143 / 237
第119話 香港襲撃事件(6)
しおりを挟む
2022年8月12分 現地標準時
午前10時30分
中華人民共和国 香港 油麻地 衛理道
_________________
「身に纏う雰囲気が変わった…さしずめ、覚悟はできたと言ったところか…」
ストレイターは独り言のようにそう言うと大剣を構えなおす。
「来るがいい」
「……」
私はストレイターの言葉に頷く。直後、私は一気にストレイターに距離を詰める。
「はああっ!」
渾身を込めた叫びと共に、ストレイターに斬りかかろうとする。ありとあらゆる剣技を使わねば彼には勝てない。
しかし、ストレイターは私の攻撃を防ごうとはせず、代わりにひび割れたコンクリートの地面に大剣を突き立てる。
その瞬間、周囲の地面は割れだしたかと思うと、一斉に土色の、本来あるべき地面が隆起する。
それにより、私の攻撃の勢いは一気に減速する。次なる攻撃の手としてストレイターは大剣を十字に切ったかと思うと、それが光となって私に迫る。
私はその攻撃を剣を前に突き出し、剣技で防ぐ。
「聖なる守り…聖騎士となったか!」
ストレイターは剣を連続で振るうと、それが渦となって不規則に私へと近づいてくる。
「剣の…舞!」
私はそう叫ぶと、技を繰り出す。渦の勢いさえも利用し、剣と己の身体能力のみで渦を華麗に避けながらストレイターへと近づく。
私は剣を薙ぎ払う。ストレイターは大剣で防ぐ。私はそれを見越して、素早く立ち回ろうとする。
(正面、側面、背面…とにかく隙を作らないと…!)
剣は私の魔法によって色合いが変化しだす。
赤い炎、氷の青、雷の黄、効果的なダメージをどうにか与えようと最大限、教えられてきた剣技を打ち込む。
ストレイターは大剣を振り回しながら私の攻撃を防ごうとするが、その一部は鎧へと辿り着いている。このまま攻撃を続けようとするが。
おもむろにストレイターは近くの放置された乗用車のパンパー部分を凄まじい握力で掴んだかと思うと、それを持ち上げる。
その光景に一瞬の戦慄を覚えた瞬間、乗用車をこちらへと思いっ切り投げつけられる。
咄嗟に剣を振るい、その車を正面で真っ二つにする。2つに分かれた車はそのまま地面を擦りながら高速道路の壁へとぶつかる。
「ぬわあっっ!!」
ストレイターは続けて車を投げる。今度はその状況をしっかりと理解できているため、車を避け、天高く飛ぶ。
私は勢いのまま、空中を突き進みながらストレイターへと向かう。
大剣では防げない。私はそう確信しながら、ストレイターの背後を取り、一閃。
そのまま、次なる剣技。なめらかな剣捌きで相手に多大なる衝撃と裂傷を与える、
[波浪斬り]。剣がぐにゃりとならなければできない挙動。連撃に力を込め、ストレイターを倒そうとする。
大剣のリーチは既に見切っており、ストレイターは強大な青い炎を纏わせた大剣を私の動きに合わせて振るうが、一段早くそれら全てを避けていく。
(このまま…押し切らないと…!)
