上 下
73 / 191
ダーザ・オーサムというショタキャラ

ダーザ・オーサムというショタキャラ18

しおりを挟む
『最近、ルクレア先輩と和解して、ようやく私は自分がしたことの愚かさに気づいたの。……誰かに傷つけられたから、他の誰かを傷つけてもいいわけではない。……そんな当たり前の事さえ、あの時の私は忘れていた』

 デイビッドは、両手で顔を覆って肩を震わせる。
 当然ながら、ただの泣き真似である。
 でもこれは、誰が見ても騙されるわ……。マジでデイビッド、役者なれる。演技力高過ぎ。怖ぇぇぇ。

『ごめんなさい……許さなくても、いいわ……でも、ただそれだけが伝えたかったの』

 悔恨に震えて嗚咽を漏らす(ように見える)デイビッドに、どうすればいいのか分からずにダーザは狼狽する。
 デイビッドは啜り泣く(ふりをする)ばかりで、それ以上は何も口にしない。ダーザが何らかのアクションを起こさなければ、状況はこのままだ。

 きょろきょろと視線を彷徨わせ、ぱくぱくと何か言葉を紡ごうと口を動かしていたダーザが、やがて意を決したように目を瞑り、大きく息を吐き出した。

『――気に、しないで下さい』

 やっとのことで言葉を発したダーザは、制服のポケットに手を入れる。
 取り出すのはきちんとアイロンがけがされた、一枚のハンカチーフ。
 ダーザはぎこちない手つきで、それをデイビッドに差し出した。

『どうか、涙を拭いてください。僕はもう、あなたを怒ってはいません……寧ろ、感謝をしているくらいです』

『……感謝……?』

『ええ、そうです』

 デイビッドの問いかけに、ダーザは、びっくりする程優しい、大人びた笑みを浮かべた。

『あなたのお蔭で、僕は大切な気持ちを知ることが出来た。あなたがあの時、僕の教科書を奪ってくれたから、僕は変わろうと思えた。……僕は今、僕に新たな世界を見出すきっかけをくれたあなたに、とても感謝しているんです』


 ダーザの言葉に、思わずガッツポーズをとる。

 キタキタキタキタ―――――!!

 これ、絶対滅茶苦茶ダーザのデイビッドへの好感度上昇しているよね? 寧ろ、これ、もう堕ちている感じだよね?

 ……よっしゃぁああ! 私、マジ天才! マジ有能脚本家! 策士!

 ふふん。これであと何回かイベントこなせば、ダーザはデイビッドにべた惚れして、下僕決定だね。

 わたしの解放までの、自由への道が一歩近づいたよ……!


 その後、改めて互いに自己紹介をしあった後、ダーザとデイビッドは解散した。
 ダーザが完全にいなくなったのをちゃんと確認してから、私は意気揚々と隣室へと向かう。


「……デイビッド、ディーネ!」

「……おう」

「マスター」

 ドヤ顔で入室した私を見て、何故か浮かない顔をしているデイビッドと、嬉しそうな笑みを浮かべるディーネ。
 ディーネはそのまま真っ直ぐに私の傍に近寄ってくる。

「マスター……私、上手ク、魔法展開デキマシタ……?」

 上目使いで不安げに尋ねるディーネに、心臓が鷲掴みにされる。全てはときめき故に。

 あああ、この慎ましやかさんめ。
 ディーネは魔法展開も上手だし、ぷりちーでびゅーてぃふぉーなんだから、もっと自信持っていいんだよ? 少しはサーラムの根拠のない自信を見習いなさい!

「勿論だよ。ディーネ。タイミングも魔法量もばっちりだった! さすが、ディーネ。私の自慢の精霊だ」

 指先でディーネの頭を思い切りなでなでしながら、褒めちぎると、ディーネの白い頬がほんのり赤く染まる。

 あぁ、もうかわいい。
 ディーネは精霊たちの中で、一番大人しくて控え目だから、ここぞという時にこそ思い切り誉めてやらにゃあ。

「大好きだよ。ディーネ」

 ちいさなディーネが潰れないような強さで(ちなみにここまで力加減気にするのはディーネだけだ。サーラムは潰れるくらいに抱き締められる方が実は好きだし、ノムルは例え潰されても反応が薄い。シルフィは力加減を察して、勝手に抱擁を避ける。そして三体が三体ともいやなことは胸に秘めずに、その場ですぐにギャアギャア文句を言う。だから奴らは別に気を使ってやらないでも問題ない)そっとディーネを抱き締めて、頬に口づけを落とす。
 嬉しそうに微笑むディーネに、こっちまで嬉しくなる。

