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第35話 アフガニスタン(6)
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装甲車部隊の準備が完了し、M2ブラッドレー歩兵戦闘車が基地内を走り回る。これ以上サソリがいないを確認するためだ。
無線によるとサソリは確認されておらず、あるのはサソリの死体だけとのことだった。
だが、それで終わりではない。
『現在確認できた死体の数は全部で7匹だ。初期報告によれば、全部で8匹いたということらしい。あと1匹どこかにいるはずだ…基地外に逃げ出した可能性もあるが、油断はするな。全員基地内をくまなく捜索しろ』
アルフレッド大佐の声が無線越しに響き渡る。
「あの大佐。斧で奴を殺したらしい…なんというかおっかないな」
ルーカスはそんなことを嘆いている。
「ルーカス。まだ奴らがいるかもしれない。大佐の言うとおり、気を抜くな」
「分かってるさ。大丈夫だ」
ルーカスはやる気のなさそうに返事をする。見るとコナーとロイドも疲れた表情を浮かべている。
当然と言えば当然だ。突然基地にサソリの化け物が襲撃するというアクシデントが起きたことが予想外すぎた。
その後俺達は警戒をしながらかまぼこ型の建物の格納庫へと入る。正面は航空機をすぐに出せるようにするため扉やシャッターなどはついていない状態だ。
中にはA-10が6機保管されていた。
「A-10か。こいつをもっと早めに使ってくれりゃあな…」
「基地ごと吹き飛ばすわけにはいかんだろ。仕方ないことさ」
ロイドのタメ口にアレックスは的確に返す。
ロイドは文句を言ったものの1つ1つ物陰を確認し、サソリがいないかを確認する。
ルーカスとコナーも同じで格納庫の中を目をこらして捜索している。
「ここにはいないっぽいな…」
コナーがそう言ったときだ。
ガシャン!という音ともに何かが割れる音がする。
アレックス達は何も喋らず、その物音の方向に一斉に銃を構える。
「…明かりをつけてくれ。俺が様子を見てくる」
アレックスはそう言うと、物音のした方向に慎重に進む。こういう時に「ふっ、なんだ気のせいか」とはならないのが米軍だ。
これを言ったら確実に死ぬことを彼らは理解している。
アレックスはA-10のガトリング砲の正面に立つ。この辺りから聞こえてきたはずだが、いかんせん格納庫の中は薄暗いままだ。
日暮れが近づいているのもあいまってよく分からない。
その時、パチパチという音ともに格納庫の電気がつく。A-10の鋼色の機体が美しく見える。
そうある1点を除いて…そのA-10のコックピットは何者かによって割れており、操縦席へと破片が散らばっている。さっきまで何かがそこにいたかのように。
アレックスは周囲を警戒しながら様子を見る。ロイド、ルーカス、コナーもそれぞれに分かれて格納庫内の様子を見る。
アレックスはこの時、あることに気づいた。
それは窓が割れていた先程のA-10。
その機体の右エンジンの塗装が何かをこすったような跡があることに。
アレックスはその右エンジンをジャンプ台にして、天井に張り付いているだと確信した。サソリはほぼ90度の司令塔を登ることができるのだ。アクロバティックな動きができても不思議ではない。
アレックスはそのA-10の上を見る。照明が天井も明るく照らす。
M4を持つ力が強くなるのを感じる。
そこにはいなかった。だがちょっと横の方を目にすると…
そこには待ち構えるかのように何もせず動かないサソリがそこにいた。
足の部分を器用に使って、天井の僅かなデコボコに張り付いている。
アレックスはそのサソリに気づくと同時に、そのサソリもアレックスが見ていることに気づいたようだ。サソリはハサミに火の玉を放つような素振りを見せる。
「上だ!!全員上だ!!」
アレックスの言葉に反応し、全員が上を向く。
「ほわぁっ!?マジかよ…!」
ロイドは張り付くサソリに驚きを隠せないでいる。
「撃て!」
アレックスは一言そう言うと、全員が天井に向かいM4を撃ちまくる。
ぎぃぎゅりゅあああ
サソリは変な悲鳴を上げたあと、A-10両エンジンの間に落ちる。
A-10はその衝撃で一部がへこんでしまう。
サソリも衝撃で1番後ろの1対の足がとれてしまう。だがサソリは何とも思っていないようだ。
サソリは火の玉を放とうとするのをやめ、1番近くにいたアレックスへと近づく。
「アレックス!!」
ロイドがそう言った時にはサソリはハサミでアレックスを両手で持っていたM4カービンごと固定し、サソリのチャームポイントである尻尾を刺そうとしてくる。
アレックスは咄嗟に腰にしまってある軍用のナイフを取り出し、そのサソリの頭に突き刺す。
サソリは死にこそしなかったものの、怯んだのかアレックスから離れる。
その隙をアレックスは逃さず、すかさずM9を取り出し頭に一発鉛玉をぶち込む。
アレックス達が最後のサソリを殺してから15分後くらいだろうか。
別の基地の応援としてUH-60 ブラックホークとUH-1Y ヴェノムの部隊が到着したのは。
アレックス達は、こちらへやって来たUH-1Yに、負傷者を担架で運んでいく。ヘリコプターの羽音が360度あちこちからする。
中から降りてきた救急箱を持った兵士が降りてきた後、周りの惨状を見たのか
「一体…何があったんだ?」
「……サソリが攻めてきたんだよ」
