転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

出現した謎の文字

　……う。筋は通っていると言えばいる。
　だけど……。

｢……そりゃあ、幼い頃は何度も石化されてひどい目遭いましたけどね。最近はそんなことは全く……｣

｢でも、それはあくまでリッカちゃんの自己申告だからさ。家畜場の責任者として、それを鵜呑みにするわけにはいかないんだよね。やっぱり実際色んな家畜育てて、実力見せてもらわないと。環境や個体が変われば、コカトリスの凶暴性だって変わってくるしね｣

　……この人、ゆるふわさんに見えて、全然譲らないぞ。
　なんか穏やかな笑顔が無言の圧力に見えて来た。

｢……ち、ちなみにパックさんに認められるレベルってどれくらい……｣

｢そうだねぇ～。まずはもっと初心者向けな家畜を10種くらい1年間育てられたら、かな。スライムとか、一角ウサギとか、金の羊とか。もちろん一匹ずつ様子見て、徐々に数増やしていく感じで｣

　多いわ!

　長いわ!

　1年後なんて、ドラゴンの卵が孵化しなかったら、契約切られてるかもしれないじゃん!



　……さて、どうしよう。
　コカトリスが駄目なら、最悪他の動物でもっても思ってはいたけど、せっかくのチャンスだから、やっぱりコカトリスを育てたい。

　何とかして、パックさんを説得する方法は……っ!?

｢……?　どうかした、リッカちゃん｣

｢い、いや……何でも……｣

　空中に、謎の文字が浮かび上がっている。……これ、もしかして例の副音声の一種なんだろうか。

　でも、こんな正体不明な文字を書かれても読めな……って、あれ、これ日本語じゃん。もう十何年も離れていたから、わからなかったよ。

　………えーっと。


→【仕方ない。諦める】
　【どうしても、コカトリスじゃなきゃ、嫌!】


｢…………｣

　……なんか、これ本当ゲームっぽいな。
　鶏の世話が忙しくて、ゲームなんて前世でも全くやってなかったから、どうすればいいかわからないけど。

　でも、その選択肢なら、選ぶのは一択しかない。

｢どうしても、今の私じゃ、コカトリスは難しいですか?　……やっぱり私、コカトリスがいいんです。小さい頃から、ずっと一緒に育ってきたんで｣

→【どうしても、コカトリスじゃなきゃ、嫌!】

　矢印が動き、選択肢がピコンと謎の音を立てて、光った。