が出ませんね?」
!!!!!???
慌てて配下の子分は弁明した!
「ち、違うのです!これは針が引っ込───」
「お前かーーーーー!!!!!!!!」
ここで暴露されては破滅である。
大司教は慌てて配下の口を押えた。
モゴモゴッ!?
すぐに布で猿轡をさせられてから大司教は言った。
「これは申し訳ございません!どうやら私の配下に魔女の仲間である悪魔が紛れていたようです。この者は我々責任を持って処理しますので、お許し下さい!」
シオンはポカーンとしていたが、我に返るともう終わりで帰っていいのか尋ねた。
「そんな訳あるかっ!今のは教会側の手違いだ!まだ魔女裁判は終わっていないぞ!」
ヘルムートは怒って大司教を急がせた。
「お待たせ致しました。では次の証明に移りましょう」
少し汗を掻きながら、次の道具を取り出した。
「これは『破邪のハサミ』と呼ばれるものです。通常であれば普通に切れるだけですが、不浄な者を切ると切ったものが黒く変色するのです」
大司教は黄金で出来たハサミを取り出して言いました。
『クククッ、今度こそ大丈夫です。これには握る部分にボタンが付いており、押しながらハサミで切ると、刃の部分から墨が出てきて黒く染めるのです』
大司教は今度こそ上手くいくと思いニヤリッとした。
「ちょっと待った!聖女様の何を切るんだ?」
村人から意見がでた。
「それは聖女様の髪の毛を──」
怒怒怒怒怒!!!!!!
もの凄い殺気が壇上の上の大司教に浴びせられた。
ガタガタッ
ガタガタッ
「貴様!聖女様の国宝級の髪の毛を切るとは死にたいのか!」
「そうだ!神聖にして神域なる聖女様の髪の毛だぞ!抜け毛ですら金貨で取引される貴重な物だと知っているのか!!!」
「えっーーーー!!!!!!そうなの!?」
等の本人である聖女シオンもビックリである。
そして冷や汗を出しながら、少し切りづらいが、伸びていた爪で許してもらった。
『どうしてこうなるのですか?聖女シオンの信者はすでに女神様のように崇めるくらいヤバいですね』
間違えて指を傷付けると殺されそうな雰囲気の為、気を付けながらハサミで爪を切った。
ホッと一安心して、切った爪を掲げて言い放った。
「さぁ!見て下さい!破邪のハサミで切った聖女の爪です!黒くな───」
大司教は最後まで言えなかった。
綺麗な爪のままだったからだ。
「大司教!どういう事だ!」
「あ、いえ、そんなはずは………」
しどろもどろに答える大司教にヘルムートは我慢の限界だった。
「え~と、もう嫌疑は晴れたので良いかな?」
首を傾げながら尋ねるシオンに、ヘルムートはキレた。
「もういい!最後の証明だ!」
ヘルムートが強引に進めようとした事に大司教は止めた。
「ヘルムート王子!いけません!この殺気を感じないのですか!あの証明は行ってはいけません!我々がここから生きて帰れませんぞっ!」
まだヘルムートより空気の読める大司教は止めたが、王子の方が力が強く止めれなかった。
「黙れ!ここには我々の部下達が大勢来ているではないか。さっさと『最後の証明』を行うべきだった」
大司教を振り払うと、ヘルムートは聖女シオンに指差した。
「これが最後の魔女裁判の身を潔白する証明だ。場所を移動するぞ!」
ヘルムート王子に言われて、テクテクと後に続いた。
そして───
「あの~~~?これはどういう状況でしょうか?」
聖女シオンは、鉄の鎖にグルグル巻にされて、みの虫のような状態だった。
「これは神具ホーリロックだ。これに巻かれて川に沈める。魔女なら死ぬが、人間なら生きているそうだ。やれっ!」
「キャァァァァァァアアアアアアアアア!!!!!!!」
村の横に流れる大きな川の橋の上から落とされる聖女シオンだった。
ドッポン!
多くの村人が止めに入ろうとしたが、いつの間にか、この村にいない者達が前に出ており、邪魔をされて助けに入れなかった。
「オイッ!どけ!?聖女様が死んでしまう!!!」
「落ち着け。聖女様は死なない。もう少し見ていろ」
「巫山戯るな!どうしてそんな事がわかる!?」
「これを見ろ」
助けを邪魔している村人は、何かのカードを見せた。
すぐにそれが何のカードかわかった。
聖女ファンクラブの会員証である。
「それが何だっ───!?」
その者は気付いてしまった。
その会員ナンバーが一桁な事に。
「な、ナンバーズ!?」
「そうだ。誰よりも聖女様の事を知っている者の1人だ。お前も、お前達も、信じるんだ!聖女様のお力を!」
その者は周囲にいる村人達に呼び掛けた。
ざわざわ
ざわざわ
村人の中には、聖女様の無事を祈る者が1人、また1人と増えていった。
『ふん、人間は息が出来ないと5分と生きていられない。つまり死んでしまえば魔女だったと言える訳だ』
それから約1時間が経ち、ようやく引き上げられる事になった。
「ふん、ようやく死んだか?」
橋の上に転がされ、鎖を外されると水死体になった聖女の土左衛門が───
ムクリッ
「うぎゃーーーーーー!!!!!!死体が動いたーーーーーーー!!!!!!」
流石のヘルムートも死体が起き上がった事に悲鳴を上げた。
「えっ!どこですか!?恐いです!」
怯える聖女シオンにツッコミが入った。
「お前だ!なぜ動いている!?死んだのではないのか?」
「いいえ、生きてますよ?ほらっ、これが水の滴る良い女ってやつですわ♪」
違う!
