冷酷皇太子の妃

まめだいふく

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episode14

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「カミル!!久しいな!!最近は西の方を攻めていたと聞いたが?」

「あぁ。リューク。少し静かにしてくれないか?耳が引きちぎれそうだ。」

遠くにいても会話が聞こえるほどの大声の主はカナンの王子リュークの様だ。
昨夜にカミル殿下が言っていた通り、カナンから側近達を引き連れてやってきたようだ。

それにしても、幼い頃の面影はまるで無く、大柄でサバサバしているような印象だ。隠れてドラゴンを盗み見ていた彼が同一人物とは思えない…

しばらく2人の様子を伺っていると、カミル殿下がこちらに気づき、リュークに一緒に来る様に促した。

「紹介しよう。こちらはハンガルドのニーナ姫。私の妃候補としてこちらに御滞在中だ。ニーナ姫、こちらはカナン帝国の王子リュークだ。」

「リューク王子。お会いできて光栄です。」

頭を深々と下げ、挨拶をすると、先程と同一人物とは思えない程の低く冷たい瞳でこちらを一瞥した。
まるで嫌悪感を剥き出しにした狼の様だ。

「カミル、軍事会議が始まる。はやく行こう。」

にべもない冷遇ぶりに、不快な気持ちにはなったが、聞く気がない相手を引き止めても仕方がない。

カミル殿下にも頭を下げ、そのまま部屋へ戻ることにした。




「リューク!失礼だぞ!」

「あぁ。知っているさ。各国の姫君方がロードレス皇太子の妃候補としてこの城に出入りしていることは。その中の1人だろう。興味はない。女は権力を持つと途端に性格が変わり、散財し、国を衰退させる。だから女は嫌いだ。自分1人の身すら守れぬくせに…。」

リュークの母親はカナンの前王妃だ。
側室で唯一子を生し、正室となったお方だが、
今は幽閉されている。
自分の欲を満たす為に兵を使い、敵国と内通したらしいことは噂に聞いている。

リュークは王妃のそばに行けることはほぼ無く、乳母に育てられたそうだが、小さな失敗で前王妃から乳母は解任され、田舎に戻る途中で不慮の事故にあい、亡くなったらしい。

女嫌いになるのも無理はない。

「ロードレスに衰退されては困る。この国だけじゃない。いくつもの国の民が苦しむことになるのだぞ!今隙を見せてみろ…せっかく優勢なのに、西国が一気に攻めてくることになったら最初にやられるのは間違いなくカナンだ。」

「あぁ…そうだな。だが、私はもうすぐ25歳になり、泉の継承を受けなければならないのだ。もし、ニーナ姫にその器がなければ私も姫も泉の悪魔によって身を滅ぼすことになるからな。」

「…ニーナ姫を妃にすると、もうすでに決めている様な口ぶりだが?姫なら他にも沢山いるのに何故だ?」

そう…私は最初からニーナ姫を妃に…と、そう考えていた。





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