49 / 52
領地へ!
しおりを挟む
シオンは啖呵を切った後、すぐに荷物を取りに戻り、特別に用意してもらった馬車に乗った。
「シオン、落ち着いて下さいね?」
「そうだな。冷静になれよ?焦りは禁物だからな!」
「…………わかっている」
シオンは不貞腐れたように言った。
馬車はアッシュが運転し、無難な速度で走らせた。
「シオン、取り敢えずシオンの屋敷に向かうぞ?」
「ああ、それでいい」
マリンが今後の行動については尋ねた。
「それで、着いたらすぐに討伐に向かうの?」
「そうね。もし通りすがりに魔物が跋扈(ばっこ)しているなら倒して行きましょう。ただ、シオンの屋敷に着いたら、まずは状況の確認からね。魔物の大群がどの辺にいるのかなど確認しないと動けないから」
ルビーが的確に行動の指針を示した。
「………大丈夫だといいな」
「ああ、運が良いのか、領地には父上が戻っていた時に起こった。父上なら数日くらい持ち堪えるさ」
「なるほど。カラー侯爵がいるなら安心だな」
あのシオンが本気でも勝てない剣聖の称号を持つ、王国でも最強の一角に座す魔剣士。
少し安堵の空気が流れる。
馬車は休憩を挟みながらカラー侯爵領へ向かっていった。
数日掛けてたどり着くと、執事の方が出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ。シオン様。疲れていると思いますが、応接室へお越しください」
執事に付いて行くと、普段の応接室とは違い、テーブルや壁に大きな地図が掛けられており、魔物の発生場所には赤い印が付けられいた。
「これは──」
「ここは簡易の司令室として使っています。昨日から旦那様と奥様は、ここより北の街へ向かいました」
執事が地図を指した。
「ここから北…………ターコイズの街か。確かにあそこは城壁も高いし、大きな街だ。防衛には向いているな………」
シオンは地図を見ながら呟いた。
そこに執事が状況を説明した。
「今回、スタンピードを起こしたダンジョンは、山の中腹にあり、近くには鉱山もあります。そして麓にターコイズの街があり、近隣の村など城壁のない所はターコイズの街に避難しました」
地図を棒で指しながら説明していく。
「現在、カラー侯爵家の私兵をターコイズに向かわせました。旦那様と奥様が指揮を取っておられます。旦那様が所属する王都の第一騎士団も出撃したと報告があり、明日にでも到着するでしょう」
「食料は大丈夫なのか?」
「今の所は備蓄の『蔵』を出しているので、約1ヶ月は持ちます。他からの支援もあるでしょうから、しばらくは大丈夫です。問題は援軍が到着するまでターコイズの城壁が持つかといった所ですな」
なるほど。
「ターコイズの街は魔物に囲まれているのか?」
「はい。旦那様が向かった時は囲まれるほどではありませんでしたが、今はダンジョンから魔物が次々と出てきており、囲まれているそうです」
地図を見ながらルートを確認した。
「ここから通常2時間ほどの距離です。馬で飛ばせば1時間で着くでしょう」
「意外に近いのね?」
「逆にいえばそこまで魔物の大群が迫っているってことだ。気を引き締めていくぞ!」
シオンの言葉にこの場にいる者達は頷くのだった。
「シオン、落ち着いて下さいね?」
「そうだな。冷静になれよ?焦りは禁物だからな!」
「…………わかっている」
シオンは不貞腐れたように言った。
馬車はアッシュが運転し、無難な速度で走らせた。
「シオン、取り敢えずシオンの屋敷に向かうぞ?」
「ああ、それでいい」
マリンが今後の行動については尋ねた。
「それで、着いたらすぐに討伐に向かうの?」
「そうね。もし通りすがりに魔物が跋扈(ばっこ)しているなら倒して行きましょう。ただ、シオンの屋敷に着いたら、まずは状況の確認からね。魔物の大群がどの辺にいるのかなど確認しないと動けないから」
ルビーが的確に行動の指針を示した。
「………大丈夫だといいな」
「ああ、運が良いのか、領地には父上が戻っていた時に起こった。父上なら数日くらい持ち堪えるさ」
「なるほど。カラー侯爵がいるなら安心だな」
あのシオンが本気でも勝てない剣聖の称号を持つ、王国でも最強の一角に座す魔剣士。
少し安堵の空気が流れる。
馬車は休憩を挟みながらカラー侯爵領へ向かっていった。
数日掛けてたどり着くと、執事の方が出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ。シオン様。疲れていると思いますが、応接室へお越しください」
執事に付いて行くと、普段の応接室とは違い、テーブルや壁に大きな地図が掛けられており、魔物の発生場所には赤い印が付けられいた。
「これは──」
「ここは簡易の司令室として使っています。昨日から旦那様と奥様は、ここより北の街へ向かいました」
執事が地図を指した。
「ここから北…………ターコイズの街か。確かにあそこは城壁も高いし、大きな街だ。防衛には向いているな………」
シオンは地図を見ながら呟いた。
そこに執事が状況を説明した。
「今回、スタンピードを起こしたダンジョンは、山の中腹にあり、近くには鉱山もあります。そして麓にターコイズの街があり、近隣の村など城壁のない所はターコイズの街に避難しました」
地図を棒で指しながら説明していく。
「現在、カラー侯爵家の私兵をターコイズに向かわせました。旦那様と奥様が指揮を取っておられます。旦那様が所属する王都の第一騎士団も出撃したと報告があり、明日にでも到着するでしょう」
「食料は大丈夫なのか?」
「今の所は備蓄の『蔵』を出しているので、約1ヶ月は持ちます。他からの支援もあるでしょうから、しばらくは大丈夫です。問題は援軍が到着するまでターコイズの城壁が持つかといった所ですな」
なるほど。
「ターコイズの街は魔物に囲まれているのか?」
