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第5話 スキー場(2)

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2022年7月10日 日本標準時 午後3時38分

宮城県仙台市 泉ヶ丘スキー場

_________________

俺達は近くにあった椅子に座ろうとする。

俺が先に座ると、アナリスは俺の隣に座ってくる。距離が結構近いのでドキドキする。



「それで何か聞きたいことある?私が分かる範囲だけのにしてよ」



アナリスはそう言うと、こっちを向いてくる。改めて真正面から見ると、きれいな人だ。顔立ちが整っている。

そもそも俺が女の子と二人きりで話したり、隣同士で座ったりなどしたことがない。

故に不慣れ。



「ねぇ?聞いてる?」



アナリスはこちらを向いたままそう聞いてくる。



「えっ?あぁ、ごめん。それでこの世界って人とかっているの?」



「いるよ、当たり前じゃん、まぁ山の中にいたから分かんないかもだけど。結構人は多いみたいだよ。大体70億人くらい。」



70億?嘘ではなかろうか。俺達の世界ではせいぜい45億が最高だったと聞く。今は40億くらいらしいが。



「でも、人見かけてないよ」



「山の中だからでしょ。好き好んで山の中で暮らすっていう人相当少ないよ」



どうやら俺は転生した場所が悪かったらしい。



他に質問すべきことは……1つ浮かび上がる。



「この世界の人達ってどんな魔法使うんだ?」



この質問の答えは予想外のものだった。



「あぁ、魔法は使わないね。てかそもそも魔法がこの世界にはない、だから魔法なしで生活してる」



……?何を言っているんだ?魔法がない?どういうことだ?



「え?でも俺は魔法使えるし、えと、アナリス…さんも魔法使ってたはずだけど」



「アナリスでいいよ、確かに私達は魔法を使えるけど、この世界の人達にとっては魔法がないことが常識らしい、つまり私達はこの世界の人達と違う存在…みたいな感じかな」



「え」



そうなのか。じゃあどうやって生活してるんだ?そう聞こうと思った時、アナリスのほうが話しかけてきた。



「ねぇ、一応聞くけどさ、魔法人前で見せてないよね?」



なんでそのことを聞くのだろうと思いながらも答える。



「え?見せてないよ、だって俺山の中にさっきまでずっといたし、そもそも俺他に人がいること自体分かってないし」



そう答えると彼女は俺から視線を外して



「あぁ、そう。まぁ、そういえばそうか。私に会うまでずっと山の中にいたんだっけ……なんでそんなこと聞いてくるのって思ってるでしょ?」



やはり心でも読めるのだろうか、それとも顔に出ているのだろうか?そんな疑問をよそにアナリスは答える。



「この世界の人達ってね。私達みたいに常識外れ?まぁこの世界でだけど。まぁ、そういうのがいると研究した後に最悪殺してしまうんじゃないかなぁ、まぁ直接見てないから分からないんだけど」



なんだ?何故そうなる?



「何故そうなるかって?例えばガイムが、魔法なんか知らない、使えない人で私がこうしたらどう思う?」



そう言うと彼女は手に拳大の火の玉を浮かび上がらせた。俺が焚き木をする時に出した炎より随分と大きい。

咄嗟のことで驚いたが、彼女の質問の意味を理解する。



もし俺がその立場なら……おそらくもっと怖がるはずだ。実際俺にとってこの世界がなんなのかわからないことへの不安があった。

そして、この世界の住民にとって魔法は知らないし。当然不安がり怖がるはずだ。俺以上に。そうなるとそれを理解するために研究、

そして…………だが話が飛躍しすぎてはいないだろうか?



「まぁ、あくまで仮にだけどね。でも魔法を見せるべきではないと思う」



アナリスはそう言うと、火の玉を消す。



「他に質問は?」



アナリスはそう問いかける。



「どうして俺達この世界に転生してきたんだ?」



「それは私にも分からない。最初は死んだから転生したのかなって思ったんだけど、それだったらあっちの世界で死んだ人全員がこっちの世界に来てることになる。

あっちの世界の1日の平均死亡者が100人くらいだから全員がこっちの世界に転生してきたら、多分人で溢れてる。

まぁ、あくまで推測だけど彗星がぶつかると転生するってことじゃないかな?」



どうやら何故この世界に来たのかはアナリスにも分からないらしい。



ならば、次の質問の答えも大体予測できる。



「俺達帰れる?」



アナリスはすぐには答えなかった。

やがて、顔を俯きながら答える。



「多分、帰れないかな。私この世界のこと本がいっぱいあるところで調べたんだけどよく分かんなかった」



彼女の答えは今までより重く感じた。



アナリスは続ける



「どうやってこの世界に来たのかも分からないから、多分、もとの世界に帰るのは相当困難だと思う」



俺の心境は複雑だった。なんとなく帰れなさそうな気がした。これで【冒険者】という仕事から開放されてヤッター…とはならない



俺にとってもアナリスにとってもおそらくまだ分からないことが多すぎる。そんな中でこの世界で暮らして行ける自信がない。



「他に質問はある?……なさそうだね」



アナリスはそう言うと立ち上がる。



「行こう」



アナリスはそう言ってきた。咄嗟に言葉を返す。



「どこへ?」



アナリスはすぐに答える。



「仙台駅」
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