上 下
180 / 237

第155話 もう一つの事件(3)

しおりを挟む
ドゴーン!!!!!

「おい、なんだ今の?」

「なんだか爆発みたいな音が!」

「あっちの方燃えてないか!?」

「誰か警察を呼んだほうが…」
_________________
パチパチと雑草が燃える音が鼓動させる中、ダークエルフはなおも微笑みながら立っていた。

「……へぇ」

だがその笑みはもっと深くなるばかりだった。直後全ての炎を打ち消すかの如く、水流の群れがダークエルフの方へ迫っていた。

「生きてたね。よく」

その質問に答えることなく、私は睨み付ける。

「3対1で勝てると思う?この世界はね、あんたに合わないんだよ」

私はそう言うと笑いながら返す。魔法が全ての世界であれば人間はエルフには勝てない。だが、この世界ではそれは違う。人間が生態系の頂点であり、道具を使う世界なのだから。

だがダークエルフは動揺することなく、微笑みながら

「僕だって一人じゃないよ。3人…いや3体いるんだから」

直後、裏山のほうからドゴン!という音が複数同時に響き渡る。鳥達が驚いて飛び立っているのか、山の辺りが一気にうるさくなる。

「今の…何だよ!」

隣にいるキルアがファランクスに問いかける。

「何だと思う?それより僕は目の前だよ」

ファランクスはそう言うと、両手を掲げる。直後、白色の巨大な手と黒色の巨大な手、そして地面から人のような影が湧き出る。

「さあ、来なよ」

「じゃあ行く」

私はあっさりそう答えると、間合いを詰めようとするが…

「…!アナリス!」

カノンの叫び声がすると同時に何かが目の前を横切る。反射神経でかろうじて避けるが今のは一体…

「ファランクス…お前一人では時間がかかるだろう。趣味が良すぎてな」

「ハハ、そんな事言わないでよ。エルターゼ」

ファランクスの隣にはいつの間にか緑の悪魔が立っていた。

「…な、マジか。魔王軍幹部があそこに二人…」

驚きながらそう発言する。散々探されていた魔王軍の幹部、それが今目の前に二人揃っていたのだ。

「援軍…」

「ちょっ!?卑怯だぞそれは!」

カノンとキルアはそう言いながら剣とナイフを構える。だが…

「仕掛けてきたわよ~。それでこの子達はどうしようかしらね~、ね~?」

女の声。若い女の声が背後から響き渡った。

「予定通りだ」

「は~い。楽しみぃ」

緑の悪魔に促されたその女、かつてドイツで一戦交えた魔王軍幹部のリヴリーは笑いながら立っていた。

「幹部が三人…やばくね?」

思わず口に出してしまった。これはタダ事じゃない。一王国が総出でかからなければ終わるレベルだ。

「そう、やばいわよ。今度は失敗しないからね」

リヴリーは嬉しそうにそう言う。そしてキルアは顔の表情を隠すことなくこう告げる。

「やばいぞ。あの山から魔物の反応がする。多分ダンジョンが…複数」

「気づいたか…さて、お話は終わりだ。始めようではないか。宴を」

エルターゼはそう言うと天高く羽ばたく。

「3vs3だよ。まずは僕からね」

ファランクスはそう言った直後、影がこちらへと迫ってくると同時に白い手と黒い手が衝撃波を巻き起こす。

「私があいつを!カノンは女!キルアは悪魔を相手にして!」

「分かりました!」

「任せろ!」

勢いよくそう言った二人を背後に、正面にいるダークエルフと対峙する。迫ってくる影を手を振り払い、あっさりと消滅させることはできた。だが白い手と黒い手は健在だ。

「……ふふ。どうしようかなぁ~」

「…何をだよ?」


「君の体。良いよね、君はきれいだし、体つきだってね。その体をどうやって壊そうかなぁって、どう凌辱しようかなあって、楽しみなんだ。君の…君の…2年前から取って置いた楽しみg…」

