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聖女の日々44

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 マナエさんの言葉に、私は頷いた。

「わかりました。……ただ、一つ、お願いがあります」

「……何でしょうか」

 怪訝そうに眉をひそめるマナエさんを、真っ直ぐ見据える。

「マナエさんが私の代わりに治療した患者が、その後どうなったのか。定期的に時間を設けて、私に報告していただけますか? ーーその、生死に関わらずに」

「っ……」

 私の言葉に、マナエさんは息を飲み、やがて硬い表情で首を横にふった。

「……それは、やめておきましょう。ただ、貴女を無駄に傷つけるだけだ。詳細は知らない方がいい」

「知りたいんです。否、私はきっと知らなければならないんです」

 自らが、力を使わなかった結果を知ることは、罪の結果を目の当たりにすることに他ならない。
 その行為は、確かに私を苦しめることになるだろう。

 ーーそれでも。

「マナエさん。私は、私が貴女に背負わせたものを、把握していたいのです」

「…………」

「私の代わりに、貴女が引き受けてくれた罪を、ちゃんと知っていたい」

 マナエさんは理解しがたいものを見たかのように顔を歪めた後、ゆっくり首を横にふった。

「……私は、医者です。前もお話ししたように、私は、患者を見捨てることも、その結果相手の死を目の当たりにすることにも、慣れている。彼らの怨嗟は、今さら私を傷つけはしません。だから、私のことは、聖女様がお気になさることはないのです」

「……どれほど慣れていたとしても、全く苦しみを感じないわけではないと思います。どんなに割り切ろうとしても、暗い感情は少しずつ澱のように、胸の内にたまっていくものです」

 マナエさんは私に対して、敢えて露悪的に振る舞っているけれど、本当はとても優しい人だと思う。
 私のことを一切責めることなく、一人で私の罪を全て背負おうとしてくれている。

 だからこそ、私は彼女の厚意にただ甘えるわけにはいかないのだ。
 
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