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第151話 東京駅
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2022年 9月15日 現地標準時
午後1時45分
日本 東京都 千代田区 東京駅 京葉地下八重洲口前
_________________
東京駅。このターミナル駅はJR東日本、JR東海、東京メトロが走る駅である。そしてJR東日本の在来線と新幹線各路線、JR東海の東海道新幹線、東京メトロの丸ノ内線が発着する。様々な新幹線の起点となっており、全33都道府県を繋ぐこの駅は日本の駅で一番忙しいと言えるだろう。
「当たり一面緑色。おまけに皮膚にも浸透するから防護服なしじゃあ入れない…か」
「俺の魔法で防げるか分からんぞ。こんな広範囲で、しかも毒ガスの防御方法なんてたかが知れてる」
「そうだろうな。でもまあやるしかないさ。地下鉄駅構内に存在するガスの発生源を止めるのが目的。そしたら少しはまともになり、機動隊でも突入できる穴ができる」
「らしいな。あの人が言うには」
俺はそう言った後、緑色に包まれた薄暗い通路を進んでいく。そのまま動いていたであろうエスカレータを降りようとした時だ。
「わっ!?」
俺は何かに躓いてそのまま転んでしまう。ガスマスクがその拍子に外れそうになるが、なんとか口元を抑え、外れないようにする。
幸いにもガスマスクが外れて窒息とはならずに一安心するが…一体何に躓いたのだろうか。
「…ったく何に…」
「やめたほうがいい。見ないほうがいいよムゴいから」
「ムゴ…って…」
その言葉の意味通りに捉えるならそこには何かがあり、酷い状態で置かれる…いや倒れているのだろう。
人が。
「…先に進もう。この人多分もう駄目だ」
「…う、お、おう。そうだな…」
初っ端から全てが重すぎる。息が荒くなっていくのを感じる。
また目の前に死がある。しかも今回は自分だけじゃなく、顔の知らない赤の他人。
そう考えると胃が重くなっていく。ガスで窒息…って…どれだけ苦しいのだろう。
「…大丈夫か?急がないと。生存者がいる可能性は限りなく低いかもだけど」
「…そうだな行こう」
俺はヒカルに促され、足に力を込める。ガスが放たれて1時間は経つと言うが…
「このガス…わざと緑色かもな。視界を悪くさせるために。あと量的にもガスの発生源は一つじゃない」
「…それって…」
「他にもあるだろうな。その発生源がどれだけのガスを噴出し続けているのかは分からない。けど東京駅全体を覆うほどだ。相当な量がある」
「やばいな…思ったより…ってヒカルあれ…」
エスカレータを降りた先、地上を支える大きな一本の柱の前に何やら大きな箱がある。中を覗いて見ると筒状の物がぎっしりと詰まっている。
「…なあ?これか。こっから緑色のやつが出てないか?」
「多分これだ」
ヒカルに確認してもやはりそうらしい。これがこの地獄を作った全ての元凶。
「…どうする?一刻の猶予もないけど」
「二人で行動しよう。何かあった時のために。魔力は大丈夫そうか?」
「皮膚全体に薄い空気の膜を張っただけだからな。でもあと15分くらい」
「分かった。早く済ませよう」
そう言うとヒカルはエスカレータを昇ろうとする。
「おい、ここの区画、もう探さなくてもいいのか?」
「ああ、多分ないから。ただでさえ目立ちそうなあの箱を何個も置けるはずがないし。何よりこの区画にそんなのが何個もあったら国家ぐるみの犯罪を疑うよ」
「そうか」
「…いや待って。何か音がしなかったか?」
「え?」
地下2階から地下1階までの間に音はなかったはずだ。
ガン!
