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第二章

閑話その4

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「ヨシュア様と婚約?」

「ああ、向こうの家から是非アイラをヨシュアの相手にと話が来ている。お前の意見を聞きたい」

ちょっと待って下さいませ。
このタイミングであちらの家からお話が?あり得ませんわ。これは、明らかに。ヨシュア様の差し金ですわね?

一体何故?

「・・・・私は構いませんわ。そのままお話を進めて下さいませ。お父様」

「・・・・本当に、良いのだな?」

「はい。かまいませんわ」

酷い。

私の気持ちを知っていて。一度拒絶した癖に!!
私は、ヨシュア様にこんな事を望んだわけではありませんわ。私は、私はただ・・・・。

「アイラ。ヨシュアが迎えに来たぞ」

「はい。今参ります」

「お久しぶりでございます。本日は彼女に付き添う事をお許し頂き有難うございます」

「いいや。君の話は二人から聞いているのでね?安心してアイラを預ける事ができるよ」

ヨシュア様に私を好きになって貰いたかったのです。
たとえ、それが私と同じ感情じゃなかったとしても良かったのですわ。

「アイラ。手を」

この手を取れば、私の欲しいものは決して手に入らなくなりますわ。貴方の本当の心。それが。全て偽りで覆い隠されてしまいますから。

「アイラ?」

相変わらず綺麗な目。

貴方がこんな事をするなんて似合いませんわ。
礼儀正しい静かなヨシュア様なんて気持ち悪い。
口が悪くてヒステリックで、でも、とても真面目で優しいのがヨシュア様でしょう?
こんな事の為にあの家に帰ったのですか?

「宜しくお願い致しますわ。ヨシュア様」

「ええ。貴方の様な美しい方をエスコート出来る私は幸せ者ですね」

気持ちが悪いですわ。

今、貴方も私も偽りの仮面を被ってますわ。

誰にも知られない様に上っ面を取り繕って自分を偽っています。それが、私達の役・割・だから。そこに愛など存在しませんわ。

「おい。アイラ怒ってんのか?なんださっきの間は。俺一瞬思考が止まったぞ?」

「・・・・・・」

「無視かコラ。お前嫌だったなら、この話受けんなよ」

「・・・・・私が断れないと知っていて、この婚約話を持ち込んだ貴方に、そんな事言われる筋合いございませんわ」

「なんだよ。何が気に入らなかった?」

なにが、気に入らないか、ですって!!

「全てですわ!!この話がアルカディア家からである事!これがヨシュアの仕組んだ企みである事!そして、それを断らなかった自分自身に対してですわ!!」

「なんだよ。全部わかってんじゃん?」

「酷い!!私の事拒絶したのは貴方ですのに!!」

何がいけなかったのです?
確かに弱みに付け込んでヨシュア様に近付きましたわ。
でも、本当に嫌がることはしていない筈です。

もしそうなら、ヨシュア様はちゃんと口に出して注意してくれますもの。

「拒絶なんてしてねぇだろが。ただ、やり方が好きじゃないっつったんだよ。俺達、仮にも貴族だぞ?お前はその辺りを俺より熟知してた筈だろが?何で、そのお前が暴走するかな?」

意味が分かりませんわ!!全く理解出来ませんわ!!

「ヨシュア様が私の事、嫌いな事は知っております!!」

「え?俺そんな事お前に言ったか?」

「口になど出さなくとも、ヨシュア様の態度で分かりましたわ!!ヨシュア様わかり易いですから!!」

「・・・・・ふーん?で、俺に嫌われてるからなんなの?諦めんの?」

ムギギギギギ!!腹が立ってきましたわ!!本気でブチ切れそうです!私淑女なのに!!一応ですけれど!

「絶対に諦めませんわ!!貴方を私に屈服させて、毎日撫で回してやりますわ!!」

「へぇ?ふーん?」

キィーーーー!!!何ですかその余裕!普段はハイト様やギャド様にメタメタにやられてる癖に!!私全部知ってるんですからね!!

何ですか!!隣に座らないで下さいませ!馬車の中狭いのですから、距離が近くて私の酷い顔が見えてしまいますわ!嫌!

「お前。本当に分かってねぇの?何で俺がこんな事したのか」

「は?何・・・・」

え?ヨシュア様顔が近っ・・・・。

「お前ばかり俺を撫でくり回すなんて不公平だろ?俺にも少しは触らせろ」

え?それは一体どういう?というか今、頬に何が柔らかいものが触れた様な?・・・・え!?

「まさか、その為だけに?最低ですわ!!」

「・・・・・お前。なんでティファ化してんの?」

不埒な振る舞いをしたのはヨシュア様なのに、何故貴方がそんな呆れた顔で私を見るのですか!!納得出来ませんわ!!

「こりゃ思ったより時間がかかりそうだな」

「なんです!言いたい事があるならハッキリ仰って下さいませ!!」

「あ、そう?お前本当に可愛いよな?」

「ハァーーー?!馬鹿にしているのですか?!」

もう、もう、ヨシュア様なんて、最っっっ低ですわ!!
大、大、大っっっ好きですけど!嫌い!!
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