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episode10
しおりを挟む「お静かに。手荒なことはしたくない。」
サーバスが2人の兵士に目配せすると、兵士たちは音を立てずにこちらに近づいてきて、私たちの手首を後手に縛った。
「…要求は何?それとも、各国の姫を殺めることが目的かしら?」
サーバスは不気味な笑みを浮かべ、砂糖菓子を手に取りながら言った。
「姫を殺める?人聞が悪い。今までこの国に来た姫たちをこの手で葬ったことは一度も無い。そんな事をすれば私の地位が危ぶまれるからな。それに、客人として招かれた姫君がロードレスで命を落とすようなことがあれば、戦争になりかねんだろう。」
姫君方を手に掛けたのはサーバスではない?今の状況からみて、何かあった事は間違いなさそうだけれど…
「最後に教えてやろう。どうせ忘れてしまうがな。この砂糖菓子には催眠薬が入っている。姫君方はこの砂糖菓子を口にし、自国に帰り2度とこの地を踏まないように暗示をかけた。まぁ命を絶つよう命じてはいないが、みな、ご自身で命を絶ったのだよ。」
兵士が器を取り出すと、砂糖菓子を砕き、中に入っていた液体を水に混ぜた。
「…そんな事をして…一体なにが目的?」
「薔薇色の泉…この国には古くから伝わる言い伝えがある。泉には魔物が巣食っていて、近づく物はみな食われてしまう…が、皇帝陛下のみ、この泉から水を汲むことを魔物から許されるという。」
「その泉の水がなんだっていうの?」
「その泉の水は一滴垂らせばどんな病気や怪我をも治す力があるのだそうだ。ロードレスが戦争に強いのも、冷徹なあの皇太子の手腕では無く、あの水の力による物だともっぱらの噂だ。なんでも…死者をも蘇らせる…とか。」
サーバスの狙いは、その泉の水を手に入れること…ならば、なぜ他国の姫君にそんな仕打ちをしたのか…
「分からぬだろうな。平穏な城の中しか知らぬお前ら小娘どもは。泉の水さえ手に入れば巨万の富も名声も得られるのだ。我が主君こそ、世界を統一するのに相応しい。さぁ、話はもう終わりだ!!」
兵達がセナを取り押さえ、サーバスが私を押し倒して無理やり催眠薬入りの水を飲ませようとしたその時だった。
「そういう事だったのか…サーバス。」
背後から聞こえた声にサーバスは驚愕し表情が凍りついた。
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