ダークエルフの体は言葉を言い終える前に吹き飛ぶ。横倒しになった地面がダークエルフを包み込む。

包み込んだ地面はやがて揺れ動きながら球体へとなり、そのまま私が作り出した地面の影へと引き込まれる。

「影か。いいねいいね。僕は女の子以外とはあんまり喋んないんだけど。ふふ、ふふふふふ」

「気持ち悪いんだよさっきから。とっとと死ね」

「いいね。その声も美しいよ~」

直後、球体は弾け飛び、無数の影の帯がこちらへと向かってくる。

咄嗟に手をかざす。直後、光の玉が周囲に複数表れ、眩い光を放出する。

「先に言うと君の負けだ。僕はエルフで君は人間。上位魔法の習得数は駄前僕の方が上。何にでも対応できるってことだよ」

「戦ってるのに話すなんて随分と余裕だね、賢者舐めてる?」

「舐めてはないさ。君は賢者じゃないしね。この国の小説の如く、無双できるとは限らない。僕の知識は無限大だから」

「はあ、そうですか!」

直後、私は巨大な光の手を空中に具現化させる。白い手と黒い手より大きい手だ。

「さしずめ神の手と言ったところか」 




ファランクスはそう言った後、白い手と黒い手を同時に私に当てつける。

「[虹界]」

私は短くそう呟いたその瞬間、7色で構成された虹が私とファランクスの周りを包む。

虹界。虹の世界、その色彩は魔力を惑わし、魔法の予測、相手による魔力操作を鈍らせる。魔力操作が鈍れば必然的に魔法の威力は落ちる。

フィールドは私よりにできたはずだ。問題は奴が上書きするかどうかで…

「…クソ…」

しかしその考えは甘かったことを知らされる。ファランクスは同様に[影界]を発動させ、複数の影を呼び出した。

「時間ないのに」

影と影の相殺をすべく、こちらも影を呼び出す。ファランクスは多少驚いたように見えたが気にしない。

「君に残された時間はいくらあるかな?ダンジョン攻略も忙しくなるよ」

それを聞いて心底こいつを殺してやりたいという思いが増幅する。

ダンジョンの魔物達はこちらへ向かってくる気配がない。ならば民家の方に向かっているのだろう。

この世界の住人は魔法を使えず、常時マシンガンを持ち歩いているわけではない。しばらくは蹂躪されるはずだ。

ドイツと同じ事がここで起きてしまうことを意味していた。

「うるさい!」

私はそう言うと、周辺のフィールドをリセットする。虹も影もそこにはない。だが白い手と黒い手は依然としてそこにある。

「第2ラウンドを…始めよう」

ファランクスは微笑みながらそう言った。









しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

わし七十歳定年退職者、十七歳冒険者と魂だけが入れ替わる ~17⇔70は地球でも異世界でも最強です~

天宮暁
ファンタジー
東京郊外で定年後の穏やかな生活を送る元会社員・桜塚猛(さくらづかたける)、70歳。 辺境の街サヴォンに暮らす万年D級冒険者ロイド・クレメンス、17歳。 冒険者ランク昇格をかけて遺跡の奥に踏み込んだロイドは、東京・桜塚家で目を覚ます。 一方、何事もなく眠りについたはずの桜塚猛は、冒険者の街サヴォンの宿屋で目を覚ました。 目覚めた二人は、自分の姿を見て驚愕する。ロイドはまったく見覚えのない老人の身体に、桜塚は若く精悍な冒険者の身体に変わっていたのだ。 何の接点もなかったはずの二人の意識が、世界を跨いで入れ替わってしまったのだ! 七十歳が十七歳に、十七歳が七十歳に―― いきなり常識の通じない「異世界」に放り出された二人の冒険が、今始まる! ※ 異世界、地球側並行で話が進みます。  完結まで毎日更新の予定です。  面白そう!と思ってもらえましたら、ご応援くださいませ。

