30 / 237
第29話 大統領記者会見
しおりを挟む
…………なんだか知らない天井だ。
どうやら寝ていて、そして今目が覚めたらしい。そして段々と脳に昨日までの記憶が流れ込んでくる。そうだ。この天井はホテルの天井だ。
俺はベッドから立ち上がるとカーテンが閉めてあった窓を開ける。外はすっかり明るくなっていた。
その光によって目が覚めたのか、後ろの方でヒカルがむくっと起きる。
「…おはよう」
俺はヒカルに目覚めの挨拶を言ったが、ヒカルは寝ぼけているのか数秒経った後に「おはようと」と言ってきた。
「もう朝か?」
「外が明るいから朝だよ。ヒカル、今何時?」
「今か?」
ヒカルはそう言うと隣に置いてあったスマホをとる。
「9時57分…あ、もうすぐで大統領の会見始まるじゃん。テレビつけて!」
ヒカルに言われ、俺はテレビのそばに置いてあるリモコンを手にする。また赤いボタンを押せばいいのだろうか。
俺がリモコンの赤いボタンを押すと、テレビがついた。
そのテレビの映像には、マイクが置いてあるデスクが映った。そこには誰もいない。
いや、正確に言えばカメラを持った記者が両端のほうに映っているが。
右上のほうには[Live]と映っている。
カメラは、ずっとデスクの一点に向けられている。周りの記者達はそれぞれ俯いていたり、メモをとっていたり、周りをキョロキョロしたりと様々だ。
「あと1分くらいか」
ヒカルがそう言った時、突然カメラの焦点が変えられ、1人の人物が映される。
白味がかかった灰色の髪と青を基調としたスーツを着た男だ。顔立ちは細長く整っている。
それまで自由奔放だった記者達はその人物が来た途端にカメラを手に持ち、パシャパシャと言わせる。
それはその人物がデスクの前で静止するまで止まなかった。
パシャパシャが止まると、その人物は話しだす。
『えぇ皆さんおはようございます。本日集まってもらった理由はニューヨークの件についての話をさせてもらうためです。
昨日、現地時間の午後3時半頃、ウォール街にて突如出現した巨大生物により、当時その場にいた多くのアメリカ国民を巻き込みました。現在、州兵を最大限動員し、救助活動にあたっておりますが難航している状況であると言えます。
この生物が一体なんなのか、どこから来たのかについては現在は詳しいことが判明しておらず、全力を上げて操作にあたっているところです。
そして我々はこのニューヨークの件をアメリカに明確な敵意を持った組織によるテロ行為だと見ています。このような行為を行った組織、もしくは国に対してはいかなる報復措置をもとる覚悟であることを忘れないでいただきたい。多くのアメリカ国民が巻き込まれていたことを大変お悔やみ申し上げます。
何か質問は?』
_________________
2022年7月12日 アメリカ東部標準時
午前10時01分
アメリカ合衆国 ワシントンDC
ホワイトハウス記者会見室
ヴォイドの「何か質問は?」という声に対してその場にいた何人かの記者が手を挙げる。
ヴォイドは直感的に比較的手前にいた若い女性記者に手を向けると、その女性記者は立ち上がる。
「中国とロシアはこの事態の関与を否定していることについてはどう思いですか?」
「我々は現在この件の首謀者たる存在を調査しているところです」
「あの、よろしいでしょうか?」
今度は40代くらいの丸い頭が特徴の男性記者が手を挙げてヴォイドに向かって話す。その記者はヴォイドの返事を待たずにその後を続ける。
「巨大生物がニューヨークを襲ったとのことですが、現在その巨大生物はどういう状態なんですか?」
「その巨大生物に関しましても現在調査中です」
ヴォイドは先程から調査中としか言っていないがこれは言い逃れではない。
調査中というのは嘘ではない。現にCIA、FBI、NSA(アメリカ国家安全保障局)の3つの機関が中心となって調査しているし、
FEMA(連邦緊急事態管理庁)によって優先的にニューヨーク市民の避難やニューヨーク州政府の業務の調整を行うようにしている。
今のニューヨークは相当の金と人員を導入しているが、あの巨大生物については一向に分からないのだ。そう、アメリカ合衆国大統領のヴォイドでさえこの事態を詳しく理解できていない。幸いとも言えることは、人口密集地のタイムズスクエアの被害が少なかったことだけだ。
「何か他に質問は?」
ヴォイドがそう言うと、多数の記者が手を挙げる。
その様子を横目に見ている人物がいた。記者会見の裏方に潜んでいる国防長官のジェイコブはこの会見をじっと見ていた。
だがジェイコブ自身もこの会見には参加する。今後のアメリカの国防についてを説明しなければならない。最も予め書いてもらった原稿を読むだけだが。
このまま私の番まで来るかと思われたその時だ。黒服が裏方にいた人々の間をすり抜けてこちらへとやって来た。
