上 下
22 / 237

第21話 VSワイバーン in ニューヨーク(6)

しおりを挟む
ガイムは瓦礫をどかそうと下位魔法を駆使していた。
しかし土砂崩れのように崩壊したコンクリート群は、そう簡単にどかせるものではなかった。

「なんか使える魔法が1つくらいはないのか?」

苛立ちを覚えながら自身ができる様々な魔法を頭でイメージする。下位魔法しかできないとはいえ、何かはあるはずだ。

そうこう考えているうちに、ある魔法が浮かぶ。

下位魔法[物質短縮]。魔力を持っていない複数の大体大きさが同じ物を混濁させる魔法だ。これで隙間ができないだろうか。

そうだ。どかす必要はない。人が通れる隙間さえあれば…

俺は、瓦礫の山へ手をかざす。すると瓦礫の山は1つの混合物となる。地下鉄の出入り口の隙間ができるほどに。

「えっと、皆さん大丈夫…ですか?」

思わず人見知りが発動してしまったが、声をかけても返事がない。嫌な予感がする。
まさか…もう

おそるおそる中を覗く。階段が続いていたが、中は外と比べると格段にきれいだ。
そして中に書いてあった字によると、ここはウォールストリート駅らしい。

外では、ビルが崩れる轟音が少なくない頻度で鳴り続けている。
だが不思議なことにワイバーンは炎を吐かなくなっていた。

中に入って探索しようとしたその時、アナリスがヒビの入ったビル群の間からこちらへ来た。

空中に浮かびながら。

「おまたせ、大丈夫?」

「あ、うん。でも中に人はいなかったよ」

「多分地下鉄の線路を歩いて逃げたんだと思う。それより私達もそろそろ行くよ。
この国の軍隊がお出ましする頃だからね」

軍?あぁ、こいつを倒すために軍を派遣するということなのか?

と思った時、ズシンズシンという音が一層大きく響いた。どうやらワイバーンは俺達を探しているらしい。

ワイバーンはまだこちらに気づいてない。結構離れているからだろうか、こちらへ一切目を向けない。

いや、違う。ワイバーンは何かに気をとられている。先程からワイバーンの目は、キョロキョロとある一点を見つめているからだ。

その先に何があるのだろうかと思い見てみると、そこにはワイバーンへ向かってくる高速の何かがあった。

横に細長く、後ろの部分からは炎が出ているそれは、ワイバーンへぶつかるとドカーンという轟音と共に爆発する。

その威力はワイバーンの頭を覆い尽くすほどだった。
だがそれで終わりではない。それはあと5つあった。

ワイバーンが避けようと、後方へと跳ぶが、
まるで生きてるかのようにそれは、ワイバーンの頭へピンポイントに飛んでいってる。

そして再び避ける間もなく2発、3発、4発と当たっていく。
だが、5発目はワイバーンが手で振り払おうとする。その謎の物体との手が触れた瞬間、その謎の物体はワイバーンの手の表面で爆発する。
しかしこれで終わりではなく、6発目は手で振り払うことなく、顔面へと直撃する。

一体あの謎の物体はなんなのかと考えていると、何かの影が一瞬俺達と被る。

あわてて振り向くと、そこには空を凄まじい速さで動く何があった。

やがてまた謎の影が過ぎていく。その姿は、俺がまだ見たこともない物だった。
灰色のカラーディング、平べったい印象をうけるそれは、ドラゴンやワイバーン、なんかの魔物ではない。

「ふーう!さっすがぁ!」

アナリスは隣で興奮している。だが俺は興奮できなかった。ただただ呆気にとられるばかりだ。あれも飛行機の一種なのだろうか。

ふと、ワイバーンの方を見る。ワイバーンの顔面は煙でよく見えないが、あちこちで流血しており、中には抉れている箇所もあった。

「タフだな…あいつあれで死なないのかよ」

アナリスも気づいたようで、口調が荒くなっている。

俺は、ただその様子を見ることしかできなかった。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜

流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。 偶然にも居合わせてしまったのだ。 学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。 そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。 「君を女性として見ることが出来ない」 幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。 その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。 「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」 大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。 そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。 ※ ゆるふわ設定です。 完結しました。

私のスローライフはどこに消えた??  神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!

魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。 なんか旅のお供が増え・・・。 一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。 どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。 R県R市のR大学病院の個室 ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。 ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声 私:[苦しい・・・息が出来ない・・・] 息子A「おふくろ頑張れ・・・」 息子B「おばあちゃん・・・」 息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」 孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」 ピーーーーー 医師「午後14時23分ご臨終です。」 私:[これでやっと楽になれる・・・。] 私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!! なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、 なぜか攫われて・・・ 色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり 事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!! R15は保険です。

処理中です...