ストレイターの表情は変わらない。笑いもしなければ憤ったり、悲しむわけでもない。ただ虚構、空っぽの器に魂が入っているだけかのようだ。
ストレイターは大剣を振るうのをやめる。直後、大剣は黒い瘴気を纏いながら、やがて塊へと変化したかと思うと、一瞬で両刃斧へと変化する。
私は両刃斧と大剣とのリーチの違いに対応できず、あえなく真っ二つになりそうになる。
かろうじて身を躱したが、両刃斧の姿ではなく、今度は長槍となって私へと襲いかかる。
「ふふふっ!どうだ!この魔導具の力!変化する武器に付いてこれるか!?」
「……っ!」
これがストレイターの本気かと内心思いながらも今度は防御に徹するしかない。その間にも武器の形状は変化する。今度は長槍ではなく、こん棒。鬼が持つような刺々しく、金属でできた巨大なそれが剣で防ぎきれるか確証がない。
こちらの剣が折れた瞬間、勝負はついてしまう。私はその攻撃を剣を使わず、ただ避けることしかできないということになる。
私は片膝を付きながら、車の天井へとのる。ストレイターはこん棒を車のバンパー部分に思いっ切り叩きつけるように振ると、車は衝撃のあまり後方部分が浮き上がる。
浮き上がる反動によってバネのように跳ねた私の体をストレイターの武器が襲う。こん棒から長槍へと変化したかと思うと、その矛先を宙に浮いた私へとマークしている。
「あの世へ行くがよい…!」
ストレイターの叫びが聞こえた時、私の視界は真っ暗になった。
_________________
-中華人民共和国 香港 油麻地 ビル倒壊地-
「アナリスとキルアってこの変だよな!?」
「GPSが何一つとして機能してないが…多分ここら辺に吹き飛んでたはず!」
俺は瓦礫だらけの惨状を見渡しながら、先を行く。右側にどうやら大きく開けている場所があるらしいが、あいにく瓦礫で見れない。
身を乗り出そうとしたが、僅かに左を行った場所には瓦礫がなかったため、そこから何か見えるかもしれない。
俺はそこへと走って向かう。ヒカルもどうやら何も見つけられなかったらしく、俺に付いて来る。
「……っ!!!」
そこにいたのは人間だ。この惨状でよく生きれたものだと思ったが、その服装はまるっきり軍人を思わせる迷彩服を着ている。
「なっ!?SDU!?」
俺は声に出さなかったが、ヒカルがその部隊の呼称らしきものを発したことで、こちらに視線が集まる。
「おい!見つかったぞ!」
「あっ……すまん」
「おいお前達何者だ!?」
特殊部隊は俺達に銃を構えた。
午前10時30分
中華人民共和国 香港 油麻地 衛理道
_________________
「身に纏う雰囲気が変わった…さしずめ、覚悟はできたと言ったところか…」
ストレイターは独り言のようにそう言うと大剣を構えなおす。
「来るがいい」
「……」
私はストレイターの言葉に頷く。直後、私は一気にストレイターに距離を詰める。
「はああっ!」
渾身を込めた叫びと共に、ストレイターに斬りかかろうとする。ありとあらゆる剣技を使わねば彼には勝てない。
しかし、ストレイターは私の攻撃を防ごうとはせず、代わりにひび割れたコンクリートの地面に大剣を突き立てる。
その瞬間、周囲の地面は割れだしたかと思うと、一斉に土色の、本来あるべき地面が隆起する。
それにより、私の攻撃の勢いは一気に減速する。次なる攻撃の手としてストレイターは大剣を十字に切ったかと思うと、それが光となって私に迫る。
私はその攻撃を剣を前に突き出し、剣技で防ぐ。
「聖なる守り…聖騎士となったか!」
ストレイターは剣を連続で振るうと、それが渦となって不規則に私へと近づいてくる。
「剣の…舞!」
私はそう叫ぶと、技を繰り出す。渦の勢いさえも利用し、剣と己の身体能力のみで渦を華麗に避けながらストレイターへと近づく。
私は剣を薙ぎ払う。ストレイターは大剣で防ぐ。私はそれを見越して、素早く立ち回ろうとする。
(正面、側面、背面…とにかく隙を作らないと…!)