アレックスは大真面目な顔で冗談に聞こえるような口調でそう言った。
兵士は困惑の表情になりながら患者を運んだ。
無線によるとサソリは確認されておらず、あるのはサソリの死体だけとのことだった。
だが、それで終わりではない。
『現在確認できた死体の数は全部で7匹だ。初期報告によれば、全部で8匹いたということらしい。あと1匹どこかにいるはずだ…基地外に逃げ出した可能性もあるが、油断はするな。全員基地内をくまなく捜索しろ』
アルフレッド大佐の声が無線越しに響き渡る。
「あの大佐。斧で奴を殺したらしい…なんというかおっかないな」
ルーカスはそんなことを嘆いている。
「ルーカス。まだ奴らがいるかもしれない。大佐の言うとおり、気を抜くな」
「分かってるさ。大丈夫だ」
ルーカスはやる気のなさそうに返事をする。見るとコナーとロイドも疲れた表情を浮かべている。
当然と言えば当然だ。突然基地にサソリの化け物が襲撃するというアクシデントが起きたことが予想外すぎた。
その後俺達は警戒をしながらかまぼこ型の建物の格納庫へと入る。正面は航空機をすぐに出せるようにするため扉やシャッターなどはついていない状態だ。
中にはA-10が6機保管されていた。
「A-10か。こいつをもっと早めに使ってくれりゃあな…」
「基地ごと吹き飛ばすわけにはいかんだろ。仕方ないことさ」
ロイドのタメ口にアレックスは的確に返す。
ロイドは文句を言ったものの1つ1つ物陰を確認し、サソリがいないかを確認する。
ルーカスとコナーも同じで格納庫の中を目をこらして捜索している。
「ここにはいないっぽいな…」
コナーがそう言ったときだ。
ガシャン!という音ともに何かが割れる音がする。
アレックス達は何も喋らず、その物音の方向に一斉に銃を構える。
「…明かりをつけてくれ。俺が様子を見てくる」
アレックスはそう言うと、物音のした方向に慎重に進む。こういう時に「ふっ、なんだ気のせいか」とはならないのが米軍だ。
これを言ったら確実に死ぬことを彼らは理解している。
アレックスはA-10のガトリング砲の正面に立つ。この辺りから聞こえてきたはずだが、いかんせん格納庫の中は薄暗いままだ。
日暮れが近づいているのもあいまってよく分からない。
その時、パチパチという音ともに格納庫の電気がつく。A-10の鋼色の機体が美しく見える。
そうある1点を除いて…そのA-10のコックピットは何者かによって割れており、操縦席へと破片が散らばっている。さっきまで何かがそこにいたかのように。
アレックスは周囲を警戒しながら様子を見る。ロイド、ルーカス、コナーもそれぞれに分かれて格納庫内の様子を見る。
アレックスはこの時、あることに気づいた。
それは窓が割れていた先程のA-10。
その機体の右エンジンの塗装が何かをこすったような跡があることに。
アレックスはその右エンジンをジャンプ台にして、天井に張り付いているだと確信した。サソリはほぼ90度の司令塔を登ることができるのだ。アクロバティックな動きができても不思議ではない。
アレックスはそのA-10の上を見る。照明が天井も明るく照らす。
M4を持つ力が強くなるのを感じる。
そこにはいなかった。だがちょっと横の方を目にすると…
そこには待ち構えるかのように何もせず動かないサソリがそこにいた。
足の部分を器用に使って、天井の僅かなデコボコに張り付いている。
アレックスはそのサソリに気づくと同時に、そのサソリもアレックスが見ていることに気づいたようだ。サソリはハサミに火の玉を放つような素振りを見せる。
「上だ!!全員上だ!!」
アレックスの言葉に反応し、全員が上を向く。
「ほわぁっ!?マジかよ…!」
ロイドは張り付くサソリに驚きを隠せないでいる。
「撃て!」
アレックスは一言そう言うと、全員が天井に向かいM4を撃ちまくる。
ぎぃぎゅりゅあああ
サソリは変な悲鳴を上げたあと、A-10両エンジンの間に落ちる。
A-10はその衝撃で一部がへこんでしまう。
サソリも衝撃で1番後ろの1対の足がとれてしまう。だがサソリは何とも思っていないようだ。
サソリは火の玉を放とうとするのをやめ、1番近くにいたアレックスへと近づく。
「アレックス!!」
ロイドがそう言った時にはサソリはハサミでアレックスを両手で持っていたM4カービンごと固定し、サソリのチャームポイントである尻尾を刺そうとしてくる。
アレックスは咄嗟に腰にしまってある軍用のナイフを取り出し、そのサソリの頭に突き刺す。
サソリは死にこそしなかったものの、怯んだのかアレックスから離れる。
その隙をアレックスは逃さず、すかさずM9を取り出し頭に一発鉛玉をぶち込む。
アレックス達が最後のサソリを殺してから15分後くらいだろうか。
別の基地の応援としてUH-60 ブラックホークとUH-1Y ヴェノムの部隊が到着したのは。
アレックス達は、こちらへやって来たUH-1Yに、負傷者を担架で運んでいく。ヘリコプターの羽音が360度あちこちからする。
中から降りてきた救急箱を持った兵士が降りてきた後、周りの惨状を見たのか
「一体…何があったんだ?」
「……サソリが攻めてきたんだよ」
アレックスは大真面目な顔で冗談に聞こえるような口調でそう言った。
兵士は困惑の表情になりながら患者を運んだ。
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