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その日世界は変わった in 異世界(4)
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「お疲れ様です。この調子なら毒も早く治るでしょう」
俺は返事する気力もないままにヘタレこむ。もう何もしたくなかった。
「皆さん疲れるのが少し早いと思いますけど…まぁ戻りましょうか」
俺はその言葉を待ってたとばかりに立ち上がった。
全員でベッドに戻る途中、ダートと会った時は気にしなかったある1つの像がふと目に入る。
「これ気になりますか?」
俺の視線でわかったのかキュウイがそう聞いてくる。
「何ですか?この像は」
「この魔法省が設立された当時に建設されたとか…確か偉大なる先人って人らしいです」
「偉大なる先人?それって原子消滅戦争を止めた?」
「正確には言語をまとめる翻訳という魔法を創って言語間での入れ違いをなくしただけらしいです。あと彼の後継者が魔法省を設立したのでこの像が造られたのだとか」
「へえ」
「そう言えばあなたって王女を捜索してたんですよね?」
「え、そうですけど」
「……行方不明でまだ見つかっていないんですよね?」
「そう…ですよ?」
「実は…先日私の両親から手紙がきたんです」
「手紙?」
「フィンさんにも見せたんですけど…これです」
そこに書いてあったことはこうだ。
---------------------
世界各国に張り巡らされている結界と行方不明者及び魔王の消滅について
魔法省本部より伝言として世界各国の王族及び貴族へ文言を送る。18歳以上の家族全員に確認をとらせることとする。
魔王がいなくなったことは世界にとってかなり喜々とするばかりであるというわけにはいかない。それにより不必要となった結界の処遇について。結界は魔物の存在を遠ざける優れたものであるが、人的予算及び資材的予算の荷重により拡張を断念する国も現れたことで当時世界のバランスはとれていた。
しかし魔王がいなくなった今、危険性の高い王国が結界を解除し、独自の生産性を整えつつあることが魔法省の諜報により発覚している。
この策についての議論を行うこととし、何か質疑及び解答があれば近くの魔法省支部に使者を送ることとする。
次に行方不明者と魔王の消滅について
魔王の消滅時と似た事例が同日にヴェルムート王国で3件、クリステル王国で1件確認されている。
全てに共通して大穴が生成され、自然には発生しないことが調査で分かっている。魔法省の上層部は同日の行方不明者は魔王と同じ目にあったという推測は立てており現在魔法省直轄の巫女による調査を行う所存である。
ヴェルムート王国の王族には早急にこのことを伝えるように。
追記 行方不明者は以下のとおり
ヴェルムート王国
王族 カノン ヴェルムート
冒険者 ガイム、アナリス
クリステル王国
職業不明 名前不明
以上4名。質疑があれば近くの魔法省支部に使者を送ることとする。
魔法大臣の名においてこれを文言とする。
---------------------
「世界同時多発行方不明事件。人間や魔物に関係なく忽然と姿を消す。跡に残るのはポッカリと空いた大穴だけ。エルフの国ではそう言われてるらしいです」
「忽然か…て待ってくれ!こいつは!」
俺は平然と進めようと思ったがそうはいかない。ガイムっていう奴は俺と同じアパートに住んでいた男のことだ。
「一応聞くけどここにいる人達は全員行方不明なんだよな?」
「そうですね。何かの事件事故に巻き込まれた…のでしょうか?でもアナリスさんが巻き込まれるなんて信じられないです」
「アナリスさん???」
「さっきのリストにいた人ですよ。賢者って呼ばれてる」
「ああ賢者か」
賢者という名くらいは聞いたことある。だからと言って知り合いでもないから微妙な反応となってしまう。
「私彼女と知り合いだったんですよ。彼女意外と抜けてるところがあるから」
「賢者なのにか…てか…いやいいや」
てかの続きはキュウイに何か言われそうだから言わないようにした。彼女という言葉、俗に言う女性だと知って驚いたということを。
「そろそろ戻りましょう」
キュウイはそう言うとスタスタと歩き出した。
そして翌日、翌々日と時は過ぎていった。俺の体はすっかり本調子へと戻ったようだ。
「もう大丈夫です。お疲れ様でした」
キュウイは表情をあまり変えずに労いの言葉を掛けてくれる。しかし何だか嬉しそうな顔だ。
「あ、ありがとうございます。おかげ様というか…ワニのやつはなくてもよかったですけど」
「助かったからいいじゃないですか。たまに食べられる人だっているんですから」
「え?何?」
これは…言わなきゃよかったと思った。食べられる=死ぬをそんな簡単に言ってもらっては困る。
「何はともあれですよ」
キュウイは結果良ければ全て良いではないかというのが顔に表れながらそう言ってくれた。
「は、ははっ」
苦笑しかできない。だがこういう別れもいいかもなと思う。
「あっそうだ。世界が…その平和になるといいですね!」
俺は彼女に励ましというかそういう類の言葉を掛けたつもりだった。けど彼女は俯いてしまう。
「…ありがとうございます。そうですね。魔王がいない…世界が平和…。でも無理です。分かるんです私には。人間って言うのは争いをしなければ成長しないことくらい。原子消滅戦争だけじゃない。エルフやドワーフ、竜人や魔族との戦争も…多分これからも変わらないことくらい…すみません別れだって言うのに」
「あ、えっと…すみませんなんだがその…」
「謝ることないです。それじゃあエイトさん、お元気で」
キュウイはそう言うと魔法省のレンガ造りの建物の中に去っていった。
