上 下
81 / 237

第76話 アフリカ動乱(5)

しおりを挟む
2022年 8月8日 西アフリカ標準時
午後2時6分 
ギニア湾 UN運用 ワスプ級強襲揚陸艦
_________________
「ナイジェリア北部に向かわせた部隊をすぐに向かわせろ」

「現地での飛行許可が降りました。戦闘機発進可能です」

「F-35Bをすぐに現地へ。何か情報はないのか?」

「フライトに問題なし」

「到着予定は?あと何分かかる?怪我人と死者は?」

「衛生映像きました!」

「部隊との連絡が途絶!」

騒がしい艦内の中、アルフレッド オルン少将は国連管轄の強襲揚陸艦の名を借りた艦艇の司令室でテキパキと業務をこなしていた。

衛生からきたのは雲のないところで砂嵐が吹き荒れている映像。

「嵐か?あれは?」

「何故嵐が!?」

「ブラックホーク、全機墜落!」

オルンは黙って映像を見ている。現地で何が起きているのを知りたかった。そして…

「この艦に置いてある戦闘機を全て発進!現地へ向かわせろ!すぐにだ!」

「了解!」

「全機スクランブル発進だ!」
____________________
「戦闘機がこっちに向かってる!」

ボロボロに壊れた民家のような建物。そこに身を隠した俺達に朗報が飛び込む。ロイドが嬉しそうな顔でそう言ったのだ。

「ライトニングならあいつだって…」

ハミルトンが同じく嬉しそうな顔でそう言うが俺、いやクリスとマキシモフは微妙そうな顔をしている。

「どうかな…うまくいくといいが…」

クリスがカッコつけるようにそう言った。傍から見れば渋いイケメンだからそう見えるだけかもしれないが。

マキシモフは先程からチラチラと外の様子を伺っている。

「マキシモフ。リトルバードは?」

「俺達が逃げる時間を稼いでる間に…墜落したんだろうな。見えないから」

……静寂がやってくる。戦闘機の到着、応援部隊の到着はいつだろうか。とその時全員の無線が鳴る。

『こちら司令部。聞こえるか?応答願う。繰り返すこちら司令部』

「こちらストライカー01のアレックス。聞こえるぞ」

『ストライカー01。現在の状況を詳細に』

「他の部隊は全滅。見たところ我々しか生き残りはいない。パイロットも2名死亡した。現在民家に隠れてる」

『了解。敵の特徴と現在位置を把握できるか?』

「敵の特徴は…限りなく人間だ。青い髪で。ただ耳が長くて、あと念動力を使う」

『念動力?』

「物を持ち上げたり、風を起こしたり。手を使わなくてそれらを。敵の現在位置は現在不明」

『…なるほど。戦闘機の到着は残り5分だ。それまでそこに待機してくれ。衛星映像を使って奴を叩きのめしてやる』

「分かった了解」

俺はそう言うと武器を確認する。M4の弾薬は僅かになっていた。当然だ。なにせここまでの激戦を想定していないのだから。

「到着予定は5分。それまで見つかったらいけないんですよね?」

ハミルトンが俺に確認するかのようにそう聞いてくる。

「そうだ。銃が効かない以上、見つかったら一方的にやられてしまう」

「けどまだこいつは試してないぜ」

クリスはそう言うと腰に下げてあった楕円形の…マークII手榴弾を取り出す。

「まあおそらく効かないだろうが。あいつ一体なんなんだ…」

クリスは壁にもたれかかりながら足を伸ばして座。、そのまま顔を下げる。一体なんなんだ、それはおそらくこの場にいる全員が思っていることであろう。

「アレク。サソリの時と状況が違いすぎるぜ」

「サソリはもしかしたら弱かったのかもな」

「でもアフガンの基地じゃあ10何人だっけか?そのくらい死んでるんだろ?」

マキシモフが話に割り込んでくる。

「18人。若い兵士も中にはいた」

「そうか…すまねぇな」

マキシモフはそう言うと再び外の様子を伺いだす。こういう時の5分は長いと俺は実感した。

戦闘機のブオーという音が遠くから聞こえたことで俺達は一斉にその音の方に顔を向けていた。と同時に無線が鳴り出す。

『衛星で奴の姿を捉えた。今から攻撃する。衝撃に備えろ』

直後に4機のF-35Bが上空を通り過ぎていく。

















しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

わし七十歳定年退職者、十七歳冒険者と魂だけが入れ替わる ~17⇔70は地球でも異世界でも最強です~

天宮暁
ファンタジー
