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第17話 VSワイバーン in ニューヨーク(2)

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「大丈夫ですか?」

彼女は優しい声色でそう話しかける。
アナリスと同年齢くらいで、長めの銀髪、それと全身に鎧を持ち、白銀の片手剣を持っている。

「え?あぁ、助かったよ。マジで」

アナリスが感謝の気持ちを伝えた時、ワイバーンが残った左手を銀髪少女へと振りかざす。
だが、アナリスが魔法でなんとかするよりも前にワイバーンの左手はいつのまにか刻まれている。

「…えっと、それで今どんな状況なんです?」

銀髪少女は説明ほしげな顔でこちらを見ている。

「…あれと戦ってる。あれは魔王の幹部の1人、それと周りにまだ避難しきれてない人がいる。だから私が気を引きつけてるの」

「それであいつと、事情は分かりました。それで私はどうすればいいですか?」

「どうしたらって……うわっマジか」

アナリスの声に反応したのか銀髪少女も振り向く。
そこにはいつのまにか右手と左手が治っており、こちらへと巨大な火の玉を放とうとするワイバーンの姿がいた。

「あの攻撃なら私が止めれますが、再生能力が厄介ですね…」

ワイバーンはそして巨大な火の玉をこちらへ向けて放つ。しかし銀髪少女が言うようにその攻撃は彼女の間合いに入った瞬間消えていく。
それを見計らって一気に言う。

「ちょっといいかな?まだこの近くには避難できてない人が大勢いる。だからあなたがあのワイバーンを引きつけてくれない?私が避難できてない人を避難させる」

「人?近くにはいませんが。それに引きつけるって言っても何をすれば?」

「建物の中にまだたくさんいる、引きつけるって言っても別に注意を引くだけでいい。倒そうって思わなくても…ただあなた強いでしょ?それなら分かるよね?」

アナリスは片目をつぶって圧力(?)らしきものをかける。

「……分かりました。じゃあお願いします」

銀髪少女は、無表情でそう言うと、ワイバーンへと向かう。ワイバーンは待ってましたとばかりに貯めていた巨大な火の玉を何度も放つ。
だがその全ては銀髪少女が剣を一振りするだけで全て消え去る。

「……すごいな」

アナリスは感心の声をあげると、人々を避難させる。
建物内にいる人、そのほとんどが生き埋め状態の人々だ。あのワイバーンが倒壊させたビル群の瓦礫が生き埋め状態にさせている。

「大体状況は分かった。じゃあするか」

アナリスは静かにそう言うと、一気に飛び上がる。そのまま上位魔法、
[空中浮遊]を発動した後周辺のビル群を見渡す。
そして邪魔な瓦礫の場所を全て把握すると、アナリスは両手を第2関節から曲げる。すると紫色の光が立ち込め、一気に決める。

[空中浮遊]は周りの物にも付与できる。
それを瓦礫に向けて発動させる。するとたちまち瓦礫は空中へと浮かび上がる。

ここに[運動変化]を発動させると…瓦礫は、ワイバーンの方へと凄まじい速さで吹き飛ぶ。
ワイバーンは突然の瓦礫アタックを避けきれずにまともに喰らう。

さて、あとはあの銀髪少女に任せることにする。
____________________

銀髪少女は、炎の玉を消しながら進める。だが、ワイバーンも甘くなく、炎の玉からブレスへと変え、一気に吐き出す。

だが直後、ワイバーンに瓦礫がいくつもぶつかり、ワイバーンは怯み、炎のブレスをやめる。

今しかない

銀髪少女は、自身の心にそう言うと、一気にワイバーンの体へと駆け寄る。

ワイバーンの足元にまでたどり着いた時、ワイバーンの両足の間に立ち剣を振るう。 斜めに斬り上げた剣。そしてすぐに飛び立ち、ワイバーンの足へと着地し、再びワイバーンの足から足へと飛びながら、斬りつける。
それを繰り返して、ついにはワイバーンの腹部まで達する。

あとは勢いを利用して、ワイバーンの体を一気に駆け上る。そしてワイバーンの頭上にいる時には、ワイバーンは至るところから出血していた。

「劔の舞」

彼女はその技が終わったあとに、静かに言う。やがてゆっくりと地面へと着地する。
コンクリートがヒビ割れているため、足場が不安定だ。

だが、ワイバーンもそれだけでは終わらない。再生能力により先程受けた傷を回復する。

「…しつこいですわね」

銀髪少女が再び剣先をワイバーンに向けた時、

「引きつけご苦労さん。避難は無事完了!あとは私も加勢するよ」

紫髪の少女は、そう言うと銀髪少女の隣へ並んだ。

「一気にケリをつける。私に合わせて」

紫髪の少女の言葉に銀髪少女はうなずいた。
____________________

「大体人はいなくなったな、あとはどうすればいいんだか…」

ヒカルはワイバーンの方を向きながらそう言う。

「ガイム、あの物理法則ガン無視野郎なんとかできない?」

「おい俺があんなのに太刀打ちできると思ってんのか?一瞬で死ぬ」

「お前らだって物理法則ガン無視してる奴らなのにか?」

「俺が言うのもなんだけど、下位魔法しか使えない俺は多分足手まといになるd」

最後まで言い切ろうとした瞬間、突如ワイバーンの頭上に人の影が写る。
その後ワイバーンの体に僅かな亀裂が生じ、そこから黒い血が吹き出す。
だが、すぐに出血はなくなる。

「あれって…人か?」

ヒカルが俺にそう聞いてくる。

「多分そうだけどあれアナリスじゃなくない?」

「じゃあ他の異世界人か?俺目がそこまで良くないから分からない」

「多分…にしてもやばいなぁ、俺達どうすれば…」

「とりあえずこういう時には、絶対しなければ行けないことがある」

ヒカルは不意にそう言うと、スマホを取り出す。

やがて911と入力する。

「まぁ、近くにニューヨーク市警察署があるから気づいているとは思うけど…」

そう言うとヒカルは耳元にスマホを当てる。  

「飛行機の機内でもそうだったけど、俺は普通に日本語喋ればいいんだよな?」

「あぁ…翻訳の魔法があるからそれで大丈夫」

ブーブーというバイブ音がヒカルのスマホから鳴り出す。

「あぁ、クソ!繋がらない」

ヒカルがそう言った時、突如ビルがこちらへ吹きとんでくる。破片とかではなくビルの半分まるごと。

「やばぁぁいいいい!!!」

俺がそう叫んだ時には、もう遅かった…となるかと思いきや、俺はまだ生きている。
見ると目の前にアナリスがいて、ビルを上位魔法の運動変化で吹き飛ばそうとしている。

やがて俺達にぶっ飛んできたビルは、真逆の方向へと吹き飛ばされる。

「大丈夫!?」

アナリスがそう聞いてくる。

「あ、マジ助かった。アナリスが神様に見える」

「冗談は後。避難はできた?」

冗談ではなくホントに俺の命を救ってくれた神様なわけだが。

「まだ地下鉄にいる。出口もビル群で塞がってる。Twitterの投稿にそうあった」

ヒカルが口を開くと、アナリスは舌打ちする。

「あぁ、そう言えばそんなのあったね。それガイムだけでなんとかできない?あのワイバーン、別の異世界人が今戦ってるからその加勢に行ったほうがいいし」

「えっ!?俺に任せるの!?」

「そう。しっかりしてよ。男なんだから」

アナリスは苦笑混じりにそう言うと、再びワイバーンにの方に向かって行った。






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