これは絶対に人間じゃない!?
ヘルムートはシオンの言葉を聞き流し、初めて恐怖した。
「さて、これで私が人間だと証明されましたね。着替えて来ますわ」
立ち去ろうとするシオンにヘルムートは剣を抜いて斬り掛かった!
「巫山戯るなっ!この魔女めがっ!!!」
振り落とした剣は見えない壁により弾かれた。
!?
「な、なんだ!?」
聖女シオンの方を見ると聖女の身体が金色に輝いていた。
『愚かな人の子よ』
聖女が喋っているのに、違う声で脳内に響くように聞こえた。
17歳の少女だったシオンの姿が、20歳を越えた大人の女性に変わっていた。
更に、ボン・キュッ・ボンになっていた。
水に濡れて肌にピチッと張り付いているため、よりセクシーに見えた。
『我は女神が一柱。この地を見守りし者。人間ではないが、魔女でもない』
ガタガタッ
ヘルムートは震えた。
これは手を出してはいけない『モノ』だと、本能が警音を鳴らしていた。
大司教は口から泡を吹き出しながら、うずくまって、生まれてから初めて本気で神に祈った。
女神と名乗った者は、後ろを向くと───
村人全員が平伏していた。
「女神様!お久しぶりです。約20年振りでしょうか?」
村人の姿をしているお爺さんとお婆さんが前に出て頭を下げた。
『おおっ、ジークとジャンヌだったか。まだ生きていたのだな。息災で何よりだ』
「ははーーー!!!その節は女神様に国を救って頂き心から感謝しております。貴女様にもう1度会いたい為に、この者らを利用してしまった事、どんな罰でも受ける所存です。ただどうしても貴女様に御礼が言いたく、女神様に救って頂いた国が平和に発展した姿を見て欲しかったのです!」
この老人ジークは、隣の国の元国王であった。今は、退位して離宮で女神様に祈りながら、聖女日報を読むのが楽しみにしている。
このジャンヌと言うお婆さんは、この国の元王妃であり同じく引退して同じく女神様に祈りながら暮らしている。
聖女シオンとは女神の仮の姿である。
女神は本来の姿では長時間、顕現することが出来ない。
よって、触媒として聖女という身体を創り、人間として人々の為にできる範囲で助けているのである。
聖女シオンの『人格』にはその記憶がなく、自身が不老不死である事は、気付いていない。いや、気付かないように魔法を掛けてある。
聖女シオンは1人の人間として過ごしており座本当にマズイ時のみ女神が主導権を奪い、助けるのである。
ちなみに、シオンの屋敷にいるメイドや執事も女神の眷属であり人ではない。年を取らないよう創られており、並の人間より戦闘力があるのだ。
本来は女神がここまで外界に関与出来ないのだが、昔、疫病が流行り大陸中の人間の半数近くが亡くなるという出来事があった。それを見かねて、天界から罰を請けるのを了承の上で人々を助けてくれたこの女神だったのだ。
今の若い連中は子守唄程度しか聞いていないが、年寄り達はまだ覚えているおり、毎日、心から感謝の祈りを捧げている。
それが女神に力を与えて、外界にまだ滞在できているのである。
無論、日々の聖女としての活動も女神の力になっている。
と、いう訳でナンバーズとは大陸中の国のトップや力のある部族、Sランク冒険者が女神様の活動を影ながら支援する為に設立したのが、『聖女ファンクラブ』の裏の真実である。
まぁ、ジジィどもはボン・キュッ・ボンの女神様を拝みたいという欲望もあったのだが、それは秘密にしておこう。
『別に構わぬ。我も久し振りに大地の風や水を浴びれて楽しいのだ』
「め、女神様…………」
感無量で涙を流す。
『この者達の裁きは任せる。聖女シオンには余り伝えないようにして欲しい』
「ははーーー!!!!受けたまりました!」
女神の人格はそう言うとスゥゥーーーと消えてゆき、元のシオンの姿へと戻った。
いや、戻っていなかった!?
金色の光は消えたが、大人の姿のままであった。
「うぅん~、あれ?私、寝てた?」
呆然として自分を見つめている村人達に首を傾げた。
「どうしたの?」
「せ、聖女シオン様。その御姿は…………」
????
シオンは川で自分の姿を確認すると───
「ほぇぇぇぇぇぇえええええええ!!!!!ボン・キュッ・ボンになってるーーーーーーー!!!!!!!」
聖女の悲鳴が響いた。
ボンッ!!!
と、思っていたら白煙と共に元の姿に戻った。
「あっ、戻った」
「くっ、戻ってしまった(泣)」
一部の野郎共は血の涙を流して悔しがった。
まぁ、どうでもいい事である。
「あ、でも、なんとなくだけどあの姿に変身できそうな気がする」
シオンの呟きにガバッと顔を起こして希望を見つけた村人達がいた。
「シオン様!時々でいいので大人の姿に変身して下さい!!!」
土下座をして頭を下げる野郎共にプライドなど無かった。
「うん、良いよ~私も楽しそうだしね」
ワァー!!!!
そこからはお祝いムードであった。
ヘルムートと大司教は村人達に捕らえられ王都へ連行された。
その日はシオンをお風呂へ入れた後、村人全員でお祭りが開催された。
普段はなかなか合うことの出来ない国の重鎮達も、料理を楽しみながら情報交換をしたりと、外交も兼ねて話し合っていた。
そして夜が明けて────
「よ~し!今日も頑張ろう!!!」
二日酔いの屍たち転がっている中、元気に二日酔いの治療を行う聖女シオンの姿があるのでした。
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