上 下
47 / 237

第46話 ヴュルツブルクの戦い(2)

しおりを挟む
「ゴブリン、オーク。そして…あとは何 だ?アナリス」

「ヒカルがなんで分かるんだよ」

「え?お前らの世界でもそう呼ぶのか。じゃああれはダンジョンだったり?」

「マジか。当たってるよ」

ヴュルツブルクは俺達がいた街並みと似ていてまるで俺達がもとの世界で突如として現れたダンジョンを攻略しようとしている図に見える。だが俺はダンジョンに入ったことはなく、名前だけは知っている程度だ。

「あの中には何かあったりするのか?」

「魔物の中枢が潜んでいて…」

そこまで言った時だ。拳銃の発砲音が辺りに響く。咄嗟に俺達は地面にしゃがみ込んでその音がした方を見ると警察官二人がパトカーの影に隠れて魔物達に銃を向け、発砲している。二人共相当焦っているのか一番近い魔物に向けて手当たり次第に発砲している。

撃たれた魔物ことゴブリン、緑色で耳が尖った例のアレは緑色の体液を出しながら倒れる。だがそのことが刺激となったのかそれまでは自由奔放だった魔物達は一斉に警察官の方へと向かう。

警察官二人もマガジン内の弾丸がなくなったのか急いでマガジンを入れ替えようとするが、その間に魔物達はどんどん近づいてくる。

そして再び銃を向けた時には目の前には人間大の魔物のオーク、茶色味を浴びた毛皮をし、豚を人間化したようなその怪物は手に持った斧を振り落とす。

警察官達は咄嗟に躱して難を逃れたがオークの一撃によりパトカーの天井は潰され、座席に無造作に散らばる。警察官二人は敵わないと悟ったのか走って逃げ出す。というか拳銃で倒せないほどのゴブリンがパトカーの影から飛び出しているからこの判断は当然である。

そして俺達は警察官二人に気を取られ、後ろにいた一つ目の灰色の巨人に気がつかなかった。その巨人はダンジョンのトンネルに入るギリギリのサイズであり、手にはその巨体に見合った大きくてゴツゴツした鉄のこん棒を持っている。

「危ない!」

アナリスが何かの魔法で巨人の動きを止める。そしてアナリスが手を横に振るとその巨人は地面へバターンと音をたてて倒れる。

「まずいなぁ。カノン今から装備出すよ![物体召喚]!」

アナリスはそう言うとカノンがニューヨークでつけていたソードベルト(そう言えばいつの間にかつけていなかったな)と鎧を目の前に出現させる。

「鎧着てる暇ないから剣だけで今はお願い。とりあえず襲ってくるやつは全部倒す、いいね!?」

「あわわ…あたしどうすれば」
「アナリス、奴らの弱点とかある?なければ目を狙う」
「ちょっ!?俺はどうすればいいのさ?」

「ガイムは下位魔法で援護して。[炎]くらい出せるでしょ!?ゴブリンやオークになら効くからよろしく。あと奴らに弱点はないし、目を撃っても復活するから足を撃って」

「了解。足を狙うのね」
「下位魔法が効くか分からないけどやってみる」
「えーい、こうなればヤケクソだあ!あたしだって大盗賊って言われてるんだよ!」
「巨人は私に任せてください」

かくして戦闘は始まった。まずヒカルは手際よくゴブリンの足に狙いを定め発泡する。ゴブリンはバランスを崩し、地面へと倒れる。

カノンは[物体収集]で預かってもらっていた剣を使い、巨人の腕を斬り刻んでいく。

アナリスは巨大な炎の玉を手の平に造り、それをダンジョンの方に向けて撃つ。炎はうねりながら辺りを燃やし尽くしていく。それにより足を撃たれたゴブリンやオーク達が巻き込まれ次々と灰に変わっていくが、巨人の体には効いていないようだ。

「ジャイアントには[焔]は効かないんだよなぁ」

アナリスは独り言を言っているが、その焔は車を溶かすほどの熱を持っている。だがジャイアントには効いていないということはあいつは相当の化け物となる。

そして俺はというと下位魔法の[炎]や[風]で建物に登っている奴に当てて落としたり、近づかせないようにしてるがぶっちゃけヒカルと同じことをしているし、あと地味すぎる。

期待の新戦力、キルアはというと…手に持ったサバイバルナイフの柄を右手の人差し指と中指の間に挟み、そして他の指の間、つまり7本のナイフがそれぞれの指の間に挟まる。なんだそれ!?そのナイフどっから出てきた!?

「喰らえ!」

キルアはそう言うと、ナイフを奴らの頭目掛けて投げる。投げたナイフはゴブリンやオークの頭、そしてジャイアントの目に直撃し、ゴブリンやオークはそのままバタリと倒れ動かなくなるが、ジャイアントは目を抑えてうずくまり、まだ死んでいないのであった。だがキルアは素早く巨人に近づくと、巨人の頭に飛び乗り目に刺さったナイフを押し出す。すると目に刺さったナイフは貫通し、巨人もバターンと倒れる。

