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ルカ・ポアネスという不良
ルカ・ポアネスという不良1
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『16の歳、この子は天使に出会うだろう』
それはまだ生れたばかりの俺に、与えられた予言。
ポアネス家は狼獣人の一族。
数百年も前から人族達に混ざって生活し、王宮の重職をはじめとした様々な分野で確固たる地位を築記あげて、既にメトオーゲ王国民としての完全に溶け込んでいるものの、獣人独自の慣習は未だ残っている。
その一つが、一族の占い師による、生れたての赤子に対して下される予言だ。
予言は吉を示すこともあれば、凶を示すこともある。
占い師の予言は、一人に対してたった一度しか下すことは出来ないものの、まず100%正解する。
不吉な予言を宿した子は、同時に回避法を告げられなければ、そのまま殺されることもある。
理不尽だと言われるかもしれないが、それが一族の中で綿々と続けられる絶対の掟だった。
両親は、俺に対する予言が凶を示すものではなかったことに胸を撫で下ろしながらも、その予言の意味に首を傾げた。
予言で示される内容は、その赤子にとって人生を左右する程重大なものだ。
天使に出会う…果たしてそれは一体どういう意味なのだろうか。
だが、占い師は、それ以上の詳細をけして語ることは無かった。占い師自体、それ以上は分からないのだろう、そう父は言っていた。
そして俺は、16になった。
幼い頃から、繰り返し教えられていた予言。果たされる時は、今しかない。
だが、その予言が果たされる兆しはいっこうに見えないまま、月日は過ぎ、ついには後一月で17になるというまでに期限は迫っていた。
なんだ。100%当たる占い師と言っても、外すことはあるのか。
今までの予言だって、当たったと後からこじつけただけで、真偽は怪しかったんじゃないか。
こんな無駄な慣習、捨てちまったほうがいいな。
――そう、内心嘲笑っていた時だった。
『……お兄さん、えらい寒そうな格好して倒れとんなぁ~。服、どこやったん?』
何が起こったのか理解出来ないまま倒れ込んでいた俺が、覚醒すると同時に耳に飛び込んでくる声。
『よっしゃ! 私が今すぐ、お兄さんの制服、用意したりましょ。もちろん、正規価格とは言いまへん……2割引きでどうでっか?』
そう言って、微笑む少女に、かつてない程、胸が高鳴った。
予言は当たっていた。
俺は16の歳、天使に出会った。
――サイカ弁の、俺の天使に。
「この糞アマごらぁああ!!よけんじゃねぇっ!!!!」
「攻撃を仕掛けられて、避けない馬鹿がどこにいると思う?」
「がぁああ! 腹が立つっ! てめぇはとにかく黙って俺に殴られていりゃあいいんだよ! 今なら一発で勘弁してやるからっ!」
飛び交う拳。
跳躍する体。
立ち上る、砂埃。
……え、ちょっと待って。
目の前で繰り広げられている、明らかに人間超越している動きなバトル、一体何?
いつからこれ、バトル漫画な世界になったの?
え、残像が目に見えるって、フィクションの世界の中だけじゃないの?
いきなり始まった、ルカとデイビッドのバトルに、正直脳みそが全くついて行かないんですが。
ちょっと、状況を整理しよう……。何でこんなことになっているんだ。
――放課後、ちょっと用事があって庭園を通っていた際、デイビッドと遭遇した。
「あ! デイビッド。奇遇だね。こんなとこで」
「俺は普通に寮に行く道筋だが……珍しいな。お前が庭園にいんのは」
「ちょっと別棟に用事があってさ……そうだ。テスト結果見たよ。スゲーね。主席って」
「……ふん、俺にかかりゃあ、こんくらい楽勝だ。寧ろあのガキを抜けなかったのが屈辱なくらいだな」
そう言ってそっぽ向くデイビッドの頬は心なしか赤い。
……おんや? もしかして賞賛されて少し照れてる?