剣は私の魔法によって色合いが変化しだす。
赤い炎、氷の青、雷の黄、効果的なダメージをどうにか与えようと最大限、教えられてきた剣技を打ち込む。
ストレイターは大剣を振り回しながら私の攻撃を防ごうとするが、その一部は鎧へと辿り着いている。このまま攻撃を続けようとするが。
おもむろにストレイターは近くの放置された乗用車のパンパー部分を凄まじい握力で掴んだかと思うと、それを持ち上げる。
その光景に一瞬の戦慄を覚えた瞬間、乗用車をこちらへと思いっ切り投げつけられる。
咄嗟に剣を振るい、その車を正面で真っ二つにする。2つに分かれた車はそのまま地面を擦りながら高速道路の壁へとぶつかる。
「ぬわあっっ!!」
ストレイターは続けて車を投げる。今度はその状況をしっかりと理解できているため、車を避け、天高く飛ぶ。
私は勢いのまま、空中を突き進みながらストレイターへと向かう。
大剣では防げない。私はそう確信しながら、ストレイターの背後を取り、一閃。
そのまま、次なる剣技。なめらかな剣捌きで相手に多大なる衝撃と裂傷を与える、
[波浪斬り]。剣がぐにゃりとならなければできない挙動。連撃に力を込め、ストレイターを倒そうとする。
大剣のリーチは既に見切っており、ストレイターは強大な青い炎を纏わせた大剣を私の動きに合わせて振るうが、一段早くそれら全てを避けていく。
(このまま…押し切らないと…!)
ストレイターの表情は変わらない。笑いもしなければ憤ったり、悲しむわけでもない。ただ虚構、空っぽの器に魂が入っているだけかのようだ。
ストレイターは大剣を振るうのをやめる。直後、大剣は黒い瘴気を纏いながら、やがて塊へと変化したかと思うと、一瞬で両刃斧へと変化する。
私は両刃斧と大剣とのリーチの違いに対応できず、あえなく真っ二つになりそうになる。
かろうじて身を躱したが、両刃斧の姿ではなく、今度は長槍となって私へと襲いかかる。
「ふふふっ!どうだ!この魔導具の力!変化する武器に付いてこれるか!?」
「……っ!」
これがストレイターの本気かと内心思いながらも今度は防御に徹するしかない。その間にも武器の形状は変化する。今度は長槍ではなく、こん棒。鬼が持つような刺々しく、金属でできた巨大なそれが剣で防ぎきれるか確証がない。
こちらの剣が折れた瞬間、勝負はついてしまう。私はその攻撃を剣を使わず、ただ避けることしかできないということになる。
私は片膝を付きながら、車の天井へとのる。ストレイターはこん棒を車のバンパー部分に思いっ切り叩きつけるように振ると、車は衝撃のあまり後方部分が浮き上がる。
浮き上がる反動によってバネのように跳ねた私の体をストレイターの武器が襲う。こん棒から長槍へと変化したかと思うと、その矛先を宙に浮いた私へとマークしている。
「あの世へ行くがよい…!」
ストレイターの叫びが聞こえた時、私の視界は真っ暗になった。
_________________
-中華人民共和国 香港 油麻地 ビル倒壊地-
「アナリスとキルアってこの変だよな!?」
「GPSが何一つとして機能してないが…多分ここら辺に吹き飛んでたはず!」
俺は瓦礫だらけの惨状を見渡しながら、先を行く。右側にどうやら大きく開けている場所があるらしいが、あいにく瓦礫で見れない。
身を乗り出そうとしたが、僅かに左を行った場所には瓦礫がなかったため、そこから何か見えるかもしれない。
俺はそこへと走って向かう。ヒカルもどうやら何も見つけられなかったらしく、俺に付いて来る。
「……っ!!!」
そこにいたのは人間だ。この惨状でよく生きれたものだと思ったが、その服装はまるっきり軍人を思わせる迷彩服を着ている。
「なっ!?SDU!?」
俺は声に出さなかったが、ヒカルがその部隊の呼称らしきものを発したことで、こちらに視線が集まる。
「おい!見つかったぞ!」
「あっ……すまん」
「おいお前達何者だ!?」
特殊部隊は俺達に銃を構えた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる