七色の魔弾使い

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領地へ!

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シオンは啖呵を切った後、すぐに荷物を取りに戻り、特別に用意してもらった馬車に乗った。

「シオン、落ち着いて下さいね?」
「そうだな。冷静になれよ?焦りは禁物だからな!」

「…………わかっている」

シオンは不貞腐れたように言った。
馬車はアッシュが運転し、無難な速度で走らせた。

「シオン、取り敢えずシオンの屋敷に向かうぞ?」
「ああ、それでいい」

マリンが今後の行動については尋ねた。

「それで、着いたらすぐに討伐に向かうの?」
「そうね。もし通りすがりに魔物が跋扈(ばっこ)しているなら倒して行きましょう。ただ、シオンの屋敷に着いたら、まずは状況の確認からね。魔物の大群がどの辺にいるのかなど確認しないと動けないから」

ルビーが的確に行動の指針を示した。

「………大丈夫だといいな」
「ああ、運が良いのか、領地には父上が戻っていた時に起こった。父上なら数日くらい持ち堪えるさ」

「なるほど。カラー侯爵がいるなら安心だな」

あのシオンが本気でも勝てない剣聖の称号を持つ、王国でも最強の一角に座す魔剣士。

少し安堵の空気が流れる。
馬車は休憩を挟みながらカラー侯爵領へ向かっていった。

数日掛けてたどり着くと、執事の方が出迎えてくれた。

「お帰りなさいませ。シオン様。疲れていると思いますが、応接室へお越しください」

執事に付いて行くと、普段の応接室とは違い、テーブルや壁に大きな地図が掛けられており、魔物の発生場所には赤い印が付けられいた。

「これは──」

「ここは簡易の司令室として使っています。昨日から旦那様と奥様は、ここより北の街へ向かいました」

執事が地図を指した。

「ここから北…………ターコイズの街か。確かにあそこは城壁も高いし、大きな街だ。防衛には向いているな………」

シオンは地図を見ながら呟いた。
そこに執事が状況を説明した。

「今回、スタンピードを起こしたダンジョンは、山の中腹にあり、近くには鉱山もあります。そして麓にターコイズの街があり、近隣の村など城壁のない所はターコイズの街に避難しました」

地図を棒で指しながら説明していく。

「現在、カラー侯爵家の私兵をターコイズに向かわせました。旦那様と奥様が指揮を取っておられます。旦那様が所属する王都の第一騎士団も出撃したと報告があり、明日にでも到着するでしょう」

「食料は大丈夫なのか?」
「今の所は備蓄の『蔵』を出しているので、約1ヶ月は持ちます。他からの支援もあるでしょうから、しばらくは大丈夫です。問題は援軍が到着するまでターコイズの城壁が持つかといった所ですな」

なるほど。

「ターコイズの街は魔物に囲まれているのか?」
「はい。旦那様が向かった時は囲まれるほどではありませんでしたが、今はダンジョンから魔物が次々と出てきており、囲まれているそうです」

地図を見ながらルートを確認した。

「ここから通常2時間ほどの距離です。馬で飛ばせば1時間で着くでしょう」

「意外に近いのね?」

「逆にいえばそこまで魔物の大群が迫っているってことだ。気を引き締めていくぞ!」

シオンの言葉にこの場にいる者達は頷くのだった。


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