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第三章

テゼールは気付かされる

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「あのー。もう少し話しかけてもいいと思いますよ?」

「そうそう。ティファ一度ああなると頑なだけど優しくしてあげれば意外とすんなり包囲網解いてくれたりするんで」

「料理を褒めとけばバッチリです」

「・・・・・そうか」

サウジスカルの人間はやけに親切というか、お節介というのか・・・そんなにティファと私の関係が気になるのだろうか。そうは言われても具体的になんて声をかければいいのか全然分からない。そもそも、ティファとまともに会話した事あっただろうか?・・・・・・ない。

「あ!ティファ!!こっちこっち!チーズ頂戴」

「・・・・・・はーい」

なんなんだその顔は!
とても嫌そうな顔で近づいてくるな?そんなに嫌か。
まだ何も言ってないだろう。

「今日のご飯お口に合いました?味濃くなかったです?」

「美味しかったよ?ねぇ?テゼールさん?」

「そうだな。だが、少し味が濃かった」

ピシリッ。

ん?なんだ?何を固まっているんだ?サッサと食べないと、仕事に遅れるぞ?若者達。ティファ?

「そうですか。それは失礼致しました。テゼールさんお料理お上手ですもんね?」

「テゼールさん?なんだその呼び方は気持ちが悪い。別に対して料理は上手くないぞ」

「またまたー?そんな事言って。昔からご飯作ってましたもんね?テゼールさん私より料理上手ですもんね?」

さっきから、この子は何をムキになっているんだ?
怒っているのか?何故だ?

「何をムキになっているんだ。別にお前の料理が下手などと言ってないだろう?感想を言っただけだ」

「テゼールさんには聞いてませんから」

な、なんなんだ本当に・・・。意味不明だ。ん?

「・・・・・テゼールさんって。可哀想」

「可哀想?何がだ?」

「デリカシーどこに置いてきたんです?旅の途中で落としました?」

失礼な!!デリカシーが無いなどと言われたことなどないぞ?デズロは幾度となくあるがな!

「皆んな、テゼールさんに失礼でしょ?絡むのはやめなさい」

「おはよ、ベロニカ!フィクスはどうした?」

「あのね?宮廷に通わなくなったんだから、フィクスがいなくてもおかしくないでしょ?いちいち私に聞かないでくれる?あ、テゼールさん、お茶淹れますね?」

「いや、お気遣いなく。顔色が良くなったな。もう少ししたら旅の間にも服用できる分の薬が出来る。メリルの所に行けば以前のように動けるようになるから、それまで頑張りなさい」

「はい。ありがとうございます」

この、ベロニカという子。とても礼儀正しいし良識があるいい子だな。ティファもこのくらい、しっかりしてくれれば安心出来るのだが・・・・。

「さぁお待ちかね!くじ引き大会ですよ!!並んで下さい!!さぁ!さぁーーーー!!」

なんだ、アイツは。

頭空っぽだとしか思えない。
お前は遊ぶ事しか考えてないのか?

「そんな顔しないで下さい。この国の人間は一見阿呆に見えますが、そうでもないですよ?やる時はやる人達ですから」

いかん。つい癖でティファを睨んでしまったか?
こういう所があの子に嫌われる要因なんだろうな。

「ティファは、とても分かりづらい人ですよね」

「・・・・そうだな。確かに、何を考えているか分からない」

「私、あの人に何度も助けられて、今ここにいるんです」

「ティファが、君を?」

信じられないな。あの子が人を助けることが出来るなど。
自分の事さえ、ままならないあの子が。

「長い間一緒にいたので、なんとなくティファの行動の意味、分かるようになりました。テゼールさんは、ティファの事、大事にしておられますよね?」

「ティファはそう感じていないだろう」

「もし、ティファを知りたいと思っているのなら、帰る前に声をかけてあげてください。一言でいいですから」

「・・・そう言われてもな。かける言葉がない」

「では。私の言う言葉を口にするだけでいいです。貴方が分からなくても、それでいいですから」

ここの住人達は本当にティファを大切に思っているんだな。ここに来てティファを観察していて驚いたことがある。ティファがよく笑うからだ。始め、私はそれに気がつかなかった。あの子は一緒に暮らしていた頃、余り笑う子ではなかった。唯一笑ったのはデガルドさん達の前だけだった。

そう。あの子にとって大事なのは、デガルドさんと過ごす時間だけだった。

「テゼール?どうしたの?貴方がボーとするなんて珍しいのね?」

「・・・いや。ティファの事を考えていた」

「ああ?あの子幸せそうねぇ?きっとここでの暮らしが合っているのね?いい事じゃない」

「それは、本心か?」

マリオーネ。君はあの時、思い切り私を殴っただろう?
今でも忘れない。君のあの鬼の形相。その後も、ティファの動向を逐一チェックしていたのは、どちらかといえば君の方だった。ティファは、君の親友の子供だからな。

「ぐすん・・・ごめんなさいテゼール」

「何を謝っている?」

「あの時。ティファが出て行った事。貴方の所為みたいに言って」

「・・・その通りだから。問題ない」

「違うわ。私の所為よ。私があの子を放ったらかしにしたから・・・・」

そうじゃない。多分そう言う事じゃないんだ。
多分私達は、最初から間違えていた。

「あの子はデズロでもテリアーゼでもない。でも、あの子を見ているとまるで二人がそこに居るみたいだった」

「ああ」

「あの二人といる時の様に接していたのね。あの子は違う人間なのに。それであの子が寂しがるなんて考えもしなかった。最低だわ」

ベロニカ、君の言葉がティファに届いたとしたら、きっと私は最低の父親なんだろうな。あんな若い子に、気付かされるとは、正直思わなかった。
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