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第90話 ワシントン(3)

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ベヒーモスの皮膚が割れる。そもそも皮膚というものは割れるものなのかと思いたくなるがそういうものだと自己に認識させる。

だがここにきてマンホールも限界がきたのか2つに大きく割れる。

「あそこ攻撃すれば」

俺はベヒーモスの割れた皮膚を指差してそう言う。

「分かって…よし逃げよう」

「はあ!?」

アナリスは何故か逃げることを提案しだす。
ここにきてか?そんなことを悟ったのかアナリスは

「後ろ」

と言う。一斉に一同が振り向くと

そこにいたのは[SWAT]という文字が書かれたゴツそうな服を着ている人達。その姿は俺達を攫った奴らとひどく似ている。

「ひっ…まさか…」

カノンが珍しく怯える。どうやら攫われた時の記憶が蘇ったらしい。その後俺達は一斉に逃げ出した。

幸いにもベヒーモスは今またびっくり返っている状態だったので簡単に道路へと抜け出せた。

「SWATか。勝てるかな」

「ヒカル、SWATって?」

「アメリカ合衆国特殊警察隊、大事時には大抵いる人達って考えればいい」

そんな人達は今現在公園の中に入って素早い動きでベヒーモスを囲む。

そして隊長格の男が手を上から下へと振り下げると

ダダダダダダ!!!

一斉に持っている銃から弾が撃ち出される。それは全てベヒーモスへと命中するがベヒーモスはそれほど効いてないのか普通の動作で立ち上がると

SWAT隊員のもとに突進を繰り出す。

「なっ!のわぁぁ!!」

SWAT隊員はかろうじて避けるがベヒーモスは木をなぎ倒しながら突き進む。とまたしても川の前で止まる。

とここで何故か俺の頭に電流が走るような感覚が、あるアイデアが思いついた。

「ねえ、あいつ川…泳げないとかじゃない?」

「え?……ああ!そういうことか!」

ヒカルは納得の声を上げる。

「あいつをアナリスの空中浮遊と運動変化。の魔法で吹き飛ばせないか?」

「え?空中浮遊なら簡単だけど運動変化はやろうと思えばできるけど重すぎる
からそれなりの時間がいる」

アナリスの言いたいことは分かった。SWAT隊員が今現在奮闘中なのだ。

「距離を保て!」

SWAT隊員の怒号と銃声が響き渡る。ベヒーモスは銃弾をかわすことなく突進する。今度は木に衝突して止まる。どうやら勢いが足りなかったらしい。

「これは彼らじゃあ無理だね。やっぱりスパイダーマンの容量で…いや待て」

ヒカルは何やら思いついたようで勝ち誇った顔をしていた。
_________________
「撤退だ!撤退しろ!撤退!」

隊長の声が響く。銃弾がろくに効かないやつへの対処が思いつかないようだ。それはここにいるSWAT隊員全員に言えることだ。第二次世界大戦以降、最も製作に成功したMP5短機関銃が効かないというのは経験したことのない事態だった。パラベラム弾が欠片を落としながらその巨体で弾かれているのが分かる。


緊急用のマニュアルがクソだというのが身に沁みて分かる。ニューヨークの化け物用に作られたらしいが、大体ニューヨークの化け物には俺達に敵わないことくらい分かるだろう。

SWATはここに来るために乗った輸送車へと向かい、全員足を止める。

やがて一人の隊員が口を開く。

「こ、ここに止めてあったはずだ」
_________________
「おらあああ!」

アナリスの本性がだいぶ明らかになるような声がする。空中浮遊と運動変化の魔法、おそらくその辺りの魔法を使って先程そこに止めてあったSWATの車両を1台、2台と木に突っ掛かったベヒーモスにぶつける。

ベヒーモスは1台目がぶつかって怯み、2台目がぶつかって大きく弾ける。

「まだ足りないか…いや大丈夫!」

アナリスはそう言って俺達が盗み、乗ってきたタクシーを列になって浮かぶSWAT車両に向けて凄まじい速度でぶつける。

ベヒーモスはあの重そうな巨体を浮かしたあと、そのまま物理法則にならって

川へと落ちた。

ドボン!と言う水面が弾ける音、ベヒーモスは水に入ったことに気づいたのか手足をバタバタとさせる。

その体が完全に見えなくなるまでにそう時間はいらなかった。

「…最初からこうすればよかったんじゃあ」

俺は安心しきってそう言った時、上空を警察のヘリコプターが通過した。

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