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聖女の日々28

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 私のお願いに、兄様は眉をひそめた。

「泊まるも何も、ここにはディアナのベッドしか無いだろう? 王都に向かう道中と違って、俺は騎士団の宿舎には寝る場所があるから、流石にまた床に寝るのは……」

「床になんて寝ないでも、十分ベッドは広いでしょう? 二人でここに寝ようよ。帰らないで」

「ディアナ!」

 私の言葉に兄様は少し声を荒げた後、気持ちを落ち着けるように大きく息を吐く。

「……やっぱりディアナには、一度ちゃんとはっきり言っておかないと伝わらないか」

 苦々しい表情で一人呟いた後、兄様は落ち着かない様子で頭をかきながら、私に向きなおった。

「ーーディアナ。俺はお前を、誰より大切な可愛い妹だと思っている。その気持ち自体には、一切偽りらない」

「……うん」

「だけど、俺はお前が本当の妹じゃないことを、最初からずっと知っていたんだ。お前を本当の妹だと信じていたことなんて、一度もない。……その意味が分かるか?」

 ……一体兄様は、何を言おうとしているんだろう。

 意味がわからずきょとんとしてしまう。
 兄様は頬を赤く染めながら、そんな私から視線を逸らした。

「……お前は俺にとっては、可愛い妹であると同時に、誰より大切な異性でもあるってことだよ。分かれよ」

 それって……。
 
 言葉の意味を理解した瞬間、かあっと頬が熱くなるのが分かった。

「だからな、ディアナ。俺のことを兄だからと安心して、あんまり不用意に同じベッドで寝てとか言うのは……」  

「……い……よ……」  

「うん?」

 考えるよりも早く、言葉が先に口に出た。
 ただ、兄様が恋しくて。
 その温もりを手放したくなくて。
 裾をさらに一層強く握りしめながら、俯く。

「……兄様からなら、私……別に何をされてもいいもの……」

 兄様が息を飲んだのが分かった。

 
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