上 下
59 / 104

絶対に助ける!

しおりを挟む
ウンディーネからの念話が届いたのはクリスから連絡が途絶えてすぐの事であった。

『はぁはぁ…………シオン!聞こえるのかのぅ!?』

切羽詰まったウンディーネの声にノームとシオンは顔を見合わせ応答した。

『ディーネ!いったい何が起こっているの!?』

『シオン!時間がないのじゃ!簡潔に説明する!船で亜人連合国へ向かって行った妾達は海龍に襲われた。海龍は執拗に妾達の船を襲ってきたのじゃが、妾が水の障壁で船を守ったが次第に押されてしまった。そこで、クリスが小舟で囮となり、本船を逃がす事になったのじゃ。無論、妾も一緒じゃ!しかし、海龍に飲み込まれた時、小舟全体に水の障壁で守ったのじゃが、海龍の体内は高密度の海龍の魔力で充満し、妾の魔力が阻害され転移が出来ない状態なのじゃ!』

ウンディーネの怒涛の言葉に、シオンの頭は真っ白になった。

『く、クリスは…………死んだの?』

シオンは1番言いたくない言葉を吐いた。

『安心するがよい。まだ死んでおらぬ!妾が水の障壁で船を包んでおる間は海龍の胃酸などで死にはせぬ!じゃが、酸素に限りがあるのじゃ。少しでも酸素を長持ちさせる為にクリスには魔法で眠って貰ったのじゃ』

ウンディーネの言葉にシオンはホッと一安心した。

『…………シオン、いや主殿!誠にすまぬ!クリスの護衛を任せて貰いながら守れなんだ。水の上と妾は慢心しておったようじゃ。このお詫びは如何様でもする!じゃから、恥を忍んでお願いする!助けにきて欲しいのじゃ』

ウンディーネの悔しそうな想いが伝わってくるような悲痛な声色で懇願してきた。

『すぐに助けにいくから!だからそれまでクリスをお願いね!』

『無論じゃ!この四大精霊の誇りに掛けて守り通すのじゃ!』

そして、ウンディーネの通信が途絶えたのだった。

「ノーム!緊急招集を掛けます!魔物に詳しいグランさんにも連絡して!集合場所はリュミナス王国の王城でっ!」

それからのシオンの行動は早かった。すぐに王城へ転移し、クリスの父親でもある国王に説明した。

「なんだと!?それは本当なのか?」

さすがに国王様も驚きを隠せない様子で、シオンに聞き直してしまった。

「はい。クリスとウンディーネの切羽詰まった念話で嘘はないかと思います………」

国王もシオンの悲痛な表情にハッとなり、言葉を選びながら話した。

「シオン君も息子を心配してくれてありがとう。ウンディーネ殿が守ってくれているんだ。きっと大丈夫だから。元気を出して─」

国王の言葉を遮り、ソフィア王妃がシオンを抱き締めた。

「シオンちゃん。本当にいつもありがとうね。でも、そんな悲しそうな顔をしていたらクリスに怒られるわよ?クリスだけじゃない!私達も元気なシオンちゃんにいつも助けられているんだからね?気持ちを切り替えてクリスを助けましょう!」

「はい!」

シオンは眼をゴシゴシと拭いながら気持ちを切り替えるようと心を落ち着かせるのだった。
その様子を見ていたノームは内心で悪態を付いた。

『ウンディーネのバカ!何をやっているのよ!こんなに純粋で心優しい契約者を、シオンを悲しませるなんて、今度あったら文句を言ってやるわっ!』









しばらくして、主要メンバーが集まってきた。

「グラン殿、いつも申し訳ない!謝礼は弾むゆえ、息子クリスを助けるために力を貸して欲しい!」

政治的には対立する事のあるグランに頭を下げる国王に、グランは言うのだった。

「よい!すでに息子に帝位を譲った故に暇をもて余しておった所よ。それにワシだけではないしの?」

グランの視線の先にはギルバード公爵と一緒に冒険者ギルドのギルド長まで一緒に来ていた。

「久しぶりじゃのう?海龍が現れたと聞いて、役に立てないか付いてきたぞ」

「ギルド長のお爺ちゃん!?」

意外な人物に驚くシオンだった。そして、クリス王子を救出する為の作戦会議が始まった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結!!】妹と婚約者に虐げられ全てを奪われた光の大聖女は、断罪された後なぜか【シン・魔女】となり、もふもふ殿下の呪いまで解呪し溺愛された件