「国防長官。ペンタゴンから連絡です。大至急だとのこと」
黒服はそう言うと手に持っていた連絡用の携帯電話(ガラケー)を渡す。
ジェイコブはそれを受け取ると、電話の相手先を引き継ぐ。
「私だが、どうした?」
ジェイコブは記者達に聞こえないよう口元をおおって話す。
…3分くらいだろうか。ジェイコブは電話を近くの黒服に渡すと同時に言う。
「大至急ペンタゴンまで送ってくれ。アフガニスタンで緊急事態だ」
ジェイコブはそれだけ言うと、急いで車のもとへと向かった。
どうやら寝ていて、そして今目が覚めたらしい。そして段々と脳に昨日までの記憶が流れ込んでくる。そうだ。この天井はホテルの天井だ。
俺はベッドから立ち上がるとカーテンが閉めてあった窓を開ける。外はすっかり明るくなっていた。
その光によって目が覚めたのか、後ろの方でヒカルがむくっと起きる。
「…おはよう」
俺はヒカルに目覚めの挨拶を言ったが、ヒカルは寝ぼけているのか数秒経った後に「おはようと」と言ってきた。
「もう朝か?」
「外が明るいから朝だよ。ヒカル、今何時?」
「今か?」
ヒカルはそう言うと隣に置いてあったスマホをとる。
「9時57分…あ、もうすぐで大統領の会見始まるじゃん。テレビつけて!」
ヒカルに言われ、俺はテレビのそばに置いてあるリモコンを手にする。また赤いボタンを押せばいいのだろうか。
俺がリモコンの赤いボタンを押すと、テレビがついた。
そのテレビの映像には、マイクが置いてあるデスクが映った。そこには誰もいない。
いや、正確に言えばカメラを持った記者が両端のほうに映っているが。
右上のほうには[Live]と映っている。
カメラは、ずっとデスクの一点に向けられている。周りの記者達はそれぞれ俯いていたり、メモをとっていたり、周りをキョロキョロしたりと様々だ。
「あと1分くらいか」
ヒカルがそう言った時、突然カメラの焦点が変えられ、1人の人物が映される。
白味がかかった灰色の髪と青を基調としたスーツを着た男だ。顔立ちは細長く整っている。
それまで自由奔放だった記者達はその人物が来た途端にカメラを手に持ち、パシャパシャと言わせる。
それはその人物がデスクの前で静止するまで止まなかった。
パシャパシャが止まると、その人物は話しだす。
『えぇ皆さんおはようございます。本日集まってもらった理由はニューヨークの件についての話をさせてもらうためです。
昨日、現地時間の午後3時半頃、ウォール街にて突如出現した巨大生物により、当時その場にいた多くのアメリカ国民を巻き込みました。現在、州兵を最大限動員し、救助活動にあたっておりますが難航している状況であると言えます。
この生物が一体なんなのか、どこから来たのかについては現在は詳しいことが判明しておらず、全力を上げて操作にあたっているところです。
そして我々はこのニューヨークの件をアメリカに明確な敵意を持った組織によるテロ行為だと見ています。このような行為を行った組織、もしくは国に対してはいかなる報復措置をもとる覚悟であることを忘れないでいただきたい。多くのアメリカ国民が巻き込まれていたことを大変お悔やみ申し上げます。
何か質問は?』
_________________
2022年7月12日 アメリカ東部標準時
午前10時01分
アメリカ合衆国 ワシントンDC
ホワイトハウス記者会見室
ヴォイドの「何か質問は?」という声に対してその場にいた何人かの記者が手を挙げる。
ヴォイドは直感的に比較的手前にいた若い女性記者に手を向けると、その女性記者は立ち上がる。
「中国とロシアはこの事態の関与を否定していることについてはどう思いですか?」
「我々は現在この件の首謀者たる存在を調査しているところです」
「あの、よろしいでしょうか?」
今度は40代くらいの丸い頭が特徴の男性記者が手を挙げてヴォイドに向かって話す。その記者はヴォイドの返事を待たずにその後を続ける。
「巨大生物がニューヨークを襲ったとのことですが、現在その巨大生物はどういう状態なんですか?」
「その巨大生物に関しましても現在調査中です」
ヴォイドは先程から調査中としか言っていないがこれは言い逃れではない。
調査中というのは嘘ではない。現にCIA、FBI、NSA(アメリカ国家安全保障局)の3つの機関が中心となって調査しているし、
FEMA(連邦緊急事態管理庁)によって優先的にニューヨーク市民の避難やニューヨーク州政府の業務の調整を行うようにしている。
今のニューヨークは相当の金と人員を導入しているが、あの巨大生物については一向に分からないのだ。そう、アメリカ合衆国大統領のヴォイドでさえこの事態を詳しく理解できていない。幸いとも言えることは、人口密集地のタイムズスクエアの被害が少なかったことだけだ。
「何か他に質問は?」
ヴォイドがそう言うと、多数の記者が手を挙げる。
