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第5話 誰だって努力はする

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「ハァ…ハァ……。」
「ハァー……ふぅ……。」

現在の点数
結果&誉 24:叶&ユウ 25

「……くっっそ。」
結果は表情を歪ませて、得点板を見た。

2対2開始から38分たつ頃…結果達の物凄い追い込みによってデュースに持ち込まれ、結果の全力本気サーブのアウトによるミスで、叶達はマッチポイントを握っていた。


「(うわぁ…私サーブか。)」
「ユウ…ここ1本。」
「ウン。」
何で私(鈴木ユウ)かなぁ…アンダーサーブしか打てないのに。ここは攻める場面なんだけど……。
「ふぅ…(また、試してみるか。)1本…!。」
バンッ ユウのサーブが打たれた。

「(ユウ…。私、貴方が他校のライバルじゃなくて良かったって、つくづく思う。)…天井サーブ……!!。」
「アタシがとる!。」
誉が声をあげた。
「…任せた。」
誉は、ボールを見ながら下に入り込む位置を調整していた。
「距離感…バグるわ。イヤやな。…でも、相手がイヤだと思う事をする……それがバレーボールなんよな…ッ!!。」
「まほ………。」
ドッ… 誉によってレシーブされたボールは高く上に上がった。
「1番忘れガチなんは…楽しむ事。けっかちゃん、センター!トス!!。」
「オーケー。(…楽しむ、か。)」
誉が踏み切って、打つ。 バチッッン!!…だが叶によってブロックされた。
「っ……高身長め。」そう誉が呟くと、「ラッキー…。」と叶が返した。

「まほ、トスお願い…!!。」
「けっかちゃん、ナイスフォロ~!。」
「レフト!。(…ユウ、貴方にお返しするから。)」
結果にトスが上がる。ブロックは、叶がクロスをしめている。ストレートはガラ空きだ。
「(?何でユウがストレート側に居ないわけ……ザルブロックが)ㇷっ…!!!。」
結果がわざとクロスをしめる叶の腕に打って、ブロックアウトさせようとした時だった…。


叶が、しめるコースをクロスからストレートに切り替えたのだ。予想外の叶の動きに結果は困惑した。
「(なっ?!!…ウッッソ。)」
時すでに遅し。ブロックアウトするため…明らかに通常のクロスよりも上に勢いよく打ったボールは、構えていたユウの頭上を通過し……ユウの「アウト。」という落ち着いた声と共にライン外に落ちた。

試合結果は、24:26。試合時間、約45分前後。体育館の窓からは、夕日の光が差し込んで、オレンジ色に染まっていた。
「ゲームセット…叶達の勝ち。」


顔の汗を自身の練習着の袖で拭きながら、誉は呼吸を整えながら言った。

「っーーーーーハァーーーーッ……疲れたぁぁぁ…。」
ユウが先にもらした言葉は、喜びよりも疲労だった。体育館の木の床に映える顔からもそう伝わってきていた。
「(ホント疲れた。いや、だって…6人分を2人で分担してる訳……そりゃあ守備範囲倍になるし疲れますわ。…おまけに、25点先取ってさ……。けっかちゃんに殺意が…。)」
そう思った時、本人が口を開いた。

「…本当に、何なの。ポジション、ピンチサーバー??…ははっ。十分だっての。」
「そんな事、ない。」
否定の声をあげたのは、望見だった。望見は平然としながら、壁にもたれるけっかちゃんを見る。

「私が今まで、ユニフォームを着れたのは“運”よりも…、一緒にバレーボールをする“仲間”が居た事が大きいよ。」
そう続ける叶に、結果は少し顔を上げる。

「バレーボール…チームスポーツの中では誰だって努力はするよ。そうじゃなきゃ、成り立たない。だからって、自分と同じ努力を求めるのは良くないと……違うのちゃうん…?。」
コテンと望見は首を傾げる。アンタ…、自分が顔良い事自覚してんのか?。