「はい。旦那様が向かった時は囲まれるほどではありませんでしたが、今はダンジョンから魔物が次々と出てきており、囲まれているそうです」
地図を見ながらルートを確認した。
「ここから通常2時間ほどの距離です。馬で飛ばせば1時間で着くでしょう」
「意外に近いのね?」
「逆にいえばそこまで魔物の大群が迫っているってことだ。気を引き締めていくぞ!」
シオンの言葉にこの場にいる者達は頷くのだった。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
二人の男爵令嬢の成り上がり!でも、結末は──
naturalsoft
恋愛
オーラシア大陸の南に姉妹国と呼ばれる二つの国があった。
西側のアネーデス王国
東側のイモート王国
過去にはお互いの王族を嫁がせていた事もあり、お互いにそれぞれの王族の血が受け継がれている。
そして、アネーデス王国で周辺国を驚かすニュースが大陸を駆け抜けた。
その国のとある男爵令嬢が、王太子に見初められ【正しい正規の手続き】を踏んで、王太子妃になったのである。
その出来事から1年後、隣のイモート王国でも、その国の男爵令嬢が【第一王子】の【婚約者】になったと騒がれたのだった。
しかし、それには公衆の面前で元婚約者に婚約破棄を突き付けたりと、【正規の手続きを踏まず】に決行した悪質なやり方であった。
この二人の結末はいかに──
タイトルイラスト
素材提供
『背景素材屋さんみにくる』
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
聖女は支配する!あら?どうして他の聖女の皆さんは気付かないのでしょうか?早く目を覚ましなさい!我々こそが支配者だと言う事に。
naturalsoft
恋愛
この短編は3部構成となっております。1話完結型です。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
オラクル聖王国の筆頭聖女であるシオンは疑問に思っていた。
癒やしを求めている民を後回しにして、たいした怪我や病気でもない貴族のみ癒やす仕事に。
そして、身体に負担が掛かる王国全体を覆う結界の維持に、当然だと言われて御礼すら言われない日々に。
「フフフッ、ある時気付いただけですわ♪」
ある時、白い紙にインクが滲むかの様に、黒く染まっていく聖女がそこにはいた。
狐に娶られる猫~昔の夫を忘れられない猫は大妖狐に魅入られる~
村雨 妖
恋愛
長い年月を生きる猫又の彼女には秘密がある。妖怪と人間の姿を使い分ける猫又は妖怪界では珍しくはないけれど、女と男を使い分ける事が出来るとなると他に例はない。しかもその男の姿は彼女の過去に由来する後天的な能力で……
そんな男の姿をしている彼女、弥生は妖の世界をのらりくらりと1人旅し回っていていた。ある日、弥生は嫁入り道中の管狐の少女、撫子と出会う。彼女はは嫁入りを拒み、弥生に助けを求めてきた。弥生は情に負けて逃げ出す手助けをする事にしたのだけれど、運悪く撫子を連れ戻そうとする追手に追いつかれてしまう。しかもその追手は彼女の婚約者であり、世に名を轟かせている一家の頂点に君臨する大妖怪の妖狐、大和だった。責任を追及されるかと覚悟を決めたものの、大妖怪の狐の彼から思いがけない提案を持ちかけられる。それは”手合わせをして弥生が勝てば罪を問わず、負ければ大和と隷属の契りを結ぶ”というもの。この出会いをきっかけに、弥生の運命は大きく変わっていく事となる。
封印されし聖剣戦記!~幻のアーティファクトを求めて~
naturalsoft
ファンタジー
今回の話はRPGゲームによくある『王道』を主軸にストーリーが進んでいきます!
※*※*※*※*※*※*※*※*※*※※*
約100年前、勇者が魔王を倒して世界に平和が訪れた。しかし、世間には広まっていない口伝があった。魔王は倒される前に必ず甦ると言う呪怨を残していたのだ。
それを危惧した一部の有力者達は、次世代の勇者を守り育てるため、山奥に集落を作り隠れ住んだ。いつか復活する魔王を倒すために、勇者の血脈を絶やさぬように育成するために。
そしてちょうど100年が経ち、ついに魔王が復活しようとしていた!
魔物が活性化し世界が闇に飲まれようとした時─
勇者が立ち上がる!
………かも知れない。
聖女は魔女の濡れ衣を被せられ、魔女裁判に掛けられる。が、しかし──
naturalsoft
ファンタジー
聖女シオンはヒーリング聖王国に遥か昔から仕えて、聖女を輩出しているセイント伯爵家の当代の聖女である。
昔から政治には関与せず、国の結界を張り、周辺地域へ祈りの巡礼を日々行っていた。
そんな中、聖女を擁護するはずの教会から魔女裁判を宣告されたのだった。
そこには教会が腐敗し、邪魔になった聖女を退けて、教会の用意した従順な女を聖女にさせようと画策したのがきっかけだった。
【連載版】異世界に転生した少女は異世界を満喫する
naturalsoft
恋愛
読書様からの要望により、短編からの連載版になります。
短編では描き切れ無かった細かい所を記載していきたいと思います。
短編と少し設定が変わっている所がありますがご了承下さい
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ふと目が覚めると赤ちゃんになっていた。Why?私を覗き込む金髪美人のお母さんを見て、あ、異世界転生だ!と気付いた私でした。前世ではラノベを読みまくった知識を生かして、魔力?を限界まで使えば総量が増えるはず!
よし、魔力チートを目指してエンジョイするぞ♪
これは神様にあった記憶もない楽天家な少女が前世の知識で異世界を満喫する話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる