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連載2

忘れられた神々11

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 予言者のいうことは、剣を封印した私自身が感じていたことで。
 矛盾がなく、正しい言葉のように思えなくもない。
 でも……。

「……今、トリアスのことを、混沌の神と言いましたよね」

「それがどうしましたか。シャルル王子?」

 シャルル王子が、不審を隠しきれない顔で、予言者を睨む。

「私は、トリアスのことを神だとしか言っていないのに、何故トリアスが混沌の神だとわかったのですか? トリアスのことを忘れたと言った貴方が」

 予言者に対する、どうしようもない不信感の理由をシャルル王子が代弁してくれた。
 けれど予言者は、シャルル王子のこの指摘にも少しも動じることなく微笑んだ。

「おや。そうでしたか。忘れたつもりでも、存外無意識で記憶しているものですね」

「…………」

「ああ、思い出しました。思い出しました。確かに初代の【災厄の魔女】は混沌の神トリアスを信奉してましたよ。正確には、当時のルシトリア国民はトリアスを信奉するものの、調和の神である弟神を信奉するものに別れて対立していたんです」

 首を左右に振りながらあっさり前言を撤回した予言者の姿は、いつのまにか子どものそれに変化していた。

「まあ、その事実があろうがなかろうが、私の言うことは何も変わりません。すべては遠い昔のこと。忘れられた神は力を失って衰え、悪名を轟かせる【災厄の魔女】の呪いだけが人間に記憶され恐れられている。その事実には、何も変わりはないのだから」

「…………」

 問いただしたいことはたくさんあった。
 けれど今の予言者なら、私が何を聞いたところでまともに返してくれないだろう。
 私は喉もとにまで出かけた言葉を飲み込んで、深々と頭を下げた。

「……そうですか。ならば私は、今日見た神殿のことは忘れることにします。こんな遅くに、ありがとうございました」



「ーー結局剣の封印については、予言者に報告しませんでしたね」

 帰りの地下通路で、シャルル王子がぼやく。

「昔と違って記憶は特別操作された感じはないですが」



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