「ハァーーーーっ…で、結局何。環境が良かったってのもあるで「ぶっちゃけさー。ユニフォーム貰えんのって、監督とかコーチにもよらなーーい?。」
けっかちゃんは、自分の言葉を遮ったまほをイラッとした目で見る。そんな彼女を放って、フッ軽とした表情でまほは続ける。
「だってそうじゃん?。監督もコーチも人間なわけだし。まっとうな努力をしたって、体格、センス、才能を持っているからって……監督やコーチが変われば採用不採用は分かれる。100%採用される選手なんてほんの一握りやろ。」
そんなまほに限界がきたのか、けっかちゃんは立ち上がって言い返す。
「は?何それ。まほ、貴方も“運”だって言いたいの…!。」
「まだ分かんない?。」
「っ!!?!……」
「けっかちゃんは、努力だけが成功のルートだと固執し過ぎてる。そんな見解じゃだめなんよ…。」
「………」
「今回の2対2で分かったやろ。このまんまじゃ、どれだけ努力しても不利やで…?。広い視野、持っていこ…!」
ニカッと誉は笑う。
「………………………………もっと、早く知りたかった。」
まほと対照にけっかちゃんは、疲れた表情で溜息をつきながらボソッと呟く。
「え?……。」
頭にはてなを浮かべているまほをよそに、けっかちゃんは望見のもとへ歩み寄った。
「望見。」
「…?」
「私、貴方を完全に認めた訳じゃないから。」
「…認めなくていいよ……??。」
いや、言わなくていいよ。
「ん゙んっ…。」イラッ
相手がこうなるから、ね?。
「…とにかく、負けないから。」
「…………。」
そこは何も言わんのかい。


「まほもユウも、付き合わせて悪かったわ…ありがとう。」
けっかちゃんが私(鈴木ユウ)とまほに会釈する。
「あぁ…うん。」ぐったりしながら、私は返事をする。
「全然!!楽しかった~。」
まほは笑顔で返事をする。その元気どこから湧いてんの……?。

「おーつかれーー!。」
4人が静かになった瞬間、バンッと体育館の扉を開けて入って来たのは尾前先輩だった。そして、その扉の後ろで隠れていたであろう、上村先輩がビクッとして、小さく「ちょっ…」と声をあげていた。

「まるで狙ったようなタイミングですね、尾前先輩。  見てたんですか…。」
そうけっかちゃんが問いかけると、尾前先輩は頭の上でマルのポーズをとって「ピンポンピンポーン!!」と言う。
この人、絶対私達の試合楽しんでたな。
「いやぁ、面白いもの見せてもらっちゃったー♪。」
やっぱりか。 私の視線に気付いて、尾前先輩は寝転がっている私に目線を合わす。
頼むからめんどうな事はしないで欲しい。
「おつ~、ユウ。トスもスパイクもレシーブも全部輝いてたじゃんか~。目離せなくなるユイカの気持ちも分かるわー。」
あぁ…良かった。普通に褒められただけだ。
「ところで、私の今日の晩ご飯…何だと思う?。」
「……え?。」ん…アレ??。
「ブッブー。」
まだ何も言ってませんけど。
「『絵』食べるとか思われてんの~?。せんべいでも食べないよ。いや、そこはお餅じゃないんかい!!ふっひはwww。」
うっとうしいなこの人。
「正解は……カレイの煮つけ!!でしたあ。」
カレーじゃないのかよ。
「おつ、カ•レ•イ…だからwwwwwwwwwwwwwwwww。」殴りたい。


「じゃ、ネット片付けなおしといてなー。門限遅れちゃダメよぅんー?。」
5分くらい私達と話して、尾前先輩は上村先輩と一緒に帰っていった。
ハァー…やっと帰れ…
「ねね!せっかくだしさ~この後4人で食べに行こ?」
る……
「いいんじゃない?」とけっかちゃんは乗り気。え?。
望見は…
「…ラーメンがいいな。ちょっと遠いけど。もし、帰るの遅くなりそうなら近くのコンビニでも。」
そこまで言うなら、断れよ。私も帰
「おっしゃ、決まりぃーーー!!。」
おーーーーい。
「早く片付けちゃおーや!。」
1人わたし忘れてるって。
「まほ、ケガしないでよ?。それに、ユウはいつまでもボサッとしてないで手伝って。」
やっぱ身勝手だなコイツら全員。
「ハイ(帰りたい…)。」





「でさ~w…!智苗、あれ。」
「え?…?1年、生?。」
「おーーーーーーい!!!!!そこのおふたりさーーーん!!。今日のバレー部の見学はもうおしまいだよーーーーー!!。」
「っ…声、大きいって!!……もう。」
その2人は、尾前の声にドキッとした後、挙動不審な動きでバレーシューズであろう靴をしまうと別々に走り去っていった…………。







続く
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