東京郊外で定年後の穏やかな生活を送る元会社員・桜塚猛(さくらづかたける)、70歳。 辺境の街サヴォンに暮らす万年D級冒険者ロイド・クレメンス、17歳。 冒険者ランク昇格をかけて遺跡の奥に踏み込んだロイドは、東京・桜塚家で目を覚ます。 一方、何事もなく眠りについたはずの桜塚猛は、冒険者の街サヴォンの宿屋で目を覚ました。 目覚めた二人は、自分の姿を見て驚愕する。ロイドはまったく見覚えのない老人の身体に、桜塚は若く精悍な冒険者の身体に変わっていたのだ。 何の接点もなかったはずの二人の意識が、世界を跨いで入れ替わってしまったのだ! 七十歳が十七歳に、十七歳が七十歳に―― いきなり常識の通じない「異世界」に放り出された二人の冒険が、今始まる! ※ 異世界、地球側並行で話が進みます。  完結まで毎日更新の予定です。  面白そう!と思ってもらえましたら、ご応援くださいませ。

勇者現代へ帰る。でも、国ごと付いてきちゃいました。

Azanasi
ファンタジー
突然召喚された卒業間近の中学生、直人 召喚の途中で女神の元へ……女神から魔神の討伐を頼まれる。 断ればそのまま召喚されて帰るすべはないと女神は言い、討伐さえすれば元の世界の元の時間軸へ帰してくれると言う言葉を信じて異世界へ。 直人は魔神を討伐するが帰れない。実は魔神は元々そんなに力があるわけでもなくただのハリボテだった。そう、魔法で強く見せていただけだったのだが、女神ともなればそれくらい簡単に見抜けるはずなおだが見抜けなかった。女神としては責任問題だここでも女神は隠蔽を施す。 帰るまで数年かかると直人に伝える、直人は仕方なくも受け入れて現代の知識とお買い物スキルで国を発展させていく ある時、何の前触れもなく待望していた帰還が突然がかなってしまう。 それには10年の歳月がかかっていた。おまけにあろうことか国ごと付いてきてしまったのだ。 現代社会に中世チックな羽毛の国が現れた。各国ともいろんな手を使って取り込もうとするが直人は抵抗しアルスタン王国の将来を模索して行くのだった。 ■小説家になろうにも掲載

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

私(僕)達は同じ過ちを繰り返さないために・・・

ちょこあいす
ファンタジー
世界中で起きた異変 バケモノがはびこる世界 必死に生き延びる人達 命のやり取りが当たり前の世界 不定期更新なので気長に待ってください

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家
ファンタジー
 科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。  実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。  無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。  辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

百花繚乱 〜国の姫から極秘任務を受けた俺のスキルの行くところ〜

幻月日
ファンタジー
ーー時は魔物時代。 魔王を頂点とする闇の群勢が世界中に蔓延る中、勇者という職業は人々にとって希望の光だった。 そんな勇者の一人であるシンは、逃れ行き着いた村で村人たちに魔物を差し向けた勇者だと勘違いされてしまい、滞在中の兵団によってシーラ王国へ送られてしまった。 「勇者、シン。あなたには魔王の城に眠る秘宝、それを盗み出して来て欲しいのです」 唐突にアリス王女に突きつけられたのは、自分のようなランクの勇者に与えられる任務ではなかった。レベル50台の魔物をようやく倒せる勇者にとって、レベル100台がいる魔王の城は未知の領域。 「ーー王女が頼む、その任務。俺が引き受ける」 シンの持つスキルが頼りだと言うアリス王女。快く引き受けたわけではなかったが、シンはアリス王女の頼みを引き受けることになり、魔王の城へ旅立つ。 これは魔物が世界に溢れる時代、シーラ王国の姫に頼まれたのをきっかけに魔王の城を目指す勇者の物語。

怠惰の魔王

sasina
ファンタジー
 年齢一桁で異世界転移してしまった天月 鈴。  運良く拾ってもらい、10年間育てられる。  ある日、この異世界イデアが違う世界と繋がってしまい、その繋がってしまった世界と言うのが10年前の地球だった。  折角、繋がったので懐かしの地球に行ってみると、世界の強制力か、体も10年前の姿に戻ってしまった。

処理中です...