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その日世界は変わった in 異世界(3)
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部屋の中は古臭い木造建築を漂わせ、魔法省の一部だとは思わせないような雰囲気だ。
「あなたは倒れたんですよ。肥沃の丘のど真ん中で。もう少しであなたも死んだあなたの仲間と同じ目にあってましたよ」
女はそう言うと俺のベッドの傍まで来る。他にベッドは3つあるがそのいずれにも誰かはいない。
「そもそもオオムカデというのは噛まれても案外気づかないもんなんですよ。不思議なことに…そんな魔物の存在をどうして警戒しなかったんですか?」
女は厳しそうな奴だと俺の勘が言っている。多分めんどくさいやつだ。
「いや、俺達も警戒はしてましたよ。魔力探知で。けど地面まではさすがに」
「……あのオオムカデはかなり地中深くから来たっぽいのでどっちみち警戒してても無駄でしょうね。隊長さんも気づかなかったみたいだし」
「隊長…あ、そうだ俺の冒険者仲間、ダートは?」
「ダートって人かは分かりませんけど、無事な人ならロビーの方にいます。まったくフィンさんがいなかったらどうなってたことか…」
「フィンさん?」
「あなた達を助けてくれた人です」
女はそれ以上は言わなくても分かるだろうとばかりにそこで切り捨てる。その時扉がギーッと開けられる。
「あっ、フィンさん。ロビーで待ってて言ったじゃないですか」
「しかしキュウイさん。吾輩が不覚をとったばかりに彼を傷つけてしまったことが不安でなぁ…おや大丈夫そうではないか?」
「私が魔法陣で治したからですよ。完全に治るまでには時間がかかりますけどね」
「さすがは王国上位に入る治癒師だ」
男ことフィンさんの言ったことを女ことキュウイは無視する。
「あの…俺は出ていったほうがいいっすか?」
「あっ、寝てて結構ですよ」
「あっはい」
「それと費用の方ですけど」
「え!?費用!?」
そう言えば病院では金が必要だということを忘れていた。一体何ゴールド払えばいいのだ?てか金持ってねぇ。
「今回は無料でいいです。別に魔法陣にお金はかからないですから」
「え!?いいんですか!?」
「ええ」
キュウイはさほど気にしてなさそうにそう言う。
フィンとキュウイが出ていってしばらくして俺もロビーに行くことにした。ダートはまだいるのだろうか?
「あ、エイト!お前大丈夫だったか?」
特徴的な縦に長い髪をした男はすぐに見つけることができたし、俺もすぐに見つけられたようだ。
「ダート、まだいてくれたのか、ありがとな」
「まぁな。何せ一時期はマジでやばかったらしいけどあの緑髪のネェちゃんが助けてくれたらしいな」
「ああ、あの人だろ?何でか費用もいらないとか言ってたし」
「え?マジかよ。普通は魔法陣をするだけでも金を分捕るもんなのになあ」
「そうなのか?確かに気にはなっていたが」
「まあここが魔法省だからってのもあんだろ。大抵が善人しかいねぇんじゃないのか?資材とかも世界各国から集められてるみたいだしよ」
俺はダートの言葉に納得しながら話を続ける。
「そーいやお前どうすんの?この後?」
「俺か?ギルドの方に報告だ。王女はいませんでしたってな。あと死んだ仲間達のことも…お前運が良かったよ」
「そうだな」
その後ダートとは短い挨拶を済ませた後俺はベッドに戻った。
その夜ふと物音がして俺は目覚める。多分深夜だろう。何だと思いながら体を起こす。
「あ、すいません。起こしました?」
声からしてキュウイだろう。
「夜の見回りです。最近患者さんの物品を取る輩がいるらしいので」
そうなのかと思いながら俺はふと気になったことを話す。
「あの…なんでお金がタダなんですか?」
「へ?ああ…」
「あ、いや、単純に…なんでかを聞こうと」
「冒険者の人達はよくこのことを言いますよね…ここの資材とかも全部家の物なんですよ。私貴族の娘の端くれなんで」
「え?貴族?」
予想だにしない答えだ。
「魔法省の人間は善い人しかいないとよく思われてますがそれは間違ってます。人によってはバレないようにお金を不当に取ったり、ひどい場合は記憶を消したりとかもありましたね」
「え?そうなんですか!?」
これまた予想だにしなかった。ダート。お前間違っていたぞ。
「だから私はせめて善い人になろうかなぁって。でも世界は…いやいいです」
キュウイは話を終えたとばかりにドアを閉めて出ていった。
そして翌日
「ほらほら頑張ってください。頑張って!」
「なんでだぁ!!!なんでこんなことにぃぃぃ!!!」
俺は巨大ワニに食べられそうになりながら必死に逃げる。他の冒険者も必死に逃げる。
魔法省が管理するヴェルムート王国の平原。俺達はそこに連れられてきていた。見た感じは普通の野草が生い茂った平原だ。
