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転がり込んできたのは①

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 異世界転生・転移モノといえば、漫画やラノベの昨今の流行であり、既にネタ切れ寸前のコンテンツでもあるが、今は日曜朝の子供アニメのような安心感さえ与えていると言っても過言ではない。

 チート能力、断罪、更にはざまぁ展開……まるでアニメ放送の尺のように決まったタイミングで入るお約束の展開は、正に魔法少女や戦隊モノの変身シーンだ。

 だが、今の状況はどう表現したら良いのだろう?

 アニメの放送に例えるならば…そう、これはオープニングなのだろうが、状況が地味すぎていまいち展開が掴めていない。
 この日は土曜日だった。
 バイトも夜だからと昼まで散々寝た、この部屋の住人である『羽曳野知花』は、スマホのしつこいアラームを何度も消し、ようやくベッドから足を下ろしたところだった。
 すると次の瞬間、足元に光り輝く魔法陣の様なものが浮かぶのを見たのだ。

「うぇええええ!?」

 素っ頓狂な声を上げつつ、咄嗟に思いついたのは、異世界転生・転移モノによくある『何かをしようとすると突然現れるやつ』である。

 (遂に私も異世界転移!?)

『なんて馬鹿なことが、ある訳ない!!』と自分でノリツッコミをしたのも束の間、眩しい光が部屋中を包んでいく。

(…いやいやいやいや、これ本当にあり得るんじゃ!?)

 が、特に浮遊感もなければ、足元の感触も当然変わらない。

 恐る恐る目を開けても、やっぱり目に映る景色は自分の部屋。
 家賃六万、1DKロフト付きの狭い女子大生の部屋だ。

 だが、確かに違うものがある。
 いや、正しくは居る。

 知花の目の前に現れたのは、異世界からやって来たと言わんばかりの二人である。
 一人は宝石を散りばめられた、ピンク色のドレスを纏う、それはそれは可愛らしいお姫様。
 艶やかなピンクブロンドに、ぱっちりと大きな瞳は、不純物など許さない、大粒のアメジストをはめ込んだかのようだ。

 そしてもう一人は煌びやかな騎士服と剣を携えた、艶やかな黒髪とエメラルドのような瞳が印象的な、端正な顔立ちの青年。

 二人が並び立つ姿は、まるでファンタジー小説のヒロインとヒーローそのものだった。

「え…どちら様でいらっしゃいますか…?」

 知花は自分の部屋に突然現れた二人に、質問を投げかけると、その声に二人は同時に知花を見つめた。

(異世界転移+お姫様+騎士様、これが意味するものはつまり…!!)

 知花は空気の読める子である。
 これでも三人姉弟の一番上。
 緊急事態への対応力には自信がある。

 そして開口一番、知花が言い放った言葉は―

「初めまして!私は羽曳野知花、十九歳。しっかりとモブ役努めさせて頂きます!!!!」

 家賃六万、1DKロフト付き狭い部屋に轟いた知花の声は、斜め上の自己紹介であった。
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