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オージン・メトオグという王子
オージン・メトオグという王子5
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悪魔様のお仕置き後、私はよろよろとした足取りで教室に向かう。
……うう、朝からえらい目にあった。
なんでデイビッドは、こうもすぐ体に訴えてくるのか。
DVだ。でぃーぶいだ。ドメスティックバイオレンス……ではないか。家庭じゃないし。D どうしようもなく V バイオレンス だ。法的機関に訴えんぞ、こん畜生。
辿り着くのは、我が教室。悪魔様が(めったに)近寄らない、私のオアシス。
自分の机に着くなり、大きなため息を吐いて、ぐったりと項垂れる。
オージンの違和感。マシェルのフラグ。悪魔様のDV……考えるべきことは山積みだ。……なんで私がこんな状況に立たされてんだ。本当。
「……おね……ルクレア様。どうされたのです。朝からとてもお疲れのようですが……?」
遠慮がちに私に近づいて、おずおずと上目使いで(あざとい……だが、そこがいい)尋ねてくるトリエット。
あぁ、トリエット……私の可愛い砂糖菓子ちゃん…っ!
君と、生意気きゃわいい我が精霊ズだけが、私の癒しだよ! 本当っ!
「……いえ、大したことではありませんわ。ちょっとした面倒事が重なっただけ。お気になさらないで」
「……でも……」
「心配してくれてありがとう。トリエット。でも、この問題に関しては、私が一人で解決するほかありませんの」
有無を言わさぬ調子でにっこりとほほ笑むと、トリエットは唇を噛みしめて悔しそうに黙り込む。
……あぁ、せっかくのプルプル唇に傷がついてしまうじゃないか。君にそんな顔は似合わないぜ、トリエット。
どうか、いつものように愛らしく笑っておくれ。
そこで、ふと思い出す。
そういやゲーム中で、トリエットとオージンが会話しているシーンとか、確か何回かあったんじゃなかったっけ?
「……そういえば、トリエット。貴女のご実家は王家と親交が深いのでしたわね?」
「……は、はい! 僅かとはいえ血縁関係にあるので、恐れ多くもメトオグ王家様とは親しくさせて頂いてます!」
そうだ。トリエットのはとこにあたる令嬢が、現王弟の側妃になっていることもあって、メトオグ家とシュガー家は繋がりがあるのだと聞いたことがある。
オージンの父親にあたる現王が比較的フランクな人柄なこともあって、血縁関係にある貴族には左程身分の垣根が無い付き合いをしているのだと聞く。
「それじゃあ、貴女とオージン殿下も親しいのかしら?」
もしそうならば、トリエットの情報で、先程感じた違和感の正体が分かるかもしれない。
僅かに身を乗り出した私の様子に、トリエットは少し困惑気な表情を浮かべながらも、縦に首を振った。
「特別に親しいというわけではありませんが、ルクレア様もご存じの通り、殿下はあまり身分を意識されないフランクな方なので、血縁関係にある私にも気さくにお声を掛けて下さっております」
「陛下は親しい人に対しては、必ず何かしらに例えて持ち上げながら挨拶されてますわよね。トリエットはいつも、何に例えられているのかしら?」
私の疑問にトリエットは眉間に皺を寄せて(そんな顔も愛らしい。眼福なり)、暫し考え込む。
「――特に決まってはいません」
少しの沈黙の後、トリエットは小さく肩を竦めてみせた。
「オージン王子は、いつも思いつきで誰かを例えているように思います。会うたびにその都度変わるので、あくまでただの挨拶で、本心から何かに例えているわけではないのではないかと思います」
オリエットの言葉に、私はようやく違和感の正体に気が付く。
『――おはよう。エンジェ! 今日の君も天使のごとく、麗しいね!』
トリエット曰く、会うたびに例える対象が違うというオージンが、ゲーム中ではずっと、エンジェを天使以外の物に例えることは無かった。
だけど、今日の朝オージンは、ディビットを、花の精霊に例えていた。
……うう、朝からえらい目にあった。
なんでデイビッドは、こうもすぐ体に訴えてくるのか。
DVだ。でぃーぶいだ。ドメスティックバイオレンス……ではないか。家庭じゃないし。D どうしようもなく V バイオレンス だ。法的機関に訴えんぞ、こん畜生。
辿り着くのは、我が教室。悪魔様が(めったに)近寄らない、私のオアシス。
自分の机に着くなり、大きなため息を吐いて、ぐったりと項垂れる。
オージンの違和感。マシェルのフラグ。悪魔様のDV……考えるべきことは山積みだ。……なんで私がこんな状況に立たされてんだ。本当。
「……おね……ルクレア様。どうされたのです。朝からとてもお疲れのようですが……?」
遠慮がちに私に近づいて、おずおずと上目使いで(あざとい……だが、そこがいい)尋ねてくるトリエット。
あぁ、トリエット……私の可愛い砂糖菓子ちゃん…っ!