「いいですかぁ!私が魔法陣を行ったからと言って毒が消えるわけではありませんよ!まず体を強くしないと!」
キュウイが柵の外からそう言ってくる。強くする前に死にそうなんだが。俺は死にものぐるいでクソッタ…ワニから逃げた。
「あなたは倒れたんですよ。肥沃の丘のど真ん中で。もう少しであなたも死んだあなたの仲間と同じ目にあってましたよ」
女はそう言うと俺のベッドの傍まで来る。他にベッドは3つあるがそのいずれにも誰かはいない。
「そもそもオオムカデというのは噛まれても案外気づかないもんなんですよ。不思議なことに…そんな魔物の存在をどうして警戒しなかったんですか?」
女は厳しそうな奴だと俺の勘が言っている。多分めんどくさいやつだ。
「いや、俺達も警戒はしてましたよ。魔力探知で。けど地面まではさすがに」
「……あのオオムカデはかなり地中深くから来たっぽいのでどっちみち警戒してても無駄でしょうね。隊長さんも気づかなかったみたいだし」
「隊長…あ、そうだ俺の冒険者仲間、ダートは?」
「ダートって人かは分かりませんけど、無事な人ならロビーの方にいます。まったくフィンさんがいなかったらどうなってたことか…」
「フィンさん?」
「あなた達を助けてくれた人です」
女はそれ以上は言わなくても分かるだろうとばかりにそこで切り捨てる。その時扉がギーッと開けられる。
「あっ、フィンさん。ロビーで待ってて言ったじゃないですか」
「しかしキュウイさん。吾輩が不覚をとったばかりに彼を傷つけてしまったことが不安でなぁ…おや大丈夫そうではないか?」
「私が魔法陣で治したからですよ。完全に治るまでには時間がかかりますけどね」
「さすがは王国上位に入る治癒師だ」
男ことフィンさんの言ったことを女ことキュウイは無視する。
「あの…俺は出ていったほうがいいっすか?」
「あっ、寝てて結構ですよ」
「あっはい」
「それと費用の方ですけど」
「え!?費用!?」
そう言えば病院では金が必要だということを忘れていた。一体何ゴールド払えばいいのだ?てか金持ってねぇ。
「今回は無料でいいです。別に魔法陣にお金はかからないですから」
「え!?いいんですか!?」
「ええ」
キュウイはさほど気にしてなさそうにそう言う。
フィンとキュウイが出ていってしばらくして俺もロビーに行くことにした。ダートはまだいるのだろうか?
「あ、エイト!お前大丈夫だったか?」
特徴的な縦に長い髪をした男はすぐに見つけることができたし、俺もすぐに見つけられたようだ。
「ダート、まだいてくれたのか、ありがとな」
「まぁな。何せ一時期はマジでやばかったらしいけどあの緑髪のネェちゃんが助けてくれたらしいな」
「ああ、あの人だろ?何でか費用もいらないとか言ってたし」
「え?マジかよ。普通は魔法陣をするだけでも金を分捕るもんなのになあ」
「そうなのか?確かに気にはなっていたが」
「まあここが魔法省だからってのもあんだろ。大抵が善人しかいねぇんじゃないのか?資材とかも世界各国から集められてるみたいだしよ」
俺はダートの言葉に納得しながら話を続ける。
「そーいやお前どうすんの?この後?」
「俺か?ギルドの方に報告だ。王女はいませんでしたってな。あと死んだ仲間達のことも…お前運が良かったよ」
「そうだな」
その後ダートとは短い挨拶を済ませた後俺はベッドに戻った。
その夜ふと物音がして俺は目覚める。多分深夜だろう。何だと思いながら体を起こす。
「あ、すいません。起こしました?」
声からしてキュウイだろう。
「夜の見回りです。最近患者さんの物品を取る輩がいるらしいので」
そうなのかと思いながら俺はふと気になったことを話す。
「あの…なんでお金がタダなんですか?」
「へ?ああ…」
「あ、いや、単純に…なんでかを聞こうと」
「冒険者の人達はよくこのことを言いますよね…ここの資材とかも全部家の物なんですよ。私貴族の娘の端くれなんで」
「え?貴族?」
予想だにしない答えだ。
「魔法省の人間は善い人しかいないとよく思われてますがそれは間違ってます。人によってはバレないようにお金を不当に取ったり、ひどい場合は記憶を消したりとかもありましたね」
「え?そうなんですか!?」
これまた予想だにしなかった。ダート。お前間違っていたぞ。
「だから私はせめて善い人になろうかなぁって。でも世界は…いやいいです」
キュウイは話を終えたとばかりにドアを閉めて出ていった。
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「ほらほら頑張ってください。頑張って!」
「なんでだぁ!!!なんでこんなことにぃぃぃ!!!」
俺は巨大ワニに食べられそうになりながら必死に逃げる。他の冒険者も必死に逃げる。
魔法省が管理するヴェルムート王国の平原。俺達はそこに連れられてきていた。見た感じは普通の野草が生い茂った平原だ。
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