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冷酷冷徹?どちらかと言うと…虫も殺せない様な優しそうな方…。カミル殿下と言葉を交わして感じた印象は噂に聞いた様子とは正反対だった。
それどころか、何かを危惧していた…ロードレスに訪れた各国の姫たちは、本当に殺されたのか…だとしたら誰に?
与えられた部屋に入るとあまりにも静かで、外の小鳥の声さえも聞こえないからか、カミル殿下の話を考え込んでしまっていた。
「ニーナ様、お茶はいかがですか?こちらは皇太子殿下からの贈物だそうです。なんでも、殿下御用達の菓子店のものだとか。素敵ですわね。」
セナがお茶と一緒に部屋に運んできたのは、宝石を模って作られたガラスの様に透き通っていて美しい砂糖菓子だった。
「これ…私知ってる。ロードレスのものではないわ。誰から受け取ったの?」
「宮仕えの女官から…彼女は確かに殿下からの贈物だとおっしゃっていたのですが…」
怪訝に思い、砂糖菓子の入った箱を持ち上げると箱の裏側に手紙が挟んである事に気がついた。
「?!セナ…これ」
箱に挟まれた手紙を開封するセナの横に立ち、手紙を読むとこう書かれていた。
月が真上に昇る刻 中庭の噴水前でお待ちしております。
「まぁ。殿下からのお誘いでしょうか?」
「違う…。カミル殿下は明日の朝…もし叶うならば、貴方と朝食をとりたいと願っています。
そうおっしゃっていた。この手紙は殿下からではない…他の誰か…。」
部屋の窓から空を見上げると、太陽は南西の位置。あまり時間はない…。
「セナ。それを渡してきた女官を探して。それから、調べてほしい事があるから衛兵隊長に手紙と砂糖菓子を1つ渡して調べさせて。」
「はい。承知いたしました。」
「それと、これを調理場の方に渡してちょうだい。私から皇太子殿下へ…と伝えてね。」
「ワインですか?我が国はワインの産地、きっと御喜びになりますわね。」
セナが急いで部屋から出て行くのを見送ると、深いため息をついて窓に手をついた。
「私が正妃になる事を邪魔に思う者、すなわち…皇太子殿下に御子が出来ることが不都合な者が城内にいる…そんなところかしら。今のところ正妃争いをする姫も側室もいない。だとすると…殿下のご兄弟か、その妃。あとは…。」
「さすが、察しがいいですね。ニーナ姫。」
突然、誰もいない筈の部屋から声が聞こえて急いで振り返るも、やはり部屋のどこにも見当たらない。
「誰です?!」
一体声はどこから聞こえるのか、動き回って部屋中を探す間、声の主はくすくすと笑っていた。
「無礼ですよ。姿を見せなさい。」
「ごめんなさい。あまりにも思った通りの反応で、つい笑ってしまいました。私はここです。」
声の主は窓から吸い込まれる様に部屋に入ってきた
。被っていたフードを剥ぐり取ると、声の主はあの時の少女チトだった
それどころか、何かを危惧していた…ロードレスに訪れた各国の姫たちは、本当に殺されたのか…だとしたら誰に?
与えられた部屋に入るとあまりにも静かで、外の小鳥の声さえも聞こえないからか、カミル殿下の話を考え込んでしまっていた。
「ニーナ様、お茶はいかがですか?こちらは皇太子殿下からの贈物だそうです。なんでも、殿下御用達の菓子店のものだとか。素敵ですわね。」
セナがお茶と一緒に部屋に運んできたのは、宝石を模って作られたガラスの様に透き通っていて美しい砂糖菓子だった。
「これ…私知ってる。ロードレスのものではないわ。誰から受け取ったの?」
「宮仕えの女官から…彼女は確かに殿下からの贈物だとおっしゃっていたのですが…」
怪訝に思い、砂糖菓子の入った箱を持ち上げると箱の裏側に手紙が挟んである事に気がついた。
「?!セナ…これ」
箱に挟まれた手紙を開封するセナの横に立ち、手紙を読むとこう書かれていた。
月が真上に昇る刻 中庭の噴水前でお待ちしております。
「まぁ。殿下からのお誘いでしょうか?」
「違う…。カミル殿下は明日の朝…もし叶うならば、貴方と朝食をとりたいと願っています。
そうおっしゃっていた。この手紙は殿下からではない…他の誰か…。」
部屋の窓から空を見上げると、太陽は南西の位置。あまり時間はない…。
「セナ。それを渡してきた女官を探して。それから、調べてほしい事があるから衛兵隊長に手紙と砂糖菓子を1つ渡して調べさせて。」
「はい。承知いたしました。」
「それと、これを調理場の方に渡してちょうだい。私から皇太子殿下へ…と伝えてね。」
「ワインですか?我が国はワインの産地、きっと御喜びになりますわね。」
セナが急いで部屋から出て行くのを見送ると、深いため息をついて窓に手をついた。
「私が正妃になる事を邪魔に思う者、すなわち…皇太子殿下に御子が出来ることが不都合な者が城内にいる…そんなところかしら。今のところ正妃争いをする姫も側室もいない。だとすると…殿下のご兄弟か、その妃。あとは…。」
「さすが、察しがいいですね。ニーナ姫。」
突然、誰もいない筈の部屋から声が聞こえて急いで振り返るも、やはり部屋のどこにも見当たらない。
「誰です?!」
一体声はどこから聞こえるのか、動き回って部屋中を探す間、声の主はくすくすと笑っていた。
「無礼ですよ。姿を見せなさい。」
「ごめんなさい。あまりにも思った通りの反応で、つい笑ってしまいました。私はここです。」
声の主は窓から吸い込まれる様に部屋に入ってきた
。被っていたフードを剥ぐり取ると、声の主はあの時の少女チトだった
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