そう思ったら口元がニヤついた。
なんだ、デイビッド、可愛いとこもあるじゃないか。
それはまだ生れたばかりの俺に、与えられた予言。
ポアネス家は狼獣人の一族。
数百年も前から人族達に混ざって生活し、王宮の重職をはじめとした様々な分野で確固たる地位を築記あげて、既にメトオーゲ王国民としての完全に溶け込んでいるものの、獣人独自の慣習は未だ残っている。
その一つが、一族の占い師による、生れたての赤子に対して下される予言だ。
予言は吉を示すこともあれば、凶を示すこともある。
占い師の予言は、一人に対してたった一度しか下すことは出来ないものの、まず100%正解する。
不吉な予言を宿した子は、同時に回避法を告げられなければ、そのまま殺されることもある。
理不尽だと言われるかもしれないが、それが一族の中で綿々と続けられる絶対の掟だった。
両親は、俺に対する予言が凶を示すものではなかったことに胸を撫で下ろしながらも、その予言の意味に首を傾げた。
予言で示される内容は、その赤子にとって人生を左右する程重大なものだ。
天使に出会う…果たしてそれは一体どういう意味なのだろうか。
だが、占い師は、それ以上の詳細をけして語ることは無かった。占い師自体、それ以上は分からないのだろう、そう父は言っていた。
そして俺は、16になった。
幼い頃から、繰り返し教えられていた予言。果たされる時は、今しかない。
だが、その予言が果たされる兆しはいっこうに見えないまま、月日は過ぎ、ついには後一月で17になるというまでに期限は迫っていた。
なんだ。100%当たる占い師と言っても、外すことはあるのか。
今までの予言だって、当たったと後からこじつけただけで、真偽は怪しかったんじゃないか。
こんな無駄な慣習、捨てちまったほうがいいな。
――そう、内心嘲笑っていた時だった。
『……お兄さん、えらい寒そうな格好して倒れとんなぁ~。服、どこやったん?』
何が起こったのか理解出来ないまま倒れ込んでいた俺が、覚醒すると同時に耳に飛び込んでくる声。
『よっしゃ! 私が今すぐ、お兄さんの制服、用意したりましょ。もちろん、正規価格とは言いまへん……2割引きでどうでっか?』
そう言って、微笑む少女に、かつてない程、胸が高鳴った。
予言は当たっていた。
俺は16の歳、天使に出会った。
――サイカ弁の、俺の天使に。
「この糞アマごらぁああ!!よけんじゃねぇっ!!!!」
「攻撃を仕掛けられて、避けない馬鹿がどこにいると思う?」
「がぁああ! 腹が立つっ! てめぇはとにかく黙って俺に殴られていりゃあいいんだよ! 今なら一発で勘弁してやるからっ!」
飛び交う拳。
跳躍する体。
立ち上る、砂埃。
……え、ちょっと待って。
目の前で繰り広げられている、明らかに人間超越している動きなバトル、一体何?
いつからこれ、バトル漫画な世界になったの?
え、残像が目に見えるって、フィクションの世界の中だけじゃないの?
いきなり始まった、ルカとデイビッドのバトルに、正直脳みそが全くついて行かないんですが。
ちょっと、状況を整理しよう……。何でこんなことになっているんだ。
――放課後、ちょっと用事があって庭園を通っていた際、デイビッドと遭遇した。
「あ! デイビッド。奇遇だね。こんなとこで」
「俺は普通に寮に行く道筋だが……珍しいな。お前が庭園にいんのは」
「ちょっと別棟に用事があってさ……そうだ。テスト結果見たよ。スゲーね。主席って」
「……ふん、俺にかかりゃあ、こんくらい楽勝だ。寧ろあのガキを抜けなかったのが屈辱なくらいだな」
そう言ってそっぽ向くデイビッドの頬は心なしか赤い。
……おんや? もしかして賞賛されて少し照れてる?
そう思ったら口元がニヤついた。
なんだ、デイビッド、可愛いとこもあるじゃないか。
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