『おっさんが二度も転移に巻き込まれた件』〜若返ったおっさんは異世界で無双する〜

たみぞう
ファンタジー
50歳のおっさんが事故でパラレルワールドに飛ばされて死ぬ……はずだったが十代の若い体を与えられ、彼が青春を生きた昭和の時代に戻ってくると……なんの因果か同級生と共にまたもや異世界転移に巻き込まれる。現代を生きたおっさんが、過去に生きる少女と誰がなんのために二人を呼んだのか?、そして戻ることはできるのか?  途中で出会う獣人さんやエルフさんを仲間にしながらテンプレ? 何それ美味しいの? そんなおっさん坊やが冒険の旅に出る……予定? ※※※小説家になろう様にも同じ内容で投稿しております。※※※

私(僕)達は同じ過ちを繰り返さないために・・・

ちょこあいす
ファンタジー
世界中で起きた異変 バケモノがはびこる世界 必死に生き延びる人達 命のやり取りが当たり前の世界 不定期更新なので気長に待ってください

新人神様のまったり天界生活

源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。 「異世界で勇者をやってほしい」 「お断りします」 「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」 「・・・え?」 神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!? 新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる! ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。 果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。 一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。 まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

勇者現代へ帰る。でも、国ごと付いてきちゃいました。

Azanasi
ファンタジー
突然召喚された卒業間近の中学生、直人 召喚の途中で女神の元へ……女神から魔神の討伐を頼まれる。 断ればそのまま召喚されて帰るすべはないと女神は言い、討伐さえすれば元の世界の元の時間軸へ帰してくれると言う言葉を信じて異世界へ。 直人は魔神を討伐するが帰れない。実は魔神は元々そんなに力があるわけでもなくただのハリボテだった。そう、魔法で強く見せていただけだったのだが、女神ともなればそれくらい簡単に見抜けるはずなおだが見抜けなかった。女神としては責任問題だここでも女神は隠蔽を施す。 帰るまで数年かかると直人に伝える、直人は仕方なくも受け入れて現代の知識とお買い物スキルで国を発展させていく ある時、何の前触れもなく待望していた帰還が突然がかなってしまう。 それには10年の歳月がかかっていた。おまけにあろうことか国ごと付いてきてしまったのだ。 現代社会に中世チックな羽毛の国が現れた。各国ともいろんな手を使って取り込もうとするが直人は抵抗しアルスタン王国の将来を模索して行くのだった。 ■小説家になろうにも掲載

半身転生

片山瑛二朗
ファンタジー
忘れたい過去、ありますか。やり直したい過去、ありますか。 元高校球児の大学一年生、千葉新(ちばあらた)は通り魔に刺され意識を失った。 気が付くと何もない真っ白な空間にいた新は隣にもう1人、自分自身がいることに理解が追い付かないまま神を自称する女に問われる。 「どちらが元の世界に残り、どちらが異世界に転生しますか」 実質的に帰還不可能となった剣と魔術の異世界で、青年は何を思い、何を成すのか。 消し去りたい過去と向き合い、その上で彼はもう一度立ち上がることが出来るのか。 異世界人アラタ・チバは生きる、ただがむしゃらに、精一杯。 少なくとも始めのうちは主人公は強くないです。 強くなれる素養はありますが強くなるかどうかは別問題、無双が見たい人は主人公が強くなることを信じてその過程をお楽しみください、保証はしかねますが。 異世界は日本と比較して厳しい環境です。 日常的に人が死ぬことはありませんがそれに近いことはままありますし日本に比べればどうしても命の危険は大きいです。 主人公死亡で主人公交代! なんてこともあり得るかもしれません。 つまり主人公だから最強! 主人公だから死なない! そう言ったことは保証できません。 最初の主人公は普通の青年です。 大した学もなければ異世界で役立つ知識があるわけではありません。 神を自称する女に異世界に飛ばされますがすべてを無に帰すチートをもらえるわけではないです。 もしかしたらチートを手にすることなく物語を終える、そんな結末もあるかもです。 ここまで何も確定的なことを言っていませんが最後に、この物語は必ず「完結」します。 長くなるかもしれませんし大して話数は多くならないかもしれません。 ただ必ず完結しますので安心してお読みください。 ブックマーク、評価、感想などいつでもお待ちしています。 この小説は同じ題名、作者名で「小説家になろう」、「カクヨム」様にも掲載しています。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...