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卵かけご飯を食べよう

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 空腹で明らかに不機嫌なトリスを宥めあしらって、朝のお世話セットを終えて家に戻ると、感動に身を震わせながらひどく幸福そうにラドを抱くルートさんと、その腕の中でショックで呆然としているラドの姿が。
 何故、ぼくが寝ぼけている時にこのような非道を行ったのかと、ふるふると小刻みに体を震わせて涙目でこちらを見るラドの姿に、ちくりと胸が痛む。

 ……ごめんって。私も普通に寝ぼけていたのよ。

「……ルートさん、ラドを見て頂いてありがとうございます。ラド、おいで」

 そう口にした途端、ルートさん腕を抜けだして、私の首に巻きつくラドさん。
 ……ちょ、首、しまってる、しまってる。悪かったって思ってるって。
 宥めるように、その鱗を撫でてやると、ルートさんがラドのいなくなった手を名残惜しげに見つめていた。

「……あと、一時間くらい預かってもよかったんだが」

 うん。貴方はね!



「今日は時間がないから、産みたてコカトリスの卵かけご飯でーす」

 昨日のうちに炊飯器(動力:魔法)にご飯は予約して炊いていたので、今日の朝ご飯は思いきり手抜きをすることにした。
 白玉といい、実にありがたや。ご都合主義ファンタジー世界。ワーショクはそこまで一般的じゃないはずなのに、こっちから言わなくてもちゃんと家に炊飯器が設備されてるんだから。元日本人としては、ヨーロッパっぽい世界観でも、いつでも気軽に食べたい和食系を口にできるんだから、嬉しいよね。
 ラドも含めて、人数分盛り付けたご飯と、割といて小鉢に分けた生卵を、食卓に置く。準備にかかった時間、実に五分。でも美味しい。めちゃくちゃ美味しい。それが、卵かけご飯。

「卵に直接ショーユ混ぜてもいいですけど、卵の風味を味わうにはご飯にショーユをかけた方がいいらしいですよ。私は別に、どっちでも特にこだわりありませんが」

「……あ、ああ」

 ルートさんはちょっとだけ戸惑ったように、お椀を手に取った。

「話に聞いたことはあったが……卵を生で食べるのは初めてだ」
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