君と、生意気きゃわいい我が精霊ズだけが、私の癒しだよ! 本当っ!
「……いえ、大したことではありませんわ。ちょっとした面倒事が重なっただけ。お気になさらないで」
「……でも……」
「心配してくれてありがとう。トリエット。でも、この問題に関しては、私が一人で解決するほかありませんの」
有無を言わさぬ調子でにっこりとほほ笑むと、トリエットは唇を噛みしめて悔しそうに黙り込む。
……あぁ、せっかくのプルプル唇に傷がついてしまうじゃないか。君にそんな顔は似合わないぜ、トリエット。
どうか、いつものように愛らしく笑っておくれ。
そこで、ふと思い出す。
そういやゲーム中で、トリエットとオージンが会話しているシーンとか、確か何回かあったんじゃなかったっけ?
「……そういえば、トリエット。貴女のご実家は王家と親交が深いのでしたわね?」
「……は、はい! 僅かとはいえ血縁関係にあるので、恐れ多くもメトオグ王家様とは親しくさせて頂いてます!」
そうだ。トリエットのはとこにあたる令嬢が、現王弟の側妃になっていることもあって、メトオグ家とシュガー家は繋がりがあるのだと聞いたことがある。
オージンの父親にあたる現王が比較的フランクな人柄なこともあって、血縁関係にある貴族には左程身分の垣根が無い付き合いをしているのだと聞く。
「それじゃあ、貴女とオージン殿下も親しいのかしら?」
もしそうならば、トリエットの情報で、先程感じた違和感の正体が分かるかもしれない。
僅かに身を乗り出した私の様子に、トリエットは少し困惑気な表情を浮かべながらも、縦に首を振った。
「特別に親しいというわけではありませんが、ルクレア様もご存じの通り、殿下はあまり身分を意識されないフランクな方なので、血縁関係にある私にも気さくにお声を掛けて下さっております」
「陛下は親しい人に対しては、必ず何かしらに例えて持ち上げながら挨拶されてますわよね。トリエットはいつも、何に例えられているのかしら?」
私の疑問にトリエットは眉間に皺を寄せて(そんな顔も愛らしい。眼福なり)、暫し考え込む。
「――特に決まってはいません」
少しの沈黙の後、トリエットは小さく肩を竦めてみせた。
「オージン王子は、いつも思いつきで誰かを例えているように思います。会うたびにその都度変わるので、あくまでただの挨拶で、本心から何かに例えているわけではないのではないかと思います」
オリエットの言葉に、私はようやく違和感の正体に気が付く。
『――おはよう。エンジェ! 今日の君も天使のごとく、麗しいね!』
トリエット曰く、会うたびに例える対象が違うというオージンが、ゲーム中ではずっと、エンジェを天使以外の物に例えることは無かった。
だけど、今日の朝オージンは、ディビットを、花の精霊に例えていた。
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