竹本蘭乃
恋愛
【簡単なあらすじ】 大聖女と国中から愛された私。でも気がつけば、世界最悪の称号【常闇の魔女】と認定された。 父や妹。そして婚約者に暴行され、終いには国民から石を投げつけられて、火あぶりにされてしまう。 悲しくて胸が張り裂けそう……でもその時、太陽に一筋の黒い陰があらわれて、私を連れ去る。 旅の途中、新月の夜に出会う不思議な人物――【新月華の皇太子】 彼との出会いが私の心を大きく動かし、もう、すべてが、止まらないと魂が理解した。 【普通のあらすじ】 神の寵愛をうけた娘が国の安定を司り、発展と平和の象徴――聖女。 その聖女の中でも、百年に一度と言われる大聖女が生まれ落ちた。 名をエリーシア・フォン・ローデックといい、この国の第一王女でもある。 ある時、エリーシアは王家の血筋にちかしい四大公爵家の一つ、ワール公爵家の嫡男であるデレクと婚約をし、仲むつまじく過ごす。 それが一年ほどたった、とある正午に、全ての運命が大きく動き出す。 大聖女たるエリーシアは前日に急激なめまいにより倒れ、気がつけば朝だった。 頭が冴えないまま起床すると、メイドを押しのけ近衛兵が押し寄せやって来る。 何事かとたずねるエリーシアだったが、一切答えずに国王たる父の元へと突き出されてしまう。 困惑するエリーシア。しかしその原因が廊下を歩く時に気がついていた。 そう……聖女の象徴たる〝右手の甲にある聖印〟が無くなっていたのだから。 案の定、その事で国王に問い詰められるが、原因が全くわからない。 ますます混乱するエリーシアの元へと双子の妹、コレットがやって来る。 コレットはエリーシアを抱きしめると、自分がハメたのだとソッと耳打ち。 その意味がわからずさらに困惑した瞬間、婚約者に殴られ床へと血を流し転がってしまう。 そして父たる国王より言い渡される、この国最悪の存在――〝常闇の魔女〟認定。 国中から怨嗟の声を一身に受け、エリーシアは翌日火あぶりの刑に処され、命が消え失せる刹那それは現れる。 悪魔の象徴――厄災の魔女。 それが突如現れ、エリーシアを連れ去ってしまう。 やがて自由になったエリーシアは、知り合った白いもふもふと旅をし、新月の夜に【新月華の皇太子】と出会い恋に落ちる、が……。 二人の行き先に立ち阻む茨の道。それらを乗り越え、二人はどこへ向かうのか。 そして妹のコレットとエリーシアの関係は? 最後に訪れる、絶望と希望は誰の手に? それは物語を見ている、あなただけが知っています。

妻と夫と元妻と

キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では? わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。 数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。 しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。 そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。 まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。 なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。 そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて……… 相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不治の誤字脱字病患者の作品です。 作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。 性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。 小説家になろうさんでも投稿します。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

悪徳領主の娘に転生しました。『魔法学園恋愛編!』たぶん!

naturalsoft
恋愛
別タイトル『悪徳領主の娘に転生しました。貧乏領地を豊かにします!』 の、続編になります。 前回の幼少期から成長して学園に入学する所から始まります! 果たして、シオンの恋心はどうなるのか? (ファンタジー強めです)

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

【短編完結】記憶なしで婚約破棄、常識的にざまあです。だってそれまずいって

鏑木 うりこ
恋愛
お慕いしておりましたのにーーー  残った記憶は強烈な悲しみだけだったけれど、私が目を開けると婚約破棄の真っ最中?! 待って待って何にも分からない!目の前の人の顔も名前も、私の腕をつかみ上げている人のことも!  うわーーうわーーどうしたらいいんだ!  メンタルつよつよ女子がふわ~り、さっくりかる~い感じの婚約破棄でざまぁしてしまった。でもメンタルつよつよなので、ザクザク切り捨てて行きます!

石女を理由に離縁されましたが、実家に出戻って幸せになりました

お好み焼き
恋愛
ゼネラル侯爵家に嫁いで三年、私は子が出来ないことを理由に冷遇されていて、とうとう離縁されてしまいました。なのにその後、ゼネラル家に嫁として戻って来いと手紙と書類が届きました。息子は種無しだったと、だから石女として私に叩き付けた離縁状は無効だと。 その他にも色々ありましたが、今となっては心は落ち着いています。私には優しい弟がいて、頼れるお祖父様がいて、可愛い妹もいるのですから。

俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。

ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。 俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。 そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。 こんな女とは婚約解消だ。 この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。

処理中です...