転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

ルートイベント5

「手篭めって……ルートさんがそんな人じゃないことは、私よりもセルドア様の方がよく分かっているでしょう？　それに、今までだってずっと二人で朝ご飯食べてたんだから、色々今さらじゃないですか？」

「ああいう女性に興味なさそうな朴念仁こそ、タガが外れた時が危ないんです！　それに今さらと言いますが、今までは幼ドラゴンも一緒でしたし、そもそも場所が私の結界の中でしたからね。侵入者がリッカに害を成さないよう、結界に特殊な式を編み込んで対策をしていたから心配してなかっただけで、けしてルート自身を信用してたわけじゃありません」

　……うおお。そんな魔術式も編み込んであったとか、知らなかった。
　流石、過保護（義）シスコン。対策は万全だ。　　
　
　でも、だったらさ。

「……それじゃあ、同じような結界をセルドア様がちょろっと私の周りに張ってくれたら、万事解決じゃないですか？　邪な感情を抱く相手を跳ね除けるみたいな奴をちゃっちゃっと」

「……………」

「あ、あれ？　私、なんか変なこと言いました？」

　独自の遊牧魔法を簡単に作り出せるセルドアなら、それくらいの応用結界、普通に張れるだろうなと思っての言葉だったんだけど、実はすごく難しい魔法だったりするんだろうか？

「……できませんか？」

「いや、できます……当然、できますけども」

　複雑そうな顔でため息を吐きながら、セルドアはモノクルを押し上げた。

「……私なら出来て当然だと思って甘えられるのは、本当の兄みたいで悪くない気持ちではありますが、その結果リッカがルートの家に行くのを反対する理由がなくなるのは、非常に複雑です」

　甘えてなんか……いるっちゃ、甘えてるか。
　セルドアが「できない」って理由以外で断る可能性、全く想像してなかったもんな。