「…したね」
だがたった今聞こえてしまったものは仕方ない。どうやらその先にあるのは
「トイレか…もしかしたらここに避難してる人がいるかも」
そう言うとヒカルは拳銃をどこからか取り出して構える。
「念には念を入れる。行くよ」
こうして東京駅の地獄を打開する物語が始まった。
午後1時45分
日本 東京都 千代田区 東京駅 京葉地下八重洲口前
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東京駅。このターミナル駅はJR東日本、JR東海、東京メトロが走る駅である。そしてJR東日本の在来線と新幹線各路線、JR東海の東海道新幹線、東京メトロの丸ノ内線が発着する。様々な新幹線の起点となっており、全33都道府県を繋ぐこの駅は日本の駅で一番忙しいと言えるだろう。
「当たり一面緑色。おまけに皮膚にも浸透するから防護服なしじゃあ入れない…か」
「俺の魔法で防げるか分からんぞ。こんな広範囲で、しかも毒ガスの防御方法なんてたかが知れてる」
「そうだろうな。でもまあやるしかないさ。地下鉄駅構内に存在するガスの発生源を止めるのが目的。そしたら少しはまともになり、機動隊でも突入できる穴ができる」
「らしいな。あの人が言うには」
俺はそう言った後、緑色に包まれた薄暗い通路を進んでいく。そのまま動いていたであろうエスカレータを降りようとした時だ。
「わっ!?」
俺は何かに躓いてそのまま転んでしまう。ガスマスクがその拍子に外れそうになるが、なんとか口元を抑え、外れないようにする。
幸いにもガスマスクが外れて窒息とはならずに一安心するが…一体何に躓いたのだろうか。
「…ったく何に…」
「やめたほうがいい。見ないほうがいいよムゴいから」
「ムゴ…って…」
その言葉の意味通りに捉えるならそこには何かがあり、酷い状態で置かれる…いや倒れているのだろう。
人が。
「…先に進もう。この人多分もう駄目だ」
「…う、お、おう。そうだな…」
初っ端から全てが重すぎる。息が荒くなっていくのを感じる。
また目の前に死がある。しかも今回は自分だけじゃなく、顔の知らない赤の他人。
そう考えると胃が重くなっていく。ガスで窒息…って…どれだけ苦しいのだろう。
「…大丈夫か?急がないと。生存者がいる可能性は限りなく低いかもだけど」
「…そうだな行こう」
俺はヒカルに促され、足に力を込める。ガスが放たれて1時間は経つと言うが…
「このガス…わざと緑色かもな。視界を悪くさせるために。あと量的にもガスの発生源は一つじゃない」
「…それって…」
「他にもあるだろうな。その発生源がどれだけのガスを噴出し続けているのかは分からない。けど東京駅全体を覆うほどだ。相当な量がある」
「やばいな…思ったより…ってヒカルあれ…」
エスカレータを降りた先、地上を支える大きな一本の柱の前に何やら大きな箱がある。中を覗いて見ると筒状の物がぎっしりと詰まっている。
「…なあ?これか。こっから緑色のやつが出てないか?」
「多分これだ」
ヒカルに確認してもやはりそうらしい。これがこの地獄を作った全ての元凶。
「…どうする?一刻の猶予もないけど」
「二人で行動しよう。何かあった時のために。魔力は大丈夫そうか?」
「皮膚全体に薄い空気の膜を張っただけだからな。でもあと15分くらい」
「分かった。早く済ませよう」
そう言うとヒカルはエスカレータを昇ろうとする。
「おい、ここの区画、もう探さなくてもいいのか?」
「ああ、多分ないから。ただでさえ目立ちそうなあの箱を何個も置けるはずがないし。何よりこの区画にそんなのが何個もあったら国家ぐるみの犯罪を疑うよ」
「そうか」
「…いや待って。何か音がしなかったか?」
「え?」
地下2階から地下1階までの間に音はなかったはずだ。
ガン!
「…したね」
だがたった今聞こえてしまったものは仕方ない。どうやらその先にあるのは
「トイレか…もしかしたらここに避難してる人がいるかも」
そう言うとヒカルは拳銃をどこからか取り出して構える。
「念には念を入れる。行くよ」
こうして東京駅の地獄を打開する物語が始まった。
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