俺は初めて彼女に自分の名前を呼ばれたなァと心の中で喜んだ。
俺は返事する気力もないままにヘタレこむ。もう何もしたくなかった。
「皆さん疲れるのが少し早いと思いますけど…まぁ戻りましょうか」
俺はその言葉を待ってたとばかりに立ち上がった。
全員でベッドに戻る途中、ダートと会った時は気にしなかったある1つの像がふと目に入る。
「これ気になりますか?」
俺の視線でわかったのかキュウイがそう聞いてくる。
「何ですか?この像は」
「この魔法省が設立された当時に建設されたとか…確か偉大なる先人って人らしいです」
「偉大なる先人?それって原子消滅戦争を止めた?」
「正確には言語をまとめる翻訳という魔法を創って言語間での入れ違いをなくしただけらしいです。あと彼の後継者が魔法省を設立したのでこの像が造られたのだとか」
「へえ」
「そう言えばあなたって王女を捜索してたんですよね?」
「え、そうですけど」
「……行方不明でまだ見つかっていないんですよね?」
「そう…ですよ?」
「実は…先日私の両親から手紙がきたんです」
「手紙?」
「フィンさんにも見せたんですけど…これです」
そこに書いてあったことはこうだ。
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世界各国に張り巡らされている結界と行方不明者及び魔王の消滅について
魔法省本部より伝言として世界各国の王族及び貴族へ文言を送る。18歳以上の家族全員に確認をとらせることとする。
魔王がいなくなったことは世界にとってかなり喜々とするばかりであるというわけにはいかない。それにより不必要となった結界の処遇について。結界は魔物の存在を遠ざける優れたものであるが、人的予算及び資材的予算の荷重により拡張を断念する国も現れたことで当時世界のバランスはとれていた。
しかし魔王がいなくなった今、危険性の高い王国が結界を解除し、独自の生産性を整えつつあることが魔法省の諜報により発覚している。
この策についての議論を行うこととし、何か質疑及び解答があれば近くの魔法省支部に使者を送ることとする。
次に行方不明者と魔王の消滅について
魔王の消滅時と似た事例が同日にヴェルムート王国で3件、クリステル王国で1件確認されている。
全てに共通して大穴が生成され、自然には発生しないことが調査で分かっている。魔法省の上層部は同日の行方不明者は魔王と同じ目にあったという推測は立てており現在魔法省直轄の巫女による調査を行う所存である。
ヴェルムート王国の王族には早急にこのことを伝えるように。
追記 行方不明者は以下のとおり
ヴェルムート王国
王族 カノン ヴェルムート
冒険者 ガイム、アナリス
クリステル王国
職業不明 名前不明
以上4名。質疑があれば近くの魔法省支部に使者を送ることとする。
魔法大臣の名においてこれを文言とする。
---------------------
「世界同時多発行方不明事件。人間や魔物に関係なく忽然と姿を消す。跡に残るのはポッカリと空いた大穴だけ。エルフの国ではそう言われてるらしいです」
「忽然か…て待ってくれ!こいつは!」
俺は平然と進めようと思ったがそうはいかない。ガイムっていう奴は俺と同じアパートに住んでいた男のことだ。
「一応聞くけどここにいる人達は全員行方不明なんだよな?」
「そうですね。何かの事件事故に巻き込まれた…のでしょうか?でもアナリスさんが巻き込まれるなんて信じられないです」
「アナリスさん???」
「さっきのリストにいた人ですよ。賢者って呼ばれてる」
「ああ賢者か」
賢者という名くらいは聞いたことある。だからと言って知り合いでもないから微妙な反応となってしまう。
「私彼女と知り合いだったんですよ。彼女意外と抜けてるところがあるから」
「賢者なのにか…てか…いやいいや」
てかの続きはキュウイに何か言われそうだから言わないようにした。彼女という言葉、俗に言う女性だと知って驚いたということを。
「そろそろ戻りましょう」
キュウイはそう言うとスタスタと歩き出した。
そして翌日、翌々日と時は過ぎていった。俺の体はすっかり本調子へと戻ったようだ。
「もう大丈夫です。お疲れ様でした」
キュウイは表情をあまり変えずに労いの言葉を掛けてくれる。しかし何だか嬉しそうな顔だ。
「あ、ありがとうございます。おかげ様というか…ワニのやつはなくてもよかったですけど」
「助かったからいいじゃないですか。たまに食べられる人だっているんですから」
「え?何?」
これは…言わなきゃよかったと思った。食べられる=死ぬをそんな簡単に言ってもらっては困る。
「何はともあれですよ」
キュウイは結果良ければ全て良いではないかというのが顔に表れながらそう言ってくれた。
「は、ははっ」
苦笑しかできない。だがこういう別れもいいかもなと思う。
「あっそうだ。世界が…その平和になるといいですね!」
俺は彼女に励ましというかそういう類の言葉を掛けたつもりだった。けど彼女は俯いてしまう。
「…ありがとうございます。そうですね。魔王がいない…世界が平和…。でも無理です。分かるんです私には。人間って言うのは争いをしなければ成長しないことくらい。原子消滅戦争だけじゃない。エルフやドワーフ、竜人や魔族との戦争も…多分これからも変わらないことくらい…すみません別れだって言うのに」
「あ、えっと…すみませんなんだがその…」
「謝ることないです。それじゃあエイトさん、お元気で」
キュウイはそう言うと魔法省のレンガ造りの建物の中に去っていった。
俺は初めて彼女に自分の名前を呼ばれたなァと心の中で喜んだ。
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