 さて。ディーネの愛らしさを堪能したところで。

 私はデイビッドに視線を移した。

「…どうよ、デイビッド。私の脚本は?」

 ふんと鼻息を吐いて、胸を張る。口元が勝手ににやける。

 --さぁ、デイビッドよ。

 私を、天才だ、素晴らしいと褒めちぎってくれても構わないんだぜ?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので落ちこぼれ攻略キャラを育てるつもりが逆に攻略されているのかもしれない

亜瑠真白
恋愛
推しキャラを幸せにしたい転生令嬢×裏アリ優等生攻略キャラ  社畜OLが転生した先は乙女ゲームの悪役令嬢エマ・リーステンだった。ゲーム内の推し攻略キャラ・ルイスと対面を果たしたエマは決心した。「他の攻略キャラを出し抜いて、ルイスを主人公とくっつけてやる!」と。優等生キャラのルイスや、エマの許嫁だった俺様系攻略キャラのジキウスは、ゲームのシナリオと少し様子が違うよう。 エマは無事にルイスと主人公をカップルにすることが出来るのか。それとも…… 「エマ、可愛い」 いたずらっぽく笑うルイス。そんな顔、私は知らない。

転生したヒロインのはずなのに地味ダサ令嬢に脇役に追いやられ、氷の貴公子に執着されました

古里@10/25シーモア発売『王子に婚約
恋愛
やったーー! 私は気付いたらゲームの世界のヒロインに転生していた。これから愛しの王子様とラブラブの学園生活を送るのだ。でも待って、私の前には何故か地味でダサい女がいてくれて、尽く私のイベントを邪魔してくれるんだけど。なんで! この女、ものすごく鈍くて私の嫌味も意地悪も果ては虐めても全く通用しない。でも、何故か女嫌いの王子様との仲はうまくいっているんだけど。ちょっとあなた、どきなさいよ! そこは私の位置なのよ! ヒロインの座を奪われても、人の良い主人公はその地味ダサ令嬢と馬鹿にしていた令嬢のために奔走させられてしまって…… 果たして主人公は地味ダサ令嬢からヒロインの座を奪い返せるのか? 更には何故か一番近づきになりたくないと思っていた攻略対象の一人の氷の侯爵令息に興味を持たれてしまって…… 『転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて執着されました』  https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/497818447 のサイドストーリーです。

乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜

ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。 沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。 だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。 モブなのに魔法チート。 転生者なのにモブのド素人。 ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。 異世界転生書いてみたくて書いてみました。 投稿はゆっくりになると思います。 本当のタイトルは 乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜 文字数オーバーで少しだけ変えています。 なろう様、ツギクル様にも掲載しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

転生したら避けてきた攻略対象にすでにロックオンされていました

みなみ抄花
恋愛
睦見 香桜(むつみ かお)は今年で19歳。 日本で普通に生まれ日本で育った少し田舎の町の娘であったが、都内の大学に無事合格し春からは学生寮で新生活がスタートするはず、だった。 引越しの前日、生まれ育った町を離れることに、少し名残惜しさを感じた香桜は、子どもの頃によく遊んだ川まで一人で歩いていた。 そこで子犬が溺れているのが目に入り、助けるためいきなり川に飛び込んでしまう。 香桜は必死の力で子犬を岸にあげるも、そこで力尽きてしまい……

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~

鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?

不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜

晴行
恋愛
 乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。  見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。  これは主人公であるアリシアの物語。  わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。  窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。 「つまらないわ」  わたしはいつも不機嫌。  どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。  あーあ、もうやめた。  なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。  このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。  仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。  __それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。  頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。  の、はずだったのだけれど。  アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。  ストーリーがなかなか始まらない。  これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。  カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?  それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?  わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?  毎日つくれ? ふざけるな。  ……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?

処理中です...