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聖女の日々11
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私の言葉に、予言者は苦笑いを浮かべた。
「……聖女に献身を求めるばかりの、愚かな民のことではなくて、ですか?」
……ああ、この人は、何故私がここに来たのか理解している。
私が一体何に悩み、何を葛藤しているのかも。
『ーー何故だ。何故救ってくれない! あんた、聖女なんだろ!?』
今日の午前中に、私に向かってそう叫んだのは、【災厄の魔女の呪い】に罹患したと偽り、事故で壊死しかけた腕を隠してやって来た、30代くらいの男の人だった。
『医者からは、最早切断するしかないと、匙を投げられた。でも、効き腕を失ったら、俺は今までの仕事ができなくなる。家族を養ってやれなくなるんだ! ……聖女は、病だけでなく、ありとあらゆる怪我だって治せるんだろう? 【災厄の魔女の呪い】だけなんてケチなことを言ってないで、俺を救ってくれよ!』
……聖女の力を使えば、腕を治せることは知っていた。
だけど、病と違って、原因がはっきりしている明らかな外傷を【災厄の魔女の呪い】と誤魔化すことはできない。
歴代の聖女と違って、私が癒やせるのは、あくまで【災厄の魔女の呪い】だけ。ライオネル王には、そのように公表してもらった。
聖女としての力を、他人が利用しようとしないように。その結果、家族にまで害が及ぶことはけしてないように。
長い話し合いの末に、皆で決めた決断だった。
救えるのに、救わない。
その選択が正しいのか分からないまま、私はすぐに異変に気づいた父様によって、男が連れて行かれるまで、ただ謝り続けることしかできなかった。
「……貴方は以前、【災厄の魔女の呪い】を解く以外の、万病を癒やす聖女の力は、あくまで副次的なものに過ぎないとおっしゃってましたよね。あくまでそれは、【聖女】になる為の基盤固めの道具に過ぎないと」
「はい、確かに言いましたよ」
「ーーそれなら、何故。初代聖女様は【災厄の魔女】が滅んだ後もなお、万病を癒やす力を使い続けたと、伝説では語られているのでしょう?」
私の問いかけに、予言者は一瞬泣きそうに顔を歪めた。
「……他ならぬ、初代聖女様がそれを望んだからです」
「……そうですか」
「でも……何故止めなかったのかと、後悔してます。力を惜しみなく民の為に使い続けたことが、初代聖女様の命を縮めたのですから」
「……聖女に献身を求めるばかりの、愚かな民のことではなくて、ですか?」
……ああ、この人は、何故私がここに来たのか理解している。
私が一体何に悩み、何を葛藤しているのかも。
『ーー何故だ。何故救ってくれない! あんた、聖女なんだろ!?』
今日の午前中に、私に向かってそう叫んだのは、【災厄の魔女の呪い】に罹患したと偽り、事故で壊死しかけた腕を隠してやって来た、30代くらいの男の人だった。
『医者からは、最早切断するしかないと、匙を投げられた。でも、効き腕を失ったら、俺は今までの仕事ができなくなる。家族を養ってやれなくなるんだ! ……聖女は、病だけでなく、ありとあらゆる怪我だって治せるんだろう? 【災厄の魔女の呪い】だけなんてケチなことを言ってないで、俺を救ってくれよ!』
……聖女の力を使えば、腕を治せることは知っていた。
だけど、病と違って、原因がはっきりしている明らかな外傷を【災厄の魔女の呪い】と誤魔化すことはできない。
歴代の聖女と違って、私が癒やせるのは、あくまで【災厄の魔女の呪い】だけ。ライオネル王には、そのように公表してもらった。
聖女としての力を、他人が利用しようとしないように。その結果、家族にまで害が及ぶことはけしてないように。
長い話し合いの末に、皆で決めた決断だった。
救えるのに、救わない。
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「はい、確かに言いましたよ」
「ーーそれなら、何故。初代聖女様は【災厄の魔女】が滅んだ後もなお、万病を癒やす力を使い続けたと、伝説では語られているのでしょう?」
私の問いかけに、予言者は一瞬泣きそうに顔を歪めた。
「……他ならぬ、初代聖女様がそれを望んだからです」
「……そうですか」
「でも……何故止めなかったのかと、後悔してます。力を惜しみなく民の為に使い続けたことが、初代聖女様の命を縮めたのですから」
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