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第135話 新たな敵

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アメリカ、ドイツ、イギリス、中国。莫大な被害を蒙り、現在、国連を中心とした世界各国の多数の援助により復興が行われていた。

特にニューヨークの事件により、多くのアメリカ、ニューヨーク市民の職は失われた。またニューヨーク証券場の移転、ハドソン川、ニューヨーク湾の海上封鎖やウォール街への立ち入り制限も相まって世界は混沌を極めようとしていた。

第二の世界恐慌はゆっくりと世界を蝕んでいった。株価の変動、輸出入額の変動によってドルの価値が信用されなくなっていた。そしてそれらはモノカルチャー経済頼りのアフリカ諸国や南米諸国にまで影響を及ぼしていた。

アジア諸国も香港の事件により大幅な生産活動の低下が見込まれている。日本の企業の多くは中国沿岸部への進出を躊躇するようになった。EU諸国、ドイツでの被害は比較的貧しい東欧諸国への影響が懸念されている。

2020年、EUを脱退したイギリスはこの恐慌の中、一国としての復興を果たさなければならない。
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2022年 9月2日 現地標準時
午後3時4分
イギリス アバディーン
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「…にしても何なんだぁ?この有様は?」 

「もう一ヶ月以上は経っているってのに…ですね」

「…ったく自分勝手な馬鹿共だ。やれ調査だのでここから追い出されたと思ったら、今度は急に呼び出してここを復興させろだとよ」

「給与はまあまああるとは言え、かなりきついっすよね。それに国連が前発表してた地球外生命体の襲撃らしいですし」

「ああ、あれか?いまだに実感湧かないんだよな。だって1年前まで俺達は普通に土方仕事やってたからなぁ」

「っすよね。急にこんなんなっちゃって訳分かんないっすよ。でもドイツよりはマシらしいっすよ」

「どうして?」

「なんかやばい化け物の死体が転がってるらしいみたいで。こっちは一方的な襲撃ってことで化け物はいないらしいっすけど」

「へぇ。そうかい。それならこっちも…仕事がしやすい」

「…あっちの方の仕事ですか?」

「よく気づいたな…まぁそうだ。奴らのおかげで俺達の計画はうまくいけそうだ」

「皆世界を変えたがってます。苦しみを皆に分けようとする奴らが待ち切れないと言ってます」

「上等だ。俺達もこうして土方なんかやってられねぇな。終わりだ終わり。こうなっちまったのは世の中のせいだ。真面目にやってちゃああっさり人生終わるぜ」

「手はずは既に整っていますよ。GOサインさえあればいつでも…」

「全員に今すぐ伝えろ。平等な苦しみの始まりだとな」

「いよいよやるんですね。任せてください。我らがリーダーよ、世界を…愚かな我々を導いてください」
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「中国での死者は2000人を越え…」

「世界各国で暴動が多発…」

「モンタナ州でのショッピングモールで乱射事件が発生。52名が死亡…」

「リビアでの内戦が活発化。中には少年兵の姿も…」

「ワシントン州を立った旅客機が太平洋上で行方不明。乗客121人の安否は今も不明…」

「インフルエンザワクチンの精製に目処立たず…」

「政府は具体的な対応策を提示しないままで…」

「鬱病患者の急増が原因か。自殺率は例年の2倍との報告が…」

「失業者の増加傾向が著しく。また貧困層の割合が…」

「地球外生命体を信じるという人の割合は全体の68%…」

「先々週公開された少年少女の犯行グループの顔写真に批判が相次いでおり…」

「未成年者の保護はないも同然かのようにですね…」

「明かりの消えたニューヨーク。その街の実体に迫る!?」

「現在日本においての大豆や肉類の輸入が減少しつつあり…」

「1年前までやっていたフライングマトリョーシカの話などバカバカしくてやってられないですよ」

「それにしてもこの先、世界はどうなるのでしょうか。我々は新たな世界、変わりゆく世界を見なければならないのでしょうか?」
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『NTTがネットワークの不具合報告を発表し…』

ピッ

手に持ったリモコンでテレビを消す。ここ最近、憂鬱になりそうなニュースしかやっていない。

「……休めた気がしない」

今は日本にある我が家にいるのだが、最近物騒なのも相まって休めた気がまったくしない。

「勘弁してほしいのはこっち。ある日突然こうなったんだから…嫌だよ?」

ヒカルはそう言うとこちらを見る。こちらの世界の住人からしたらたまったものではないだろう。

「そうだよな。なんか悪い」

「ハァ、まぁなんか面白いことが増えたしいいよ」

面白いことか。俺はこの世界に来る前に望んでいたことだ。果たしてこれが面白いのか

俺にはまだ分からなかった。



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