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連載2

聖女の日々57

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 マナエさんに間に入ってもらうことで、私は救えただろう患者を見捨てる罪悪感から、解放された。
 以前お願いした通り、聖女の力を使わなかった人たちのその後のことも、定期的にマナエさんから教えてもらっている。マナエさんは偽ることも、飾ることもなく、ただ淡々と一つ一つの事例を私に伝えてくれた。
 中にはマナエさんの力では救うことができず、亡くなってしまった人もいて。「救えたのに救わなかったこと」の罪悪感はけして完全に消えはしなかった。
 それでも、やっぱり直接患者と対峙するのと、ただ文字媒体で状況を知るのとでは、精神的な負担が全然違っていて。
 改めて、マナエさんと、マナエさんが間に立つ要請をしてくれたシャルル王子には感謝している。
 それから、ミーシャ王女。彼女と「友人」として過ごす時間は、私に確かな強さを与えてくれた。
 ミーシャ王女は知れば知るほど、その本質は強かで、思いがけないほどにライオネル陛下と似ていた。

「だって、私はあの御方の娘ですから。血筋からしても教育環境からしても、似るのは当然です」

 むしろ、あれだけお父様に似ていないシャルル兄様の方がおかしいのです。そう言ってミーシャ王女は朗らかに笑った。

「それなのにお父様は、私が繊細でか弱いガラス細工のような性格だと勘違いしているみたいで。……正しても良いのですけど、慧眼と言われているお父様がすっかり私の演技に騙されているのが気分がいいので、このままにしておきます」

 ミーシャ王女はライオネル陛下同様に非常に合理的な人だったけど、ライオネル陛下よりずっと親しみがあった。
 ミーシャ王女の口から語られる、合理的だけどどこか暖かみのある考え方は、すんなりと私の胸に浸透して、私の視野を広げてくれた。

 二人を心から信用しているかと言われば、すぐに「はい」と即答することはできない。
 家族以外の人間を心から信用するには、アシュリナの記憶がどうしても邪魔をする。
 けれど、二人はそれでも良いと言ってくれた。
 そのうえで、喜んで私に利用されてくれている。

「……ねえ。兄様」

「どうした?」

「あのね。……心から信用することはできない人を、それでも好きだと思ってしまうことは悪いことだと思う?」

 いつものように私と一緒のベッドで寝てくれていた兄様は、困ったように笑って少しだけ黙り込んだ。

「そうだなあ。……心から信用できる人間なんて、普通に生きていれば早々出会えるものでもないし。どんな形であれ、お前の『好き』が増えることは良いことだと思うぞ」
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