「クソ!多いなぁ」

アナリスが声を発した時、ダンジョン内から大量のゴブリンとオークが現れる。うじゃうじゃした群団が出てきた後は巨人が顔を覗かせながら外に出てくる。

「第2ラウンドかな」

ヒカルはそう言うと弾倉を入れ替える。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

勇者現代へ帰る。でも、国ごと付いてきちゃいました。

Azanasi
ファンタジー
突然召喚された卒業間近の中学生、直人 召喚の途中で女神の元へ……女神から魔神の討伐を頼まれる。 断ればそのまま召喚されて帰るすべはないと女神は言い、討伐さえすれば元の世界の元の時間軸へ帰してくれると言う言葉を信じて異世界へ。 直人は魔神を討伐するが帰れない。実は魔神は元々そんなに力があるわけでもなくただのハリボテだった。そう、魔法で強く見せていただけだったのだが、女神ともなればそれくらい簡単に見抜けるはずなおだが見抜けなかった。女神としては責任問題だここでも女神は隠蔽を施す。 帰るまで数年かかると直人に伝える、直人は仕方なくも受け入れて現代の知識とお買い物スキルで国を発展させていく ある時、何の前触れもなく待望していた帰還が突然がかなってしまう。 それには10年の歳月がかかっていた。おまけにあろうことか国ごと付いてきてしまったのだ。 現代社会に中世チックな羽毛の国が現れた。各国ともいろんな手を使って取り込もうとするが直人は抵抗しアルスタン王国の将来を模索して行くのだった。 ■小説家になろうにも掲載

わし七十歳定年退職者、十七歳冒険者と魂だけが入れ替わる ~17⇔70は地球でも異世界でも最強です~

天宮暁
ファンタジー
東京郊外で定年後の穏やかな生活を送る元会社員・桜塚猛(さくらづかたける)、70歳。 辺境の街サヴォンに暮らす万年D級冒険者ロイド・クレメンス、17歳。 冒険者ランク昇格をかけて遺跡の奥に踏み込んだロイドは、東京・桜塚家で目を覚ます。 一方、何事もなく眠りについたはずの桜塚猛は、冒険者の街サヴォンの宿屋で目を覚ました。 目覚めた二人は、自分の姿を見て驚愕する。ロイドはまったく見覚えのない老人の身体に、桜塚は若く精悍な冒険者の身体に変わっていたのだ。 何の接点もなかったはずの二人の意識が、世界を跨いで入れ替わってしまったのだ! 七十歳が十七歳に、十七歳が七十歳に―― いきなり常識の通じない「異世界」に放り出された二人の冒険が、今始まる! ※ 異世界、地球側並行で話が進みます。  完結まで毎日更新の予定です。  面白そう!と思ってもらえましたら、ご応援くださいませ。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

半身転生

片山瑛二朗
ファンタジー
忘れたい過去、ありますか。やり直したい過去、ありますか。 元高校球児の大学一年生、千葉新(ちばあらた)は通り魔に刺され意識を失った。 気が付くと何もない真っ白な空間にいた新は隣にもう1人、自分自身がいることに理解が追い付かないまま神を自称する女に問われる。 「どちらが元の世界に残り、どちらが異世界に転生しますか」 実質的に帰還不可能となった剣と魔術の異世界で、青年は何を思い、何を成すのか。 消し去りたい過去と向き合い、その上で彼はもう一度立ち上がることが出来るのか。 異世界人アラタ・チバは生きる、ただがむしゃらに、精一杯。 少なくとも始めのうちは主人公は強くないです。 強くなれる素養はありますが強くなるかどうかは別問題、無双が見たい人は主人公が強くなることを信じてその過程をお楽しみください、保証はしかねますが。 異世界は日本と比較して厳しい環境です。 日常的に人が死ぬことはありませんがそれに近いことはままありますし日本に比べればどうしても命の危険は大きいです。 主人公死亡で主人公交代! なんてこともあり得るかもしれません。 つまり主人公だから最強! 主人公だから死なない! そう言ったことは保証できません。 最初の主人公は普通の青年です。 大した学もなければ異世界で役立つ知識があるわけではありません。 神を自称する女に異世界に飛ばされますがすべてを無に帰すチートをもらえるわけではないです。 もしかしたらチートを手にすることなく物語を終える、そんな結末もあるかもです。 ここまで何も確定的なことを言っていませんが最後に、この物語は必ず「完結」します。 長くなるかもしれませんし大して話数は多くならないかもしれません。 ただ必ず完結しますので安心してお読みください。 ブックマーク、評価、感想などいつでもお待ちしています。 この小説は同じ題名、作者名で「小説家になろう」、「カクヨム」様にも掲載しています。

私(僕)達は同じ過ちを繰り返さないために・・・

ちょこあいす
ファンタジー
世界中で起きた異変 バケモノがはびこる世界 必死に生き延びる人達 命のやり取りが当たり前の世界 不定期更新なので気長に待ってください

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

都市伝説と呼ばれて

松虫大
ファンタジー
アルテミラ王国の辺境カモフの地方都市サザン。 この街では十年程前からある人物の噂が囁かれていた。 曰く『領主様に隠し子がいるらしい』 曰く『領主様が密かに匿い、人知れず塩坑の奥で育てている子供がいるそうだ』 曰く『かつて暗殺された子供が、夜な夜な復習するため街を徘徊しているらしい』 曰く『路地裏や屋根裏から覗く目が、言うことを聞かない子供をさらっていく』 曰く『領主様の隠し子が、フォレスの姫様を救ったそうだ』等々・・・・ 眉唾な噂が大半であったが、娯楽の少ない土地柄だけにその噂は尾鰭を付けて広く広まっていた。 しかし、その子供の姿を実際に見た者は誰もおらず、その存在を信じる者はほとんどいなかった。 いつしかその少年はこの街の都市伝説のひとつとなっていた。 ある年、サザンの春の市に現れた金髪の少年は、街の暴れん坊ユーリに目を付けられる。 この二人の出会いをきっかけに都市伝説と呼ばれた少年が、本当の伝説へと駆け上っていく異世界戦記。 小説家になろう、カクヨムでも公開してましたが、この度アルファポリスでも公開することにしました。

処理中です...