その様子を横目に見ている人物がいた。記者会見の裏方に潜んでいる国防長官のジェイコブはこの会見をじっと見ていた。
だがジェイコブ自身もこの会見には参加する。今後のアメリカの国防についてを説明しなければならない。最も予め書いてもらった原稿を読むだけだが。
このまま私の番まで来るかと思われたその時だ。黒服が裏方にいた人々の間をすり抜けてこちらへとやって来た。
「国防長官。ペンタゴンから連絡です。大至急だとのこと」
黒服はそう言うと手に持っていた連絡用の携帯電話(ガラケー)を渡す。
ジェイコブはそれを受け取ると、電話の相手先を引き継ぐ。
「私だが、どうした?」
ジェイコブは記者達に聞こえないよう口元をおおって話す。
…3分くらいだろうか。ジェイコブは電話を近くの黒服に渡すと同時に言う。
「大至急ペンタゴンまで送ってくれ。アフガニスタンで緊急事態だ」
ジェイコブはそれだけ言うと、急いで車のもとへと向かった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
わし七十歳定年退職者、十七歳冒険者と魂だけが入れ替わる ~17⇔70は地球でも異世界でも最強です~
天宮暁
ファンタジー
東京郊外で定年後の穏やかな生活を送る元会社員・桜塚猛(さくらづかたける)、70歳。
辺境の街サヴォンに暮らす万年D級冒険者ロイド・クレメンス、17歳。
冒険者ランク昇格をかけて遺跡の奥に踏み込んだロイドは、東京・桜塚家で目を覚ます。
一方、何事もなく眠りについたはずの桜塚猛は、冒険者の街サヴォンの宿屋で目を覚ました。
目覚めた二人は、自分の姿を見て驚愕する。ロイドはまったく見覚えのない老人の身体に、桜塚は若く精悍な冒険者の身体に変わっていたのだ。
何の接点もなかったはずの二人の意識が、世界を跨いで入れ替わってしまったのだ!
七十歳が十七歳に、十七歳が七十歳に――
いきなり常識の通じない「異世界」に放り出された二人の冒険が、今始まる!
※ 異世界、地球側並行で話が進みます。
完結まで毎日更新の予定です。
面白そう!と思ってもらえましたら、ご応援くださいませ。
勇者現代へ帰る。でも、国ごと付いてきちゃいました。
Azanasi
ファンタジー
突然召喚された卒業間近の中学生、直人
召喚の途中で女神の元へ……女神から魔神の討伐を頼まれる。
断ればそのまま召喚されて帰るすべはないと女神は言い、討伐さえすれば元の世界の元の時間軸へ帰してくれると言う言葉を信じて異世界へ。
直人は魔神を討伐するが帰れない。実は魔神は元々そんなに力があるわけでもなくただのハリボテだった。そう、魔法で強く見せていただけだったのだが、女神ともなればそれくらい簡単に見抜けるはずなおだが見抜けなかった。女神としては責任問題だここでも女神は隠蔽を施す。
帰るまで数年かかると直人に伝える、直人は仕方なくも受け入れて現代の知識とお買い物スキルで国を発展させていく
ある時、何の前触れもなく待望していた帰還が突然がかなってしまう。
それには10年の歳月がかかっていた。おまけにあろうことか国ごと付いてきてしまったのだ。
現代社会に中世チックな羽毛の国が現れた。各国ともいろんな手を使って取り込もうとするが直人は抵抗しアルスタン王国の将来を模索して行くのだった。
■小説家になろうにも掲載
新人神様のまったり天界生活
源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。
「異世界で勇者をやってほしい」
「お断りします」
「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」
「・・・え?」
神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!?
新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる!
ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。
果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。
一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。
まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!
私(僕)達は同じ過ちを繰り返さないために・・・
ちょこあいす
ファンタジー
世界中で起きた異変
バケモノがはびこる世界
必死に生き延びる人達
命のやり取りが当たり前の世界
不定期